24-5 ラジオの時間〜ラジオに出てきたよ~
撮影が終わって、取材陣が撤収していった。アニメ雑誌やゲーム雑誌だけじゃなくて、スポーツ新聞も来ていたんだって! 明日の朝刊に載るのかな? 楽しみだよ。
「コスプレのみなさん、お疲れ様でした」
「お疲れ様でした」
「「「「お疲れ様でした」」」」
これで私たちは、お役御免。着替えて帰ろう。今日も夕方6時から営業だからね。帰って準備しないと!
「アオイくん」
「はい?」
先生が手招きしている。なんだろう?
「せっかく来たんだ、収録に参加してよ」
「……へっ?」
「服部さんさん、いいよね?」
「ウチは大丈夫ですよ~」
「じゃあ、アオイくん、ここに座ってよ。ほかの子にもイスを出してあげて」
先生に言われて、急きょラジオに出ることになってしまった。ADさんがイスを並べている。私の席は先生の隣だ。
「ど、どうしよう……唯依~」
「ああ、緊張しなくても大丈夫よ。『ガヤ』みたいなもんだから」
「はぁ……」
唯依が冷たい。自分のことで精一杯なのかね。優しくないなぁ……。
「アオイくんは、これを付けて」
ヘッドホンを渡された。
「片耳だけかけて、片耳は空けてね」
『こちらから指示が出ます』
「わぁ!」
「ディレクターの声だよ。ほら、あっちのガラスの向こう。指示しているだろ?」
『ディレクターの小林です。アオイさん、よろしくね~』
大きなガラスの向こうで手を振っている人がいる。この人がディレクターさんだ。あとで名刺交換しておこう。
『マイクの音量チェックします。先生、お願いします』
「は〜い、白山で〜す。美女に囲まれてまーす」
『唯依ちゃーん』
「唯依です。今日はちょっと恥ずかしいなぁ~」
『服部さーん』
「チンホーオンライン、チンホーオンライン、チンホーオンライン!」
『アオイさん、しゃべる時はマイクのカフを上げて』
「カフ?」
「ああ、これだよ」
先生が教えてくれた。マイクスタンドの前に、オンとオフを切り替えるレバーみたいなものがある。
「これ、よく忘れちゃうんだ。しゃべる時はカフを上げる。しゃべり終わったらカフを下げる」
「なるほど~!」
「じゃあ、何かしゃべってごらん」
「アオイ、21歳、普通の会社員で~す」
『はい、オッケー』
「ハハッハハハ……ハハッハハ~」
先生が爆笑してた。なんでやねん! ちゃんとカフを上げたし、しゃべり終わったら下げたよ、私。あっ、そこじゃない?
『じゃあ、うしろの女性陣も、お願いします』
私と先生のうしろで、聖羅と杏奈っち、沙希っぽ、アサギが顔を見合っている。
「女の子がキャハキャハしている感じがほしいのね。そこにADがいるから、ADが拍手したら拍手。あとは、おもしろかったら笑う、驚いたらうなずくとか、適当にリアクションしてよ」
「みんな、いい?」
「OK~」「りょーかい!」
「お店でボクと、どんちゃん騒ぎしている設定でキャーキャー騒いでくれるかな? まあ、生放送じゃないし、失敗しても大丈夫から気楽にやろうね」
先生がヘヘッと笑う。
そうだね、収録だもん。気楽に行こう、気楽に。
『はい。じゃあ、いきましょう。本番! 5、4、3……』
ガラスの向こうでディレクターさんがキューを出した。
♪チャーラチャチャラララ~
「「チンホー・レディオナーイト!!」」
「こんばんは! シロリンこと、作家の白山さとるです」
「アシスタントの、ユイユイこと声優の小野寺唯依で~す」
「いや~ユイユイ、4月になっちゃったなぁー」
あ、そうか、この番組は収録だから。3月だけど4月放送分を録っているんだ。そのへんを注意して話さないとなぁ。あと、先生は「シロリン」で唯依は「ユイユイ」なんだ。そこも間違えないようにしよう……。
「この番組は『ファンタジア・オンライン』 のチンホーオンラインの提供でお送りしています」
『は~い、OK。じゃあ、オープニングあけトークいきます」
「よし、じゃあ、みんな、ここからはボクを接客している感じで頼むね」
「「「「は~い」」」」
「アオイくんとエロエロしているテイでいくよ、大丈夫?」
「やってみます!」
『じゃあ、オープニングあけトークいきます。5、4、3……』
ディレクターがキューをした。私も出番がある。マイクを忘れないようにしなきゃ!
「うっ、ひゃぁ〜、ハーレムだぜぇ〜!
「せんせい~ぃ」「シロリーン」「すてきぃー」
「うしゃしゃしゃしゃ~っ!」
すごいな、先生。このテンションのイカれた芝居を、マイクに向かって真顔でやっているのよ。
「こら、シロリン、ナニやってるの!」
「見りゃわかるだろ、ギャルのおっぱいを揉んでいるんじゃないか~っ」
あ、これは来るぞ!
「ほーれ、もーみ、も~み、もーみもみ~」
「あっふ〜ん、シロリンせんせのエッチぃ〜。いや~ん」
「どっぴーん! ボクの股間のチンホーがチンホーがぁぁっ!」
♪カンカンカンカンカーン!
ゴングのSEが鳴った。ここまでみたいだ。
「あらためましてですね、なんと今週はスタジオにコスプレギャルたちが来ています」
「この子たちは誰なの、ユイユイ?」
「はーい。全員『ファンタジア・オンライン』のキャラクターのコスプレなんですよ」
「よくできてるなぁ、これ。ラジオじゃ見えないけど、すごくエッチだよ」
「こらシロリン、衣装を見るフリで、おっぱいを見ない!」
このやり取りも、普通にマイクに向かいながらやっている。先生も慣れているけど、唯依もうまくなったね。プロみたいだ。いや、プロなんだけど……。
「はい、はい、はい……シロリン先生もユイユイも落ち着いて」
「は、はっ、服部さーん」
「ラジオの前のみなさん、こんばんは。チンホーオンラインの服部です。今日ですね、来ていただいたのは東京は新宿歌舞伎町の『マジカルシャドウ』のみなさんです。なんと、この店、『ファンタジア・オンライン』の公認店なんです~」
「そーなんだー! お店でも、こんなエッチぃな……」
服部さんが私の目を見た。ワザとらしいけど、これは私たちを呼んだ時から作っていた台本だね。すべてはチンホーオンラインの掌の上だったってワケね。まあ、いいじゃない、乗ってアゲちゃいますよ……。
「は〜い『マジカルシャドウ』のアオイで〜す。私のコスチュームは戦士。お店では、いつもこの格好してま~す」
「うわぁぁ、行きてぇぇぇ~」
「戦士だけじゃなくて、魔法使いも、僧侶も、遊び人も忍者もいま~す」
後ろに座っている聖羅たちに視線を送る。
「わぁ~」
「シロリーン、きてぇー」
「まってまーす」
よし、さすが聖羅と杏奈っちだ。沙希っぽも上手いぞ。アサギは修行しよう。
「どんなコスチュームなのかは、番組公式ホームページをチェックしてください」
「続いてはラジオドラマ『ファンタジア・オンライン外伝』だよ」
『はいOK、ありがとうございました』
ガラスの向こうでディレクターさんがOKサイン。これで、よかったのかな……。
◆◇◆
収録が終わった。意外と短い。30分番組といってもラジオドラマが入るので、トークの部分は15分もないんだって。
「アオイくん、お疲れ様。みんなも、お疲れ様。ありがとうね」
「まったく、調子に乗っちゃうんだから、葵は……」
「調子に乗ってま~す」
唯依がジトっとした目をしている。
「おーい、アオイっち~帰ろう」
「そろそろ戻らないと、店に間に合わないよ」
「あ~、ごめん、ごめん、ちょっと待っててて……」
先生に深々と頭を下げた。今の私があるのは、ある意味で先生のおかげだもんね。
「いろいろ、ありがとうございます、先生」
「そのうちアオイくんの店にも寄らせてもらうよ」
唯依にも手を振っておこう。ますますジトっとした目をされちゃったよ。
さ〜て、行こう。『マジカルシャドウ』は、今日も元気に営業だよ!
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