25ー6 繁盛し過ぎて人手不足?
「はぁ……」
「おや、アオイくん、月曜日だってのに、ずいぶん疲れているみたいだな」
会社の3階。目の前に社長がいる。こちとら休日返上で働いているのよ。社長の強面を見たら、余計に疲れちゃうじゃない!
「リニューアルオープンは大盛況だったんだろ? いいじゃないか……」
「大盛況過ぎです。女の子が足りなくて、『マジカルシャドウ』から女の子を回すハメになりました。おかげで、私の休日がパーです!」
私は日曜日を休みにしてもらっている。平日は昼間、こうして郷田商会の仕事をしているからだ。だから、日曜に『マジカルシャドウ』に出勤すると、休みがなくなっちゃうのよ……。
「土日も出勤したのか?」
「昼も夜もフルタイムで出ました。労働基準法的にはアウトですよ……」
2日連続14時間労働とか、どうかしている。労働組合結成しよう、マジで。
「今日も、昼間は何人かヘルプで『ピンクシャドウ』に入ってます。短期間なら掛け持ちもできますが、長引くと無理が出ます。早いこと何とかしないと……」
「そうだなぁ……貸しを返してもらうかな」
ピポパポ……プルルルル……。
社長が、どこかに電話をかけた。
「ああ〜どうも、どうも。その節はいろいろと。あ、はいはい。ええ、そうなんですよ。ちょっと、お願いがありましてね……」
スカウトとは縁を切るように頼んだ。どこに電話をしているんだろう?
「至急で申し訳ないんですがね。まあ、そこをなんとか……ね。詳しいことは佐藤からメールさせますから」
えっ、私? 何を勝手に決めているのよ……。
「はい、はい。じゃあ、よろしくお願いします」
ガチャっと、受話器を置いた。私を見て、ニヤリと笑う。笑うと怖いよ、社長……。
「どこに電話をしてたんですか?」
「メディア芸術総合学院の白石さんだよ。アルバイトの女の子を、何人か入れほしいと頼んだ」
「ソフト路線になったとはいえ、おさわり有りの店ですよ。就職担当に先生に頼んでいいんでしょうかね……」
「卒業生を7人も採用したんだ。そのへんは融通してくれるだろう」
マルチメディア・クリエーター科から3人、声優科から4人。たしかに貸しはある。社長は、そういうところも利用する人だった。優しさだけで、採用していたワケでもないんだね……。
「で、急ぎで詳細をメールしておいて」
「そこは丸投げですかーっ!」
◆◇◆
社長が連絡をして数日。『ピンクシャドウ』は連日盛況だ。『マジカルシャドウ』からの応援も続いているけれど、少しずつバイトも集まってきているらしい。
「お疲れ様で~す」
「あれ、アオイちゃん。今日はヘルプ頼んでいないよ?」
出勤前に『ピンクシャドウ』に顔を出した。店長が不在だったので、徳井さんと話をする。
「ちょっと様子を見に寄りました。女の子のほう、大丈夫ですか?」
「社長が手配してくれた件だね。ぼちぼち来てくれているよ。ただ、学生さんだからね。夕方からはいいんだけど、昼間は手薄になっちゃうね」
「夜のほうは、なんとかなっている感じですか?」
「なんとなくメドは立ったかな……。今は昼のほうが忙しいね」
う〜ん……平日昼かぁ。
土日の昼はイケると思っていた。『マジカルシャドウ』で経験済みだからね。でも、平日の昼間が、ここまで入るなんて想定外。なんか考えないとなぁ……。
「おおぅ、アオイ。あれ、今日はヘルプじゃないよね……」
徳井さんと話していたら、舞さんがやってきた。
「お疲れ様です。昼間のシフトなんですか?」
「夜は若い子ばっかりだろ? 私の居場所なんて、ないよ。それになあ、アオイ、昼間は客の年齢も高いぞ」
「そうなんですか? この前ヘルプで入った時は、そうでもなかったですけど……」
「あれは初日だからだよ。さっきの客なんか年金もらってるって言ってたよ」
「へぇ……」
この前、私がついたのは夜勤明けや、外回りの営業マンだった。職業はともかく、普通に働いている世代だ。年金をもらっている世代でも、エッチな気持ちはあるんだなぁ……。
「でもな、60歳から見たら私なんか全然年下だろ? まだまだイケるよ、いける!」
「結婚したいとか言ってたのは撤回ですか~?」
「まあ、そっちは、いい相手がいたら、紹介しろよな!」
「まず、私の相手がいませんよ~」
「ハッハッハッハッ……」
あれ……? なんか変だな。60歳から見たら年下……60歳!?
「年金って65歳からじゃありませんでしたっけ?」
「何言ってんだアオイ、年金は60歳からだろ!」
「えっ……?」
「あ~、それでしたらね……年金の受給年齢は、段階的に引き上げている途中なんですよ。まだ今は60歳からですけど、私らが年金をもらうころには65歳からになっているんでしょうな」
徳井さんが教えてくれた。年金の受給年齢。これは完全に盲点だった。60歳と65歳。5歳の差だけど、この差は大きい。60代前半なんて、令和の時代なら普通に働いている年齢だ。その人たちが、もう年金をもらっている。しかも、おそらく昼間からヒマだ。
「徳井さん、舞さん、ありがとうございます。なんか思いついたかもしれません」
「何か思いつくようなことを、言いましたっけ?」
「私の結婚相手か?」
「違いますってーっ!」
さ〜て……解決しようじゃないの、人手不足を!
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