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【完結済】異世界生活は難しい。〜勇者一行、現代日本に転移する〜  作者: 松竹紅葉
第2章 勇者一行、学生生活を送る。
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勇者一行、魔物の襲撃を受ける。(1)

大変お待たせしました。

やっぱり戦闘パートは時間がかかる…。

「全く、頭使って疲れてるっていうのに……。本当に嫌になっちゃうわぁ。」


 ノアたちが魔核の守護者――魔核妖花と相対している頃。携帯していた杖を出しながら、イザベラは愚痴を吐く。彼女が見上げる先には、夕焼け空を我が物顔で飛翔する黒鳥が居た。


「キィィィィィッ!」

「ちょっとぉ、近所迷惑でしょうが!」


 黒鳥はイザベラを見下ろしながら威嚇する。イザベラは周囲に被害を出さないように防護結界を作り出した。


「(杏にはダーリンとツトムが付いてる。シャーロットとノアも、何とかするでしょう。)」


 今までの雑魚モンスターに比べれば、明らかに殺意が違う。だが、この程度で怯む勇者一行ではない。


「ふふっ、魔核龍戦の時はイマイチ活躍できなかったもの!張り切っちゃうわよ♡」


金髪の魔女は不敵な笑みを浮かべた。






「……チッ!」

「「「シャ、シャーロット様!」」」


 蹴り技を受け流され、シャーロットは舌打ちしながら敵と距離を取った。


 シャーロットとお供三人衆の前に現れたのは、蝙蝠のような魔物だった。度々超音波を発して此方の動きを鈍らせてくる敵にシャーロットは苦戦している。何より……


「(皆を庇いながらは厳しいか……ッ!)」


 まさか一般人の彼女たちと一緒に帰っている時に襲撃を受けるとは思いもしなかった。今この場で戦えるのはシャーロットただ1人。魔法や魔物の存在を知らない彼女たちに、ただ逃げろと言っても納得してくれないだろう。


「だが……無理だと言って諦める私ではない!クラシス家の名にかけて、皆を守って貴様を倒す!」


 シャーロットは再び構えを取る。いつだってやることは変わらない。誰かを守る、それがシャーロットが戦う理由なのだから。







 精霊たちを展開しながら、ノアは改めて目の前の魔物――魔核妖花を確認する。


 3メートルを超える巨体の半分近くは、大輪の毒々しい花で占められている。茎らしきものは見当たらず、触手のように動く蔓が幾多にも絡み合って歪な大樹のようになっていた。


「(花弁は……既に再生済みですね。)」


 妖花の花弁が欠けた様子がない。ノアが背後に目を遣ると、先程飛ばした花弁は突き刺さった地面のコンクリートを溶かしていた。どうやら見た目通り、あの花弁には毒のような成分が含まれているようだ。菫が事前に護符を使っていなければ、ノアは立っていられなかっただろう。


 そしてノアは考える。この魔物は魔核を取り込んでいるが、これを魔核の守護者と呼んで良いものか。魔核は基本的に発生した領域からは出られない。出られないからこそ、自身を守るために守護者たる魔物を近くに置くのだ。


「(人為的に守護者化させられた、ということでしょうか。)」


 そもそも以前戦った魔核龍からして何処かおかしかった。何らかの手が加わっていたと考えて良いだろう。


「ノア先輩!結界の展開が終わりました!」

「上田君、有難う御座います!」


 ノアが考えを巡らせていたところで、上田の結界が完成した。これで外に居る一般人を巻き込むことはない。


「俺が先陣切るっス!《獣化》!」


 そして室町が獣人族固有の魔法、《獣化》を唱える。すると室町の身体中から毛が生え始め、やがてその姿を漆黒の獣へと変えた。鋭い牙と爪を持つ黒狼は、目の前の獲物に飛び掛かっていく。


「グルゥゥゥゥアァァァァッ!」


 妖花は蔓を鞭のようにしならせて襲いかかるが、室町はものともせず前へ前へと進んでいく。そして魔核を目で捉えると、助走をつけて跳躍した。


「《鋼鉄牙(アイアンファング)》!」


 牙を硬質化させ、魔核目掛けて噛みつき掛かる。しかし、その牙は閉じた花弁によって防がれた。


「グォッ!」

「室町君!《風之揺籠》!」


 体勢を崩した室町を、柔らかい風が包み込む。しかし、妖花は追撃の手を緩めない。再びしならせた蔓を室町とノア目掛けて振り下ろした。


「させません!《聖なる光(ホーリーライト)》!」

「動きを止めます!《正邪之結界》!」


 襲い掛かる幾多もの蔓を美園が的確に撃ち抜き、ならばと放たれた鋼鉄の如き花弁は上田が生み出した結界によって阻まれる。弾かれた花弁はそのまま反転すると、妖花に襲い掛かった。

 

「「やったあ!」」

「2人とも、有難うございます!このまま攻めますよ!」





 

 美園と上田は攻撃魔法が苦手だった。故にオカルト研究会の戦法は、支援役の3人がとにかく室町をサポートするスタイル。だが、攻撃手が1人というのはやはりリスクが高かった。攻撃が効かない相手、複数の敵への対処ができないからだ。


「やはり貴方たちも攻撃魔法を覚えた方が良いと思います。」


 何回か彼らの特訓に付き合った結果、ノアは支援役の3人に告げた。その言葉を受け、上田と美園は困った顔をする。

 

「そ、それは重々承知しているのですが……オレたち、攻撃魔法の習得はできないんです。」

「……と言うと?」

「『誓約』に引っかかってしまいます……。」

「ああ……そういうことですか。」


 オカルト研究会の面々が用いるのは、いずれも系統外魔法に分類されるものである。特に彼らが得意とする神の力を借りて行う魔法は強力だが、神が提示する条件下でのみしか使えない。それを『誓約』と呼ぶ。内容は神次第だが、共通しているのは誓約を破れば2度と神の魔法を行使することができないということだ。


「私も上田君も、『相手を害する意志を持って行使する魔法』が駄目なんです。」

「菫さんは?」

「私はそういった誓約はありません。攻撃魔法も少しなら行使できます。本職ほどではありませんが。」

「ふむ……。」


 ノアは少し考えると、攻撃魔法が使えない2人を見つめる。


「では、お2人は具体的にどのような魔法を使えますか?」

「え?わ、私は回復魔法と神の光の力を使った浄化魔法です。」

「オレは結界魔法と悪霊とかを吹っ飛ばす浄化魔法です。」


 浄化魔法はアンデッドの魔物に対して有効な魔法だ。一見攻撃魔法のようにも思えるが、その本質は生命の理から外れた者を救うことにあるので攻撃には当てはまらなかったりする。


「(神の光の浄化魔法はアンデッド以外にはあまり効果は無いけれど、多少の妨害なら可能。陽動もできるか……?それと結界魔法。魔物を別の領域へと分ける……本当にそれだけだろうか?)」


 ノアはふと、アレックスがかつて言っていたことを思い出す。


『ノアはさ、頭が固ぇんだよ。もっと柔軟になった方が良いぜ!カイシャク次第ってヤツだよ、カイシャク!』


「ふふ。」

「ノ、ノア先輩?」

「ああ、いえ。少し弟に言われたことを思い出しまして。そうか、()()……。」


 ブツブツと呟き出したノアを見て、上田と美園は顔を見合わせる。そして数分後、ノアは1つの結論を出したのだ。





「(ノア先輩の言った通り!神の光の浄化魔法、『敵の悪意の籠った攻撃を浄化する』って解釈すれば放てる!)」


 敵を仕留めるまではいかないが、美園の魔法は敵の手数を減らし、味方の攻めのパターンを増やす大きな一手へと変貌した。

 

「(オレの結界魔法の本質は『境界を作ること』!そして《正邪之結界》は悪しきモノが正側の領域に入り込んだ時、罰を与える!)」


 そして上田の結界魔法は悪しきモノを拒絶し罰する、攻守を兼ねる万能の魔法となった。


 しかし、まだ足りない。体勢を崩した妖花であるが、弱点である魔核は未だに鋼鉄の花弁によって守られたままだ。


「2人が作ってくれたチャンス、絶対に逃しません!《光輪之矢》!」


 詠唱を終えた菫が太陽を思わせる光の矢を放った。真っ直ぐ伸びた矢は妖花に刺さると同時に妖花を拘束する。


「グルゥゥゥゥァァァァ!《鋼鉄爪(アイアンクロー)》!」


 妖花の死角から飛び出した室町は、動きを止めた妖花の花弁を強化した爪で切り裂く。再び剥き出しになる魔核、だが既に新たな花弁が魔核を守るように再生しようとしていた。


「くそ、また……ッ!?」


 今までで1番上手くいったであろう連携。それを以てしても、この魔物にとどめを刺すことができないのか。3人が絶望した時だった。


「《火蜥蜴(サラマンダー)之演舞》!」


 突如妖花が3人の視界から消えた。

 否、豪炎によって視界から()()()()


 妖花を吹き飛ばす勢いで発生した炎の竜巻は、妖花の再生を許さず消し炭へと変える。守る盾を失った魔核も、最上位の精霊の力の前ではなす術もない。


 炎が消え去った後、残ったのは妖花だったモノ。

 一瞬風が吹くと、残った塵も空へと飛んでいってしまった。


「これ、召喚するのに時間が掛かるんですよ……。」


 頭に赤い蜥蜴を乗せたノアは、疲れた顔で笑ったのだった。


 


 オカルト研究会vs魔核妖花、決着。

次はイザベラの戦いです。

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