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【第1章完結】落ちこぼれ騎士の「花嫁騎士団《ブライド・ナイツ》」  作者: 茶毛
1章:「熾火の魔神と五人の花嫁」

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1章:7話「“鍵“を開ける者達」


 (⋯⋯夢、か。いい夢、だったな⋯⋯。)


 

 彼が目を覚ますと、そこは自室の天井だった。

 その目は赤く腫れており、涙が伝った後を月光が反射させている。

 

 全身は未だ暖かかった。

 まるで夢の続きのように、彼の全身を包む温もりはずっと強く、重く、そして甘い香りがその鼻腔をくすぐらせていた。


 

 (⋯⋯あれ?)


 

 まだ夜更けだろうか、と、時間を確認しようとレオンは起きあがろうとする。

 ――が、起き上がれない事に気付いた。

 


 (⋯⋯苦しい。体が、動かない⋯⋯。まさか、毒が残っていた⋯⋯?)

 


 そう思いながらも、彼は違和感に気付く。毒で体の自由が効かない、というよりは、何かに押さえつけられているような、そんな重みがあった。

 ――そして、もはや暖かいというより、熱かった。


 

 (⋯⋯熱い! サウナみたいだ。普通のベッドなのに⋯⋯! それに、なんだか柔らかい⋯⋯?)


 

 レオンは、その未知なる感覚に恐怖を抱きながら、恐る恐る右を見た。

 

 ――するとそこには、濡れ羽色の美しい漆黒の髪が、月明かりに照らされて輝いていた。


 

「すぅ。すぅ⋯⋯。レオン⋯⋯」

「ひぅ!」


 

 鈴の()のように澄んだ、美しい声――ルナが、レオンの体を抱き枕代わりにぎゅっ、と抱きしめて、幸せそうに彼の耳元で寝息を立てていた。


 あまりにも甘い囁き声だったので、彼はビクッとしてしまった。

 

 彼女の囁きと、森のような素朴な優しい香りに一瞬、思考を停止させて口をぱくぱくとさせるレオン。しかし、すぐに考え始めた。


 

 (⋯⋯ルナ⋯⋯? なんで? ここ、僕の部屋だよな?)

 


 混乱するレオンだったが、すぐに次の反応に変わる。

 レオンの華奢な体には、ルナの、そのとても豊かな胸が押しつけられていたのだ。


 

 (⋯⋯! こ、この、とっても柔らかい感触って、もしかして!!)


 

 彼は焦った。シルフに言われた言葉――『胸が大きい人が好き』が頭の中で反芻する。

 彼の華奢な体を覆い尽くすほど大きなそれは、レオンの理性著しく崩壊させた。


 

 (⋯⋯ま、まずいまずいまずい! 大変! どうしよう! 動けない!!)

 


 彼は彼女から抜け出すようにもがくが、その柔らかいものと、さらに彼女の腕がギッチリとレオンの小さい体を固定していたのだ。

 彼の動きに合わせて柔らかく形を変えるその感触を否応なく感じる事しかできなかった。

 

 そんなレオンだったが、今度は風に靡く白金の髪が、彼の頬を撫でた。


 さらさらとした感触のそれは、靡くたびに甘い匂いを彼の鼻腔に届け、酔わせていく。

 


「んー⋯⋯。あったかーい。⋯⋯むにゃ」

「はぅ!」

 


 蕩けたように甘い声で寝言が、彼の耳元で囁く。


 突然息を耳に吹きかけられ、ぞくぞく、としてしまうレオン。

 ――彼の左側にいたのはノエルだった。


 彼女は、レオンの細い腰に手足を絡めて、こちらも逃さないとばかりにガッチリとホールドしている。

 ――そして、ノエルもその豊かな胸をレオンに押し付けており、彼は両側から挟まれる形で、柔らかな暴力の蹂躙を受けていた。

 


 (⋯⋯ま、まずい! 全身が柔らかい! 耳がぞくぞくする! それにとっても甘くていい匂い! だめだ! はしたなくなっちゃう!!)

 


 普段から人と関わらず、触られる事に慣れていない過敏な体のレオン。

 少年はあまりの感覚の暴力に頭がついていかず、自分が何を考えているのかさえわからなくなっていた。

 

 そんな彼に、今度は上から声がかかる。


 彼の体が全く動かない元凶――シルフは、レオンの小さな体の上に覆い被さって、悪戯するように胸を彼の体に押し付けていた。


 

「あら、起きちゃいました? レオン様」

「あぅ!」


 

 甘く優しい、脳を震わせるような声音が、彼の耳元で囁かれる。

 そのせいか、彼女の桃色の髪はレオンの顔までも覆い隠し、シルフから発せられる花のように甘くていい香りを直接鼻腔まで届けた。


 

「⋯⋯っ! ど、どうして! 君達が、ここに!?」

「あら。私たち、夫婦(めおと)ですから。寝所を一緒にするのは、当然ではありませんか?」

「いや! でも、鍵は閉めた筈! ここは三階で窓からは入れないはずだし、どうやって!?」

 

「あんな鍵ぃ〜、クロラにとっては、無いのとおんなじですよぉ〜」


 

 動揺するレオンに返答するシルフとクロラ。

 ――しかも、クロラの声は、レオンの下側、つまりベッドの下から聞こえた。

 


「⋯⋯クロラ? もしかして、ベッドの下に、いるの⋯⋯?」

 

「ぐへへ、だいせ〜いか〜い! レオン様の寝汗、頂いちゃいましたぁ〜♡」


 

 クロラは、鼻にかかったような甘い声で、ベッドの下から告げた。


 

「⋯⋯! いや! ヘンタイ!」

「ぐへへへへ〜! やだ、レオン様〜、そんなに褒めないでください〜!」

「褒めてない!」

 

「でも、まさか起きてしまうとは、計算外でしたね⋯⋯。寝ている間に、“既成事実“を作ってしまおうと、考えたのですが⋯⋯」

「いや! こわい! 僕に何するつもり!?」

「ふふふ。怖がらなくても大丈夫ですよ? 優しくしますから。安心してくださいね?」

「それを聞いて何を安心するんだ! はなして! やめて!」

「起きちゃったなら、それはそれで大丈夫です。しっかり、お姉さんが“リード“してあげます」

 

「ぐへへ! クロラも混ぜてぇ〜」


 

 徐々に熱を帯びてくるシルフと、ベッドの下から涎を垂らして出てくるクロラ。

 レオンは相変わらずルナとノエルに両サイドからガッチリ拘束されているため、身動きが取れない。

 

 怯えた顔を浮かべるレオンと、獲物を前にした猛獣達。

 すると、レオンは何かに気付いたように話を逸らした。

 


「⋯⋯! そ、そういえば!! ⋯⋯ヒルダがいないね! 大人しく、してくれているんだ⋯⋯」

 

「あら、気にしてくれるとは、嬉しいじゃない?」

 

「⋯⋯!」

 


 この場所にいなかったヒルダのことを尋ねると、あろうことか本人から返答が返ってきた。

 レオンは首を彼女の気怠い声の元に動かすと、彼の勉強机で、彼女は優雅な仕草でティータイムを楽しんでいたのだ。

 

 タイツで覆われた長い足を官能的に組みながら、熱の込められた声でレオンに話していく。

 その瞳は優雅なものから一転、人を誑かす悪魔のように艶を深めていった。


 

「私はお届け物をしにきたのだけれど、貴方から誘われてしまっては仕方がないわね」

「⋯⋯さ、誘ってません! それと、お届け物って⋯⋯?」

 

「貴方が引き抜いた“魔剣“よ。ほっぽらかしているのは、可哀想でしょう?」

 


 そう言って、ヒルダは魔剣を取り出した。

 ――剣の()に、文字がびっしり刻まれた、それ以外は何の変哲もないロングソードを。

 

 魔剣に刻まれた文字は、脈動するように淡く明滅している。

 ――その鼓動に合わせるように、レオンの深い紫色の“眼“も、静かに明滅していた。

 

 

「ま、“魔剣“⋯⋯? じゃあ、あれは夢じゃなくて、現実だったの⋯⋯?」

「そうよ。貴方は、魔剣を引き抜いて、気を失ったのではなくて?」

「そうかも、しれない⋯⋯」

「大切にしなさい? 折角、“選ばれ“たのだから」

「⋯⋯ありがとう」


 

 彼は、そう言って魔剣を眺めた。“選ばれた“という言葉に、僅かに頬を緩ませながら。


 

「では、この話は終わり。そろそろ、私も参加しようかしら?」

 


 レオンが思いに(ふけ)るよりも早く、ヒルダは彼が寝るベッドに上がり、そのフレームがギシ、とさらに悲鳴をあげた。

 


「⋯⋯!? ま、まって! 待ってください! 僕だって、まだ心の準備が!」

 

「⋯⋯出来たら、いいのですか? そういうことですよね? ルナは、期待しますよ?」

 

「⋯⋯!?」

 


 そう言って、今度は彼の右で寝息を上げていたルナが目を覚ましたのか、声をあげる。

 その表情は眉一つ動かさないが、どこか情欲を隠せない様子だった。


 

「⋯⋯ち、ちが! そういう話じゃなくて! その⋯⋯」

 

「んー、なんかよくわかんないけど。私も、混ぜてー!!」

 

「もが!」


 

 レオンが言葉を選んでいると、今度は左側のノエルが目覚めたようだ。

 彼女は、寝ている時以上にレオンに体を密着させ、その胸にレオンの小さい顔を埋める。


 

「⋯⋯! ずるい! ルナもやります!」

 

「あらあら? 抜け駆けされてしまいましたね」

 

「んああ〜! レオン様の汗の匂い、最っ高〜!」

 

「さあ、レオン。退屈させないわ。熱い夜にしましょう?」

 

「⋯⋯! ⋯⋯!!」

 


 ノエルとルナがレオンの顔を埋め合い、彼の汗を楽しむクロラ。

 隙を見て拘束しようとしているシルフとヒルダ。それぞれが異なる甘い匂いを発し、柔らかな感触と言葉で攻めている。


 ――レオンは、その小さな体では受け止めきれない程の刺激に翻弄され、窒息寸前であった。

 いよいよどうにかなりそうな中、部屋の外から扉を激しく叩く音が聞こえた。

 

 

 一瞬の静寂。ドアノブをガチャガチャと荒々しく回す音。

 ――クロラが解錠した時、他に誰も入らないように、さらに頑丈に細工していた扉であった。


 音の主が扉が開かない事を察すると、扉自体を破壊して中に入ってくる巨大な影。


 

 ――寮長が、鬼の形相で、レオンの部屋に入ってきた。

 


「⋯⋯ぷはっ! ⋯⋯あれ、寮、長⋯⋯?」

 

「⋯⋯リヒトホーフェン。なんの騒ぎかと、駆けつけてみれば⋯⋯」

 


 充満していた甘い香りが、外の冷たい空気で一気に吹き飛ばされていく。

 

 レオンは異変に気付くように、ノエルとルナによる“やわらか攻撃“から抜け出す。

 ――そして、扉の方にいた寮長の姿を確認し、背筋を凍らせ、その色白な顔をさらに青くした。

 

 寮長はレオン達がいるベッドを凝視している。

 そこには、もみくちゃにされ、服を力任せに破かれ、はだけさせたレオンと、情欲を抑えない淫魔のような五人の女神達。

 

 “大人“である寮長は、状況を理解するように押し黙る。

 ――そして、これからここで何が起ころうとしていたのかを察するように、鬼の形相をさらに真っ赤に染め上げ、まるで“赤鬼“の様相で、ありったけの力を込めて叫んだのだ。


 

「貴様ァァァァァァァァ!!!! 一体何を考えておるんだァァァァァァァァ!!!!」


 

 この寮長の雷のような叫びは、寮全体を飛び越えて、エレオス教会騎士学校の校長室にまで届いたという。


 

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