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令和のオタク女子大生が西暦2000年に転生したら借金少女だったので歌舞伎町で働きます  作者: 昼夜兼行で働け


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24ー4 ラジオの時間〜あなたは……先生!~

「いらっしゃいませ」

「あ、おじぎは少し大きめに。自分が思っているよりも、自分の身体は動いていないから。大げさにやるくらいで、ちょうどいいよ」


 開店前の『マジカルシャドウ』。新しく入ったボーイの山崎くんを、翔太くんが指導している。店員の採用は『ピンクシャドウ』に3人の予定だったんだけど、社長判断で追加採用となったのね。本当は6人全部を採用してあげたかったんだって。社長って意外と人情派なのよ、顔は怖いけど。


「失礼しま〜す。佐藤さんはいらっしゃいますかー」


 私に、お客さんだ。誰だろう?

 

「佐藤ですか……?」

「佐藤さんって、居ましたっけ?

「あーっ、私よ、私!」


 翔太くんと山崎くんを押しのけて、店先に向かった。


「チンホーオンラインの服部です。4月の大型アップデートキャンペーンのポスターとチラシを持ってきました」

「これは、すみません。でも、それなら、わざわざ持ってきていただかなくても……」

「いやぁ、お願いがありまして、ウチのゲームのコスプレした女性を何人か貸してもらえないですかね?」

「まあ、お店の営業と被らない時間でしたら……」

「4月からウチがスポンサーになってラジオ番組を始めるんです。取材が来るんですけど、ラジオって画(え)が地味でしょ?」


 なるほど、エキストラというか、サクラだね。


「そういう事情でしたら、何人か出しましょう」

「ありがとうございます。よかったぁ……」

「で、そのラジオは、誰が出るんですか?」

「あれ、聞いてませんでしたか? 唯依さんですよ」

「な……なんだってーっ!?」


 ◆◇◆


 四谷にやってきた。新宿から中央線快速で一駅。ここも一応、新宿区なんだけど、初めて来たよ。四ツ谷駅から新宿通りを新宿方面へ。少し歩いて左に曲がると、ラジオ局に到着する。


 私と同行するのは聖羅と杏奈っち、沙希っぽ、アサギ。

 誰を連れてこようか悩んだけど、今回は声優学校組を外した。唯依(ママ)がいるからね。もちろんコスプレ衣装のバランスを考えたってこともある。私が戦士で、ほかの4人は魔法使い、僧侶、遊び人、忍者だからね。たぶん、見栄えもいいハズ。


「あぁ〜、佐藤さん。待ってましたよーっ!」


 局の玄関を入った受け付けで、チンホーオンラインの服部さんが待っていた。


「はい、これ入館証。スタジオは2階です」


 首からかける入館証を渡された。


「着替えるところはありますか?」

「スタジオに臨時の更衣室を作ってあります」


 服部さんの案内で局の廊下を進んで行く。階段を上って、すぐ横の扉に入った。広いスタジオ……というより、会議室みたいな部屋だ。長机と電話機が並んでいる。しかも、黒電話の色違いみたいな形。令和はもちろん、2003年の今でも見かけないよ。


「お疲れ様でーす。コスプレのみなさん入りましたー」

「了解でーす。着替えてスタンバイしてくださーい」


 奥のほうで作業をしていた人が、服部さんに返事をした。ADさんかな?

 奥のテーブルにはマイクスタンドが置かれている。そこでDJやパーソナリティがしゃべるようだ。テーブルの前の壁はガラス張りで、その向こうに機材が見える。


「ねえねえ、アオイちゃん、ここって電リクのスタジオかなぁ?」

「デンリク??」

「私、聴いてたの。金曜夜の『スーパーカウントダウン50』!」

「えっ……と」

「金曜の夜にやっているじゃん、電話リクエスト。アオイっちは、常識が足らんね~」


 ぐぬぬ……杏奈っちや聖羅はともかく、非常識人代表の沙希っぽにまで言われてしまった。私だって、令和の時代のラジオなら聴いたことあるんだからね。この時代に来てからラジオを聴く時間なんてなかったのよ、忙しくて。 

 

「みなさ~ん、着替え、お願いしまーす」


 ADさんに急(せ)かされちゃった。スタジオの隅が衝立で仕切られている。さっそく着替えた。今日はフル装備で、剣まで持ってきている。まあ、剣といってもオモチャだけどね。あると、ないとでは気分が違う。


「出演者の方、入りまーす」


 衣装に着替えて待っていたら、出演者一行が到着した。チンホーオンラインの服部さんがドアを開ける。ぞろぞろとスタジオに入ってきた。

 唯依(ママ)だ。白のホルターネックでボインボインの服。取材陣を意識してるね。うしろを歩いているのはマネージャーさんかな? 続いて入ってくるのはセーターにメガネのおっちゃんだ……あれ? どこかで会ったことがあるような気がする。誰だっけ??


「コスプレのみなさんも、こちらに来てくださーい」

「は~い」


 唯依(ママ)たち一行は、マイクが置かれた大きなテーブルに着いている。私たちは、その前に整列した。


「取材の撮影用に来てくれました、歌舞伎町の『マジカルシャドウ』のみなさんでーす」

「本日はよろしくお願いします」

「「「「よろしくお願いします」」」」


 私のあいさつに、4人が続いた。打ち合わせはしていないけど、あいさつはそろっている。こういうところは接客業だね。


「おや? キミは……」


 セーターにメガネのオッチャンが、私を見ている。


「先生、どうしました?」

「うん、あの子なんだけど……」


 先生? あっ……そうだ、そうだ、そうだ! 『ピンクシャドウ』に体験入店したときに、アドバイスをしてくれた先生だ!


「ご無沙汰しております、先生」


 一歩前に出て、先生に一礼した。


「ああ、やっぱりそうか。キミはいつぞやの体操着の子だね」

「はい」

「コスプレイヤーになったのか。うんうん……ちゃんと自分の魅力を引き出す勉強をしたようだね」

「ありがとうございます」


 私と先生のやりとりに、一同がポカーンとしていた。意味がわからんよね。


「あの……先生は、葵と知り合いだったんですか?」

「おや、唯依くんもアオイくんのことを知っているのかね?」

「知っているも何も、葵は昔からの友人です」

「そうなのか、世間は狭いねぇ」


 「友人」ねぇ……。ラジオのレギュラーに決まったことを、教えてくれなかった「友人」だけどね。2年も前に、ちょっと会っただけの私を、覚えていてくれた先生とは大違いだ。そういうとこだぞ、唯依(ママ)。


「あの……先生、取材陣を待たせてありますので」

「ゴメン、ゴメン。話は後にしよう。取材の人たちに入ってもらって」


 ADさんがスタジオのドアを開けると、わらわらと人が入ってきた。10人以上はいるかな?


「本日は4月からの新番組『チンホー・レディオナイト』をご取材くださいまして、誠にありがとうございます。この番組は……」


 取材はチンホーの服部さんの仕切り。番組名や放送時間、ネット局などを説明している。


「出演者の紹介です。メインパーソナリティは、作家の白山さとる先生」

「白山です。ボクは書くほうが本業なんで、プレッシャーかけないでね~」


 先生って、白山さとるっていうのか。令和の私が見ていた昔のアニメに、原作者で名前が出ていた気がする。今(2003年)だと、ラジオパーソナリティーをやっちゃうくらい人気者なんだ……。


「アシスタントは声優の小野寺唯依ちゃんです」

「ケンスケプロダクションの小野寺唯依です。ラジオは初めてだから、優しく……してください」


 うわぁ……露骨にお色気を入れてきた。「してください」って、そのまんまじゃない。やっぱりママはセクシー担当なのね。

 服部さんの進行で取材が進む。ほとんど先生がしゃべっていた。書くほうが本業って言ってたけど、めちゃくちゃ冗舌じゃん。


「続いては写真撮影です。本日はチンホーオンラインが誇る大人気MMORPG『ファンタジア・オンライン』 から、キャラクターのコスプレガールたちも来ております。じゃあコスプレのみなさんは、先生と唯依ちゃんの後ろに並んでください」


 指示された通りに並ぶ。取材陣のフラッシュが光る。私たちは、ただの背景。モブだから、控えめにしていなくちゃ。


「はい、先生と唯依ちゃんのツーショットになります。コスプレのみなさん、ハケてください」


 カメラに映らないように移動した。実働2分弱。これで、終了なのかな?


「すみません、チンホーさん。コスプレの子たちだけの画(え)、撮れますか?」

「コスプレだけですか……」


 取材陣の視線が私たちに集まった。

 

「いいんじゃない。せっかく来たんだし。あ、できればボクを囲んでハーレムで撮ってほしいなぁ」

「せ、先生……」


 鶴の一声というか、先生のわがままで予定外の撮影になった。5人で先生を囲んでムギュ〜としたり、私の剣に切られてみたり、楽しそうな写真が撮れたと思う。


ラジオの収録ですが、アオイが呼ばれたのは2週目の収録です。

当時の収録番組だと1週目ではなく、2週目に取材を入れることも珍しくなかったと思います。



筆者からの、お願い


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