24ー2 探れ! 新宿セクシー女学院
噂の新店『新宿セクシー女学院』のオープンが間近に迫ってきた。
というわけで私は偵察だ。歌舞伎町の案内所を回っている。案内所というのはキャバクラや風俗店など、夜のお店を無料で紹介する場所だ。店のカタログやチラシ、割引券などが置かれている。夜遊びに特化した観光案内所みたいなものかな?
歌舞伎町一番街、セントラル通り、さくら通り、東通り、区役所通り……主な通りの案内所に『新宿セクシー女学院』のチラシが置かれていた。「NEW OPEN」、「初回セット料金半額」の文字が躍っている。
「おっ、珍しいね。アオイちゃんがチラシの補充かい?」
区役所通りの案内所。顔見知りのスタッフさんに声をかけられた。ここは『マジカルシャドウ』と『ピンクシャドウ』がパネル広告を出していて、いろいろと顔が利く。
「この新しい店、反応はどうですか~?」
「その店、気になるかい? アオイちゃんの店とは被らないと思うけどね」
客層が被らないのは案内所の人も感じるのか……。よ〜し、スマイル0円サービスだ。さらに情報を引き出そう。
「でも、やっぱり新店は気になりますぅ。なにか聞いてますかぁ~」
「アオイちゃんだから言っちゃうけど、恨みは買っているね」
「恨みですか?」
「あちこちの店から引き抜いたみたいだからね。さすがに恨まれるよ」
へ〜……引き抜きをかけていたのは、ウチだけじゃなかったんだ。
「チラシ見たかい?」
「はい」
「女の子の写真が載っているよね。あっ、ちょっと待って……」
スタッフさんが棚をゴソゴソ探って、チラシを取り出した。
「あった、あった。ほら、コレ。この店のエースだった子だよ」
「一番街の人気店じゃないですか!」
「お客さんから『あの店にいた、あの子は今、どこにいるの』みたいなことも聞かれるからね。過去のチラシやカタログも残してあるのさ」
そんなことまで対応しているのかぁ……。案内所のスタッフさんって、すごいね。
「えーと、ほら、このへんの子は花道通りの店だ。こっちの子は……」
「ああ、それは『ピンクシャドウ』にいた涼子です」
「アオイちゃんの店の姉妹店だったね。何人か抜かれたって聞いたけど……」
「ええ、まあ……」
すみません。ごっそり抜かれました、10人くらい。
微妙なスマイルを振りまきつつ、案内所をあとにした。その足で『ピンクシャドウ』にも寄っていく。
「あらぁ、アオイちゃ~ん」
「チェリーさん!」
チェリーさんは黒服になっていた。キリっとした感じで、若返っているよ。
「やだわぁ〜、その名前は終わったのよ。今の私はチーフ見習いの高畑よ」
「まだ徳井さんになってないんですか?」
「まだ見習いだからね。正式になったら、ちゃんと籍を入れるわよ」
「じゃあ、がんばらないと!」
「う~ん、がんばらないといけないのは、私よりも旦那のほうかしらぁ~」
チェリーさんが店の奥に視線をやる。徳井さんと店長が話していた。時々、徳井さんが頭を下げているので、これは「指導」だね。がんばれ、負けるな、徳井さん。
しばらく見ていたら、店長が私に気が付いた。これで指導は終了かな? よかったぁ〜、店長に用があったのよ。徳井さんが逃げやすいように、すすっと近づいた。
「どうしたんですか、アオイさん?」
「はい、これ。例の店のチラシをもらってきました」
「もうチラシが出てましたか……」
店長にチラシを手渡す。キャストの写真を見て、苦い顔になった。
「あまり愉快なものじゃないですね」
「あちこちの店から引き抜いたから、恨みを買っているみたいですよ」
「そりゃそうでしょう。この業界だって一応、仁義はあるんだから」
この顔で仁義って言われると、説得力がある。というか、ちょっと怖い。店長は、そのスジ系の顔だもんね。
「もう少し詳しく知りたいですね。社長と相談することになるかなぁ……」
「私のほうからも、社長に言っておきます」
「お願いしますよ、アオイさん」
◆◇◆
朝から会社で社長が腕組みしている。
例の店『新宿セクシー女学院』の件だ。
「で、どうする、誰か偵察に行かせるか?」
「ウチの店のスタッフは面が割れています。先方には元『ピンクシャドウ』のキャストもいますから」
「この前採用した専門学校の子たちは、まだ来てないしなぁ……」
ウチの会社の身内で顔が知られていない人ね……。社内を見回した。あっ、いるじゃん! ちょうどいいことに中村くんが、パソコンで作業をしていた。
「中村く~ん!」
「なんですか、先輩」
「お小遣いあげるから、女の子のおっぱいモミモミしてきて」
「はぁっ!?」
わが社の秘密兵器・中村主任を偵察任務に起用した。見事ミッションコンプリートの暁には、お昼ご飯をごちそうするよ。がんばれ、中村くん。
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