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令和のオタク女子大生が西暦2000年に転生したら借金少女だったので歌舞伎町で働きます  作者: 昼夜兼行で働け


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22ー4 恋人たちの午後~ロマンチック度はゼロです

 喫茶店から会社に引き上げてきた。


「失礼しました。アオイちゃんの勤務先の社長さんだとは……」

「こんな顔ですからな、よく間違えられます」


 ハッスル店長とチェリーさんが頭を下げている。土下座しそうな勢いだ。社長は苦笑い。笑顔ですら怖いのよ。私は慣れたけど。


「それにしても……本当に会社員になったんだな……」

「下の雑貨屋さんも、アオイちゃんの会社でやっているんでしょう? すごいわね……」


 どうやらヤ〇ザの愛人疑惑も晴れたみたい。まあ……いいか。


「ところで……『ハッスルガール』はいつ閉店したんですか?」

「2月の半ばだよ。年明け早々というか、年末にオーナーが飛んじゃってね……」

「私たち残ったキャストと店長で店を回していたの」

「オーナーが失踪? そんなことがあるの??」

「それがだな、アオイくん。水商売だと、オーナーが失踪したり音信不通になることは珍しくない。銀行が金を貸してくれるような業界じゃないからな。資金がショートしちまうと、お手上げになりやすいんだ」


 社長が解説してくれた。ウチの店は大丈夫かな? 社長は逃げないと信じているよ。


「店に残っていた在庫でやりくりしていたんですが、さすがに資金のほうはどうにもならくて閉めることになりました」

「なるほど。事情はわかりました。それで、えーと……店長は徳井さん言いましたかな、今は無職ということになりますか?」

「はい、そうなってしまいました」

「ウチで働いてみる気はありませんか?」

「えっ……?」


 社長がハッスル店長の顔を見た。怖い……顔が怖い。睨みつけているようにしか見えないよ。店長は慌てて横のチェリーさんを見た。


「あんた……」

「おおぉ……うん」

「ああ、そうだ、奥さんも働きませんか。いいだろアオイくん?」

「えっ……はい。いいと思います」


 いきなり話を振らないでよ。ビックリしたじゃん。


「いやだわ、奥さんなんて……。まだ籍も入れてませんの」

「いや、おまえ、そういうことじゃなくて……」

「ああぁ……そうでした、あの私、さすがにもう脱ぐのは厳しいんじゃないかと……」

「ああ、そういう仕事ではなくて、裏方のスタッフのほうでどうですかね?」

「……でしたら、喜んでお受けします。あんたも、いいわね!」

「はい……」


 う〜ん……既視感がある。店長というのは、かかあ天下じゃないといけない掟でもあるのかな? まあ、いいや。スタッフの問題は、なんとかなった気がする。


「アオイちゃん、ありがとう。本当に助かったわ。キャストの子たちは移籍先も見つかったみたいなんだけど、私みたいなオバサンに声はかからなくてね。ハハハッ……」


 そんなことない……と否定できないのよ。久々に見たら老けちゃってるんだもん、チェリーさん。ほかのキャストは移籍かぁ……移籍? ひょっとして?? 


「あの……その移籍先なんですが、新しくできる店があるとか、そんな話じゃありませんでしたか?」

「そうよ。近々オープンする店があるとかで、大量に女の子を集めていたのよ。ねえ、あんた、なんて名前の店だったっけ?」

「セクシーなんとかだったかなぁ……」

「新宿セクシー女学院ですか?」

「ああ、それそれ!」


 社長の顔を見た。コクリとうなづいて笑う。見慣れてはいるけど、やっぱり笑顔が怖い。

 でも、いろいろ見えてきたじゃん。つながってきたよ、情報が。

 『新宿セクシー女学院』? 好き勝手にはさせないよ!


 ◆◇◆


「いやー、やっぱり自分の店は落ち着くね~」

「おつとめご苦労様でした、絵里奈さん」


 絵里奈さんは期間限定で『ピンクシャドウ』に出向していたけど、今日から『マジカルシャドウ』に復帰だ。事務所の椅子にドカッと座ってくつろいでいる。


「絵里奈さんって『ピンクシャドウ』も長かったじゃないですか。それでも落ち着かないもんですか?」

「そら、そうよ。女の子たちだって、知らない子ばかりだろ? 店長だって、あんな感じだもんなぁ……」

「ウチの店長と絵里奈さんは夫婦で、以心伝心ですもんね~」

「ん、んん……まあ、そうだな」


 絵里奈さんは頬を赤く染めた。照れちゃって、も~。


「もう籍は入れたんですか?」

「引っ越してからにしようと思って今、家を探しているんだ。一緒に住んでもいないのに籍だけ入れるってのも変だろ?」

「あれ、同棲してなかったんですか?」

「彼は実家住まいなのよ」

「うわぁ……」


 それは仕方ない。郷田ファミリーの実家に住むなんて、罰ゲームみたいなものだもんね。


「それでミユと少し話したんだけどさ、マンションが安いんだってな!」

「美由ちゃんところは中古で3000万円切るくらいだって言ってましたね」

「それは高円寺だろ? 鷺ノ宮とか上井草だと、もっと安いらしいのよ。しかも今、金利が安いだろ? 思い切って買おうと思ってな……」


 ウチの会社はマンションブームかな? この流れだと、私もマンション買うみたいじゃん。たしか令和のマンション価格は今(2003年)の倍くらいになったハズ。投資目的で買うのはアリかもしれない……。でも、買わないよ、私は。いや、買わないと思う。買わないんじゃないかなぁ……。まあ、借金を返し終わったら考えよう。


「由美……あ、副店長、おかえりなさい。『ピンクシャドウ』での勤務、お疲れ様でした」


 店長が出勤してきた。

 今、絵里奈さんの本名を呼びかけたよね? 私が居るのに気づいて止めたけど、二人の時は由美子とか由美子ちゃんとか呼んでいるんだね、たぶん。


「おはようございま〜す、店長。じゃあ、私はフロアの準備しますんで……」


 スススっ……と事務所を出ていく。絵里奈さんと店長。まだ同居できていないんだ、二人の時間を作ってあげなきゃね。私は掃除でもしておこう。


 ぐるるっ……ぐるるっ……。

 足で踏んでクルクルさせるバケツで、もじゃもじゃモップを絞る。

 

「おっは~っす」

「おはようございます」


 沙希っぽとボーイの翔太くんだ。一緒にやってきたよ。


「やっぱり……付き合ってるよね、二人?」


 沙希っぽと翔太くんは顔を見合わせた。


「付き合ってないっすよ~」

「たまたま一緒になったんです」


 相変わらず微妙な間(ま)だよ。まあ、いいか。今は3月、春だもんね。浮かれておけよ、バカップルども。私の春は、いつくるのかね〜。


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