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落ちこぼれ騎士の花嫁騎士団《ブライド・ナイツ》  作者: 茶毛
1-13.落ちこぼれと新たな日常

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エピローグ「エレオス神話」


 太古の昔、天地(あめつち)の間に、ひとつの楽園ありき。


 

 その名を“アエテルナ“


 

 万物が調和し、種族の垣根(かきね)なき黄金の時代なり。


 

 エルフは森の叡智(えいち)を歌い、

 

 ドワーフは岩の鼓動を打ち、

 

 セリアンは大地の力を誇り、

 

 フェアリーは風の如く舞う。

 


 そして「竜」は、天を覆う翼にて万物を庇護(ひご)し、絶対なる安寧をもたらしたり。

 


 人の子は、小さき(かいな)にて土を耕し、


 (いしずえ)を築き、


 繁栄の「和」を繋ぐ者なり。


 

 彼らは、この光あふれる調和が永久(とわ)に続かんことを願い、その地を永遠の意味を持つ“アエテルナ“と呼称せり。


 



 されど、光あるところに影あり。


 



 深き闇の底より、混沌を統べる「魔竜」と、

 その眷属たる「夜に棲まう者(ノクス)」現る。


 

 彼らは光を()み、

 

 混沌を愛し、

 

 人の子らを凌駕する力を持つ者なり。

 


 その数、星の如く。その魔力、深淵の如く。

 

 その牙、鋼を砕き、その悪意、毒の如く心を蝕む。

 


 彼らは、人の子の心に「疑念」と「憎悪」の種を蒔きたり。


 

 友は友を討ち、兄弟は血を流し、世界は混沌の坩堝(るつぼ)と化す。


 

 これこそが、魔竜と夜の眷属が望みし地獄なりき。



 世界が絶望の(とばり)に包まれし時、


 天より「原初の光」降り立つ。



 竜は嘆き、そして決意せり。


 

 巨大すぎる混沌を封じるため、

 

 竜は自らの御身(おんみ)を五つに分かち、


 世界の柱とならん。


 

 天を導く「聖竜エレオス」。

 

 地を浄化する「火竜ヴルカーノス」。

 

 悪を凍てつかせる「氷竜ゲルニクス」。

 

 正義を断つ「剣竜ヴィルディウス」。

 

 海を抱く「海竜オケアラーサ」。

 


 ――五つは一つ、一つは五つなり。

 


 五柱の竜は、未だ善き心を失わぬ人の子らを選び、告げたり。



 


『我が血肉、我が力、汝らに分け与えん。光を手に、夜を払え』



 


 竜の契約により、


 勇気ある者たちは剣を取り、


 魔法を放ち、


 五竜と共に闇を裂けり。



 火は穢れを焼き、


 氷は暴虐を封じ、


 剣は悪を断ち、


 海は傷を癒やし、


 光は道を示した。

 


 長き戦いの果て、夜は明け、魔竜とその眷属は彼方へと去りぬ。



 勝利の暁、光は戻りたれど、代償はあまりに大きかりき。



 竜たちは、その力のすべてを子らに与え、長き眠り、あるいは果てなき封印の戦いへと身を投じたり。


 

 民は涙し、五竜の盟主たる聖竜の御身(おんみ)(いだ)きて、大地の中央に白亜(はくあ)の塔を築けり。


 

 これ即ち、聖都のいしずえなり。


 

 人々は塔に(つど)い、


 眠れる竜へ「力」を返さんがため、


 祈りを(ささ)げたり。

 


 その祈りは、いつしか「感謝」へ変わり、やがて「永遠の平和」を願う誓いへと昇華せり。

 


 故に、人はこの大地を、竜との誓いを込めて再びこう呼ぶなり。


 



 ――“アエテルナ大陸“、と。





 +




 

 このアエテルナ大陸に伝わる、聖竜エレオス神話の一節。


 エレオス教の教えは、全てこの神話をもとに定められたものであると同時に、この地に広く伝わる最も古い歴史書のひとつでもある。


 闇の眷属との戦いを終え、聖竜エレオスが眠りについてから、一二七五年の月日が流れた現在。

 "五竜は一つ"という教えのもと、本来ならば手を取り合うべき人類が、いまや信仰の解釈の違いや、大国同士の戦力の拮抗による“永遠の平和“を意味するようになったのは、歴史の皮肉であろう。



 ――その愛すべき"永遠"に、致命的な綻びが生じている事に、


 ――気付いている者は、まだ、多くはなかった。




 〜第一章・完〜


 

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