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【完結済】異世界生活は難しい。〜勇者一行、現代日本に転移する〜  作者: 松竹紅葉
最終章 勇者一行、異世界に別れを告げる。
77/86

勇者一行、藤間の実家にお邪魔する。(1)

最終章スタート。

伏線をガンガン回収していきます。

 コミケでの戦いを終えて3日が経った。すっかり元気になったアレックスたちは今日、とある剣術道場を訪ねている。


「『藤間剣術道場』……此処が藤間先生の御実家かぁ。」

「藤間先生のお祖父さんとお祖母さんがやってるんだよね。」


 魔法のこと、彼方側の世界のこと、そして魔王のこと。あの時はゆっくりと説明することができず、改めて時間を設けることにしたのだ。そういう訳でアレックスたちは今、藤間が育った実家にお邪魔している。

 

 藤間剣術道場。木造の門に立て掛けられた看板の字を確認しながらアレックスたちは門を潜る。見事な石庭がアレックスたちを迎えるが、そこに居たのはその風景に全くそぐわない人物たちであった。


「あ、アレックスたちじゃん!やっほー♪」

「石で全てを表現するとは……此方側の世界の人間の考えることは面白い。」


 栗色の髪のギャルとゴシック調の服に身を包んだ小柄な少女。ザ・和風なこの空間の調和は、たった2人の手によって破壊されていた。


「鈴木!それから魔王も!」

「2人とも先に来てたんだね。」


 今回の話には莉花と魔王も呼ばれていた。オオヒトクイ騒動の時に莉花は魔法を使うところを見られている。藤間としてはあの時の状況をきちんと説明して欲しいのだろう。


 しかし集合時間より少し早いとはいえ、2人は何故庭で時間を潰しているのか。此処まで入ってきているのならもう家に上がらせてもらっても良いのではないだろうに。疑問に思ったアレックスは2人に尋ねた。


「お前ら、何で庭に居んだよ?先入っとけば良いのに。」


 その問いに2人は顔を見合わせると、ニヤニヤしながら此方を見た。

 

「いやぁ、今入るのはちょっと……ねぇ?」

「私は空気が読める魔王だからな。ああいう雰囲気の中にお邪魔するのは野暮というものだ。」

「「「「「……?」」」」」


 こっちこっちと莉花に手招きされ、アレックスたちは藤間と書かれた表札のある家屋へ向かう。扉に近づくにつれ、中からの会話が聞こえてきた。


「だーかーらーッ!何度も言ってるだろう!?」


「「「「「(藤間先生!?)」」」」」


 藤間がこれだけ声を荒げているのは珍しい。誰かに向かって大声を上げているようだが、一体何があったというのか。アレックスたちはいつでも突入できるように名優の腕輪に手を掛けようとしたが……



 

「聖先生は同僚だから!まだお付き合いすらしてないから!」

()()!?まだってことはそういう予定があるってことなのね!聞きました貴方!やっぱり聖さんは帝人の未来のお嫁さんですよ!」

「婆ちゃん話聞いて!?ほら爺ちゃんも何か言ってくれよ!」

「……式はいつだ?」

「爺ちゃんもこういう時だけボケたフリすんのやめて!?」




……戦闘する必要はなさそうだった。

 

「ね?今入るのはナンセンスっしょ?」

「そうだな。」


 藤間が聖と共に来てしまったせいで、結婚のご挨拶とでも思われたのだろう。普段の藤間とは異なる一面を覗いてしまったようで(聞いているだけだが)少し申し訳ない気分になる。


 とはいえ、いつまでも外で待ちぼうけというわけにはいかない。先に来ていた莉花がチャイムを押すと、騒がしかった扉の向こうが静かになる。鍵はしていなかったのか、扉はすぐに開かれた。


「はい、今出まー……遅いッ!何でもっと早く来てくれなかったんだッ!」

「まだ集合時間まで余裕ありますよ先生。」

「ニヤニヤするな山田!……ちょっと待てお前たち、いつから聞いていた?」


 出迎え早々藤間から熱烈な歓迎の言葉を受け、ツトムたちは笑顔になる。顔を真っ赤にした藤間と聖の後方からは高齢の夫婦が顔を出しており、どうやら彼らが先程藤間と話していた彼の祖父母のようだった。


「あらぁ、貴方たちが帝人の生徒さんたち?よく来たわねぇ。さあさあ、中に入って。冷やしたスイカを出しますからねぇ。」

「「「「やったー!お邪魔しまーす!」」」」

「質問に答えろお前たちぃぃぃッ!」


 藤間の質問を右から左へと聞き流し、ツトムたちは藤間の祖父母に案内されて客室へとお邪魔する。


 道場の思わず背筋が伸びてしまいそうな雰囲気とは異なり、住居の方はどこか懐かしい温かな雰囲気の場所だった。畳には長机と人数分の座布団が敷かれ、案内されるがままにツトムたちは座る。


「今飲み物とスイカを持ってきますからね。」

「あっ、私も運びます。」

「私も行くわ。この人数じゃさすがに大変よ、お婆ちゃん。」


 藤間の祖母が立ったところで、杏とイザベラが席を立つ。しかし祖母が手で2人を制すると、そのままにっこり笑った。

 

「ありがとうね。でもお客様を働かせる訳にはいかないわ。座ってゆっくりしていて大丈夫よ。」

「お前たちは座っててくれ。俺が無理言って頼んだんだ。準備は俺がするよ。」

「そうね、それならお言葉に甘えようかしら。ただお客様が来てるのに何もしないのは性に合わないわ。帝人、手伝ってくださいな。」

「分かったよ。」


 2人が台所へ向かった為、残されたのはアレックスたちと藤間の祖父である。ゆっくりしてくれと言われても他人の家、それも今日あったばかりの人が居る空間で寛ぐのは少々難しい。


「……。」

「「「「「(しかもお爺さん怖いし。)」」」」」


 穏やかで優しそうな祖母と異なり、祖父の方は如何にも昔の頑固親父……という雰囲気の男だ。ずっと無表情でどっしり構えているので、皆口を開けずにいた。


「皆戻ったぞー……ってお通夜か此処は!?」

「もっと肩の力抜いても良いのよ〜。」


 暫くして準備を終えた藤間たちが戻ってきたのだが、シンと静まり返った皆の様子を見て驚いている。藤間の祖母はそんな空気に動じることなく机に麦茶を並べると、自身の夫に向かって話しかけた。


「もう、ユウジさん。恥ずかしくて表情が固くなっていますよ。」

「……私があがり症なのはハナが1番よく知っているだろう。」

「ええ、ええ。よく知ってますよ。でも、せっかくの機会なんですから学校での帝人の話とかを聞けば良かったのに。」

「お、大勢相手に話すのは……緊張する。」


 先程の会話とプイと他所を向く藤間の祖父の様子を見て、アレックスたちの心は1つとなる。

 

「「「「「(アレ緊張してたの!?)」」」」」


 驚くアレックスたちを面白そうに眺めながら、藤間は切り分けたスイカを置いて説明した。


「ハハッ!悪いな、爺ちゃんなりにお前たちを歓迎してるんだ。分かりづらいがあれでも客が来て喜んでるんだよ。」

「全ッ然そうは見えねぇけどな……。」


 分かりづらいというレベルなのだろうか。とてもじゃないが喜怒哀楽が表情から抜け落ちていて、そこにあるのは()である。アレックスたちは苦笑いしながらスイカを受け取った。






「とまぁそんな訳で悪い魔人は退治されてめでたしめでたし……っと。藤間先生、聖先生。それから爺さんたちも理解できたか?」


 藤間たちのもてなしを受けてひと段落した後、アレックスたちは今日の訪問の目的を果たすべく説明を行った。コミケの時は戦闘中だったので省いてしまった部分も多い。前回の説明に補足する形で伝えることになった。

 

「爺ちゃん、婆ちゃん。信じられないかもしれないけど、こいつらが言ってることは本当だ。俺は魔王として覚醒して暴走してしまった。もし皆が居なければ、俺は……取り返しのつかないことをしていたと思う。」

「藤間先生……」


 拳を力強く握りしめる藤間の手を隣に居た聖がそっと手にとる。


「手に跡が残っちゃいますよ。今こうして皆無事に生きているんですから、そんな顔しないでください。」

「聖先生、ありがとうございま……」

 

「見ましたユウジさん!?やっぱり()()()ですよ!」

「……フン。今晩は赤飯だな。」

「2人とも話聞いてたのか!?」


 藤間の祖父母は孫の恋愛事情の方が余程気になるらしい。アレックスたちは自分たちの話がちゃんと伝わっているのか不安になった。そもそも此方側の世界の人間からすれば、信じ難い話であるのは間違いない。


「爺ちゃん、婆ちゃん。俺、真面目に話してるんだけど……。取り敢えず納得しなくても良いから話進めて良いか?」


 このままでは埒が明かない。藤間は浮かれる祖父母を落ち着かせるのを諦め、そのまま本題に入ることにした。


「……アレックスたちが説明してくれた通り、俺が魔王の器だったのは俺の祖先に魔王が居たからなんだって。どっちの血縁かは分からないけど、何かそんな話聞いたことないか?」


 そして今回の話を藤間の家でやったのには訳がある。それは、この話を()()()()()()()()()()()()()


 藤間が魔王の子孫ということは、いつの時代かの魔王が此方側の世界に転移してきたということになる。この世界の様子を見るに魔王が暴れたということは無さそうではあるが、脅威であることには違いない。勇者一行としては、藤間の祖先である魔王のことを把握しておきたかったのだ。


 藤間の祖父母はというと特に驚いた様子は見せなかった。そもそもこの話を空想と捉えている可能性もある。どちらにせよ、有益な情報は得られなさそうだとアレックスたちが諦めようとした時だった。


「あら?私、帝人に話してなかったかしら。」

「婆ちゃん、一体何のこ……」


 意外なことに、藤間の祖母に心当たりがあったらしい。皆が彼女に注目する中、藤間の祖母はニコニコしながら答えた。






「貴方のいう魔王は、お爺さんのことですよ。」






「「「「「……は?」」」」」


 驚きすぎると声が出ないというのは本当らしい。色々聞きたいことがあるというのに、その場に居る誰もが声を出すことができなかった。


 辛うじて動く顔を何とか藤間の祖父に向けると、彼は頬を赤らめて顔を両手で覆っていた。



 

「そ、そんな目で見ないでくれ。あの頃はその、若かったんだ……。」



 

 本当に恥ずかしそうに小声で話す彼を見て、どうやらその話は嘘ではないことが分かる。分かるのだが……



 

「「「「「ウッソだろ(でしょ)!?」」」」」



 

 思わず否定したくなる衝撃の事実に、皆が声を揃えたのだった。

アレックスたち驚き過ぎて顎外れてるんじゃないかと思う今日この頃です。

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