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【完結済】異世界生活は難しい。〜勇者一行、現代日本に転移する〜  作者: 松竹紅葉
第3章 勇者一行、魔王と相対す。
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勇者一行、魔王城に侵入する。

格好良いツトムはログアウトしました。

 人気のない森の中、そこにひっそりと佇む古い洋館がある。1年程前まで違法な宗教団体が拠点としていた場所で、現在は誰も居ない廃墟となっている……筈だった。


今、そこに足を踏み入れようとする者たちが居る。

 

「……此処かぁ。もう見るからにヤベェとこじゃん。」

「魔障が凄いですね、最早魔王城では?」

「実際魔王が住んでるんだから、間違ってはないんじゃない?」

「お前たち、呑気過ぎるぞ。」

「杏……。」


 此方の世界とは似て非なる世界からやってきた4人組、勇者一行と魔法を齧った男子高校生ツトムは、連れ去られた杏を救出する為に敵のアジトへと足を踏み入れようとしていた。


「……にしても、こんなにあっさり見つかるとは思わなかったぜ。それもこれも……」


 アレックスは屋敷を眺めながら呟く。杏を連れ去った莉花たちは見事に魔力を消していたので、どう探したものかと悩んでいた。しかし、ツトムのある行動によって彼女の居場所はあっさりと分かったのである。


「ツトムが杏に『じーぴーえす』?仕込んでたお陰だな!」

「言葉にしないでくれ!今になって自分の行動に引いてるんだ!」


 アレックスから笑顔で言い放たれた言葉に、ツトムは膝をつく。そう、杏を狙う魔物が出現するようになってから、ツトムは貯めていたお小遣いを全額使い果たし、GPSを杏に仕込んでいたのである。……ちなみに杏には無許可である。


「まあそうよね。あれでしょ、こっちの世界だとこういうの『すとおかあ』……って言うんでしょ?」

「緊急事態だったから結果的には良かったものの……正直どうかと思うぞ、ツトム。」

「……ッ!その……通りだ……ッ!」


 女性陣の突き刺さる言葉に、ツトムはどんどん白くなっていく。だが、これだけは言っておきたい。ツトムは顔を上げると力強く主張した。


「言い訳にはなるがッ!また昔みたいに杏が攫われたらどうしようかと考えていた結果ちょっとこうアレな感じで行動が出力されちゃっただけで別に普通のストーカーみたいなやましい目的で使おうだなんてこれっぽっちも思ってない!」

「「だとしても引くわ。」」

「……。」

「お2人共!戦う前にツトムが(精神的に)死んでしまいますからその辺で!」

「ツトム、全部終わったら杏にちゃんと謝ろうな……?」


 これから魔王との決戦だというのに、こんな調子で大丈夫なんだろうか。アレックスは溜息を吐く。まあ前回もそんな感じだったし、今更か。アレックスは自身の両頬を叩いて気持ちを切り替えた。


「よし、行くぞッ!」

「あ、待てア……」


 シャーロットが止める間もなく、アレックスは足を踏み入れる。瞬間、ビリッとした衝撃が走り気がつくと目の前には悪魔の大群が居た。


「うわぁぁぁ罠かよぉぉぉッ!?」

「あらら。やっちゃったわねぇ、ダーリン。」

「結界に気付いてなかったのかあのバカは。」

「バカなのは今更でしょう。とりあえず目の前の敵を倒しましょう。」

「お前らアレックスに容赦ないよな。」


 凄まじい口撃をアレックスにぶつけつつ、勇者一行は悪魔たちに技を放とうとした。だが……


「《正邪之結界》!」


 突如勇者一行の前に光の境界線が引かれた。そこから生まれた光の壁は、アレックスたちに襲い掛かろうとした悪魔たちを消し炭にしていく。


「どうやら間に合ったようですね。」

「え?ノア、どういうことだよ?」

 

 どういうことかとアレックスたちが混乱する中ただ1人、ノアだけは状況を理解した。


 


――彼らが来てくれた。

 



「……遅くなりました、ノアさん。戦装束なんて滅多に着る機会がないもので。」

「前回はサポートしてもらってばかりでしたから!今回は私たちにお任せください!」

「オレたちアンデッドだけじゃなく、悪魔とか悪霊とか祓うのも得意ですからね!」

「あ、俺は違うっす!でも頑張りまぁすッ!」




彼らの声を聞いて、ノアは満面の笑みを浮かべる。



 

「待っていましたよ、オカルト研究会(皆さん)!」




 

 

「……え、じゃあノアが頼んでたのか。」

「ええ、『魔』を従える呪術師(シャーマン)に対抗するのに、彼らほどの適任者は居ませんから。」


 それからはあっという間だった。お祓いが得意というのは本当だったようで、オカルト研究会によって空を覆い隠すほど居た悪魔は全て消え去り、穏やかな夜空が広がっている。


「敵が呪術師(シャーマン)だと分かった時から、もしもの時はと頼んでいたんです。」

「オカルト研究会の活動内容はオカルトスポット巡りという名の浄化作業ですから。こういうものには慣れているんですよ。」


 ノアの言葉にオカルト研究会会長である井上菫は頷いた。戦いに来たというだけあって、いつもの制服姿ではなく巫女装束を身に纏っている。


「やっぱり会長の巫女姿決まってるなぁ……。」

「そういや、上田サン……だっけ。アンタ僧侶なんだろ?何で袈裟着けてねぇの?残りの2人なんか私服じゃねぇか。戦闘服どうしたんだよ。」


 寺の息子である上田の呟きにアレックスは突っ込んだ。彼の指摘通り、上田は甚平に数珠、教会の娘である美園は白を基調とした涼しげなワンピースにロザリオ、狼男の末裔である室町にいたってはタンクトップである。


「オレ、寺の息子ってだけで()()僧侶じゃないんだ。親父に認めてもらえるまで袈裟なんか着けられないよ。」

「私の家も教会って言ってもプロテスタントだし、父親が牧師やってるだけだからね。戦闘服は持ってないかなぁ。」


 上田と美園の言葉にアレックスは納得した。だがもう1人、他2人よりよっぽど気になるヤツが居る。

 

「なるほど。……じゃ、お前は?」

「おおおお俺っすか!?」


 アレックスの目線の先、そこに居たのはオカルト研究会1年生の室町だ。慌てる室町に、アレックスは呆れていた。

 

「お前しかいねぇだろ。一目見た時からずっと気になってたんだ。室町、お前……」


「どうして下が短パンなんだよ!?タンクトップに短パンって夏休みの小学生か!?」

「「「「(やっぱそこ気になるよなぁ……。)」」」」


 アレックスの言葉に勇者一行とツトムは大きく頷いた。室町は鍛えているのか細身ながら筋肉質な身体をしている。だからこそ、余計に短パンから覗く全く柔らかくなさそうな太ももが強調されてしまっていた。


「さっきからテメェの生足がチラチラ目に入ってすんげぇ気が削がれる!」

「なッ!俺だって好き好んでこんな格好してないっすよ!?」


 アレックスの主張に対し、室町は怒りを露わにする。誰が好き好んでどこぞのハンターのような格好を高校生になってまでしなければならないというのか。彼はどこか諦めたような表情でその理由を語った。


「《獣化》で獣の姿になる分には何ら問題はないっす。けど、獣人の姿になったら……」




「その……服がほぼ弾け飛ぶんで……。」




 その日、勇者一行とツトムは学んだ。人が何か不可解な行動を起こした時、まずは理由を聞くべきだと。決してその姿を笑ってはならないのだと。


「なんかゴメンな……。」


――人にもっと優しくなろう。

そう決意したアレックスなのであった。






「私たちはこのまま外で待機して『魔』を弱体化させる結界を展開します。魔王相手にどこまで効くかは分かりませんが……。」

「感謝する。何せ相手は魔王だ。出来る限りの手は打っておきたい。」


 菫の申し出にシャーロットは礼を言う。幾ら『魔』特効があるといえども、魔王との戦いにまで彼らを巻き込む訳にはいかない。相談の末、室町以外の3人は外で待機することになった。


「俺は皆さんの足を引っ張らないように頑張ります!」

「室町君、貴方は此処に居る誰よりも鼻が利きます。山田君のこと、頼みましたよ。」

「っす!」


 此処から先は二手に分かれる。勇者一行が正面から屋敷に突入して暴れ回る隙に、ツトムと室町が潜入して杏の救出に向かうという作戦だ。中に魔物がうじゃうじゃ居る可能性も考慮し、ツトムと室町は聖水と《透明化》で極力戦闘を避ける形で進むことになる。


「聖水が有効なのは()()()()。人間には効かないから、呪術師(シャーマン)には気を付けてね。」

「はい。ありがとうございます、美園先輩。」


 ツトムは美園から瓶に入った聖水を受け取り、栓を取って頭から被った。聖水の清浄な力はツトムの周囲を包み込み、気配を消していく。


「聖水の効果は30分くらいしか保たないから、効果が切れそうになったらすぐ次の瓶を開けること!」

「「はい!」」

「これでよし……っと。会長、結界の準備整いました!いつでもいけます!」


 上田の結界魔法の下準備が終わり、とうとうその時がやってきた。

 


「よしツトム、俺たち行ってくるな。」

「分かった。」

「杏のこと頼んだぜ?」

「……任された。」


 アレックスはツトムの背中をポンと叩いて前に進む。


「また無茶しすぎないでくださいね。君は賢い。勇気ある撤退も時には必要ですよ。」


 ノアはアレックスにやる時のように、少し雑にツトムの頭を撫でた。


「杏を助けたいというお前の想いはよく分かっている。だが、絶対に死ぬな。杏を泣かせたら許さん。」


 そう言って勝気に笑ったシャーロットはツトムの肩を軽く叩いて進んでいく。


「せっかくのアピールチャンスよ!杏を格好良く助けてあげてね♡」


 最後にイザベラが唇に人差し指を当て、悪戯っぽくウィンクをした。




「ハハッ、魔王城攻略2回目だな!」

「今度こそ、世界に平和を齎しましょう。」

「前回のリベンジ、此処で果たさせてもらうとしよう!」

「ふふ、気合い入るわねぇ!」


 屋敷の前に立つ4人の勇姿を見て、ツトムは改めて実感する。


その少年少女がこれまで積み上げてきた結果。

それを彼らの背中が何よりも物語っていた。


「そんじゃ行くか!」


 アレックスは真正面に剣を構えると、光の魔力を集中させて剣撃を放った。


「《閃光斬》!」


 眩い剣の波動は魔法によって固く閉ざされていた扉を紙屑のように吹き飛ばす。

 


 

「魔王城、お邪魔しまぁぁぁぁぁすッ!」


 


『――勇者一行、魔王城に侵入する。』










 

『……ってか!?面白くなってきたなぁ!ククッ。』

そりゃ魔王城に中ボスは居るよねって話です。

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