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神殺しは銃で死ぬ  作者: 尾根末彦
第7章 魔薬
49/90

空手

「ねえ、コレ似合うかなあ!」

「無茶苦茶似合います! 赤羽さん!」


 エネルギーの高い風雅と陽美香の二人に押され、流されるように大和と勇美はブティックの商品棚を何とはなし見つめていた。

 結局、日曜日の午前を利用して四人は買い物に来ていた。

 魔薬ロータスの捜索は雄大に任せて。


「俺、基本的にバンドのTシャツとジーンズしか買わねえから、こういうところこないなあ」

 風雅が言うと、陽美香は感心したように言う。

「へえ、その割にはオシャレじゃん」

「男はクツと上着に気を使ってればキマって見えるからね」

「おお、成程確かに! ところでそのTシャツってオールスパイス? 私も好きなんだ」

「本当に!? これはね、1年前の来日の時に……」

 そのまま好きなバンドの話になり、二人は結構盛り上がっているようだ。


 成程と大和は風雅を見つめる。ダークブラウンのジャケットなのだが、ブランドものなのだろう。見たことのあるロゴがついている。


「うーん私は数いるから、この店だと予算オーバーだなあ。まあここで買うんじゃなくて、いい色を探して似たようなのを量販店で探すんだけど」

「成程ー節約ですね」


 その会話を聞いて、勇美がホッと胸をなでおろすのを大和は見た。値札の文字に内心びっくりしていたのだろう。


「あと、何で敬語なの。いいよタメで、名前で呼んでいいよ、風雅くん」

「え、いいんですか? えっと、陽美香ちゃん」

「ん、よろしい」


 陽美香はにっこりと笑い風雅もまたはにかんだような笑顔になる。

 そして、陽美香は勇美に笑顔で近づく。


「イサミン! 何かいいのあった!?」

「いや、私はいいよ」

「ええ! 何で! あれとかそれとか!」


 指さしたのはタイトなホットパンツに膝上丈のスカートで、あまりに露出が高すぎる。


「ムリ無理無理! 恥ずかしくて着られない! それに私足太いし!」

「ええ、いいと思うけどな」


 陽美香はブーたれる。

 こいつ勇美の足が見たいだけなんじゃないのかと思いながら、大和が助け船を出す。


「本人の意思が大事だろ。それにあんま露出高いと蹴りにくいだろうし」

「確かに、腿は守っとかないと危ないしねえ」


 勇美の同調に陽美香が肩を落とす。


「何を想定してんの……?」


 ナイフにより腿を切られるとかなりの確率で致命傷になるので守るのが鉄則。

 雄大によって二人はそのように指導を受けていたので、防刃性のジーンズを着ていた。


「露出っていうなら、七分丈のスキニージーンズとかは? ジーンズが動きやすいなら、その中でメリハリつけてった方が楽しいよ」

 風雅はマネキンを指さしながら言う。陽美香も頷きながら肯定を示す。

「うーん、そういうのもあるのか……アリかも」


 二人の意見を置いて、勇美はポツリと呟く。

「私はそれよりも上の部分を買いたいんだけど……」

「トップスだよイサミン」

 やれやれと肩をすくめながら、陽美香はティーンズ向けのブティックへ移動する。

「いっそタンクトップとかどう? それでさっき言ったスキニージーンズとか着れば海外モデルみたいじゃん」

「私肩回り結構ごついから、そういうのもちょっと……」

「もう……」


 陽美香は不満げに言う。

 その後も物色する陽美香と風雅の後ろで、大和は勇美に耳打ちする。


「井上……」

「何? 釧灘(くしなだ)

「あんまり、太いとか気にしなくていいんじゃないか?」


 大和の言に、勇美は目を丸くする。


「いや、その。君の足や腕が太いのは、君が空手を努力して続けてきたからだろう。

 だったら自身を持って、出していいんだ。

 それを不格好だなんて俺も赤羽も言わないから。

 まあ恥ずかしくて着ないっていうならいいんだけど、少し……気になって」

 それだけ言って恥ずかしくなったのか大和は退散した。

 勇美はしばらく言われたことを咀嚼して、黒いタンクトップを手に取った。



「すげえ」

 風雅から素直にため息が出る。

 本当にジーンズとタンクトップなのだが、井上勇美が着るとハリウッドのアクションスターみたいに様になっていた。

 陽美香はポスっと勇美の胸元に顔をうずめ、「バブー!」と叫んだ。

「やめろおっさん女」


 大和がぞんざいに引っぺがす。

「凄い似合うよイサミン! あ、これ持ってこれ!」

 陽美香は棚に置かれていた革製の女性用トートバッグを持たせる。

 身に着けると、女性的な落ち着きも感じられ、女子大生のようだった。

 気恥ずかし気に笑う勇美を、大和は満足そうに見つめていた。



 他にもベージュのケープやつば付きの帽子なども買って、見事にボーイッシュだけれど女性的なファッションに仕上がった。

 そのまま、四人はアメリカンスタイルのハンバーガーが食べれるオープンカフェに陣取った。

「いやあ、買ったねえ」

「ああ、その、ありがとうな」

 勇美は間を取って、三人に頭を下げる。

「全然! 凄いイイもの見れたから!」

「いいよ! すげえ可愛いじゃん勇美ちゃん」


 陽美香と風雅は勇美をべた褒めしたあと、大和の方をじっと見る。

 大和はゴホンと咳払いをし、勇美の目を見て言う。

「その、すごい似合ってるし、可愛いと思う」

「はは……。ありがとう……」

 顔を真っ赤にしながら俯く二人に満足気にハイタッチする陽美香と風雅だった。



 そしてハンバーガーを食べながら、陽美香はポツリと呟く。

「あの、お母さんのことって、皆知ってる?」

 陽美香の問いに、大和が呟く。

「アマテラスが言ってたな。ヒサナだっけ?」

「うん、赤羽緋沙奈、私のお母さん。10年前に死んだって聞いて。

 あ、今は伯母さんの家に住んでるんだけどね」

 10年前という単語に大和と勇美が目を開く。

「10年前って言えば、俺が神殺しになったのもそのタイミングだな」

「あ、私もだ」

 そこで、四人は顔を見合わせる。

「10年前って言ったら、神殺しが何かすげえ戦いをして何人も死んだって、てことは」

「……私のお母さんも、神殺し」

 そう言われ、風雅はうーんと腕を組む。


「神殺しって遺伝するのか?」

「生物学的に遺伝はしないけど、環境的に遺伝はする……かな」

 風雅の言い回しに、勇美は疑問の声を上げる。

「どういうこと?」

 届いたハンバーガーを食べながら、風雅は答える。

「遺伝自体するわけではないけど、神殺しの周囲には大悪魔や神が寄り付きやすい。だから、周りにいる人間は神殺しになりやすいんだ」



 そこで、大和は思い出す。

 4歳の頃に出たあの化け物を。

 それをいともたやすく倒した水上龍誠を。


「じゃあ、私に神殺しになる、特別な才能があるわけじゃないんだ」

 陽美香は落胆したように言う。

「まあ、成りたいんなら異能者だね。神殺しはリスクが大きい」

「そうかあ、異能ねえ」


 うーんと悩む陽美香に、勇美は思い詰めるように言う。


「私はわざわざならなくていいと思うけどな。毎日化け物に襲われて大変だし、それに、陽美香かなり強いから」

「まあイサミン基準で考えられても困るけど、ケンカ位ならまあ」

「そうじゃなくて、心根の話、あんたが柔術や柔道に一生懸命なのは知ってるから、まずはそれを極めてからでいいんだよ」


 勇美の諭すような声に、陽美香は納得しかねたようだが、うんと頷いた。



 その時、つんざくような叫び声が繁華街にこだまする。

 四人が一斉にハンバーガーを置き、そちらを見ると、客引きのホストらしい人が暴れていた。

 一目でカタギではないとわかる男相手に掴みかかっている。

 目は血走り、口は荒々しく曲がり、服は膨張した筋肉で裂けた。


「昨日の!」


 陽美香の叫びに、大和は黒い刀を具現化させ、衝撃波を放とうとする。

 だが、勇美がそれを制止した。

 何事かと大和が勇美を見ると、彼女は向かってくる男を指さした。

 季節外れのトレンチコートを身にまとった青年を。


「おお、おお、大当たりだなあ」


 井上勇美の従兄であり、防人(さきもり)。井上雄大警部、その人だった。

 魔薬を飲んだであろう男は、消火栓を弾き飛ばした、鉄でできた消火栓は千切れ、真っすぐに雄大に飛んでいく。

 だが、雄大は上段蹴りで迎撃した。

 鉄製の消火栓は、寸断され男の周りに落ちた。


「暴行、器物損壊、公務執行妨害……まあいいや、現行犯で、逮捕する!」


 男は凄まじい速度で5メートルほど飛び上がると、腕を思いっきり振り落とした。

 だが、雄大にとっては遅すぎた。

 薬でいくら身体能力が上昇しようとも、攻撃の予兆がわかれば意味がない。


 抜き手。


 手のひらを伸ばした状態で、鍛え上げられた指先で相手を貫く空手の中でも有数の必殺技。

 それが鳩尾に叩き込まれた。

 薬を飲んだ男はうめき声を上げ、吐しゃ物をまき散らし、転げまわる。

 雄大はそのまま足刀で喉元を攻撃し、意識を刈り取った。


「ふう、みなさん、お怪我はありませんか?」


 雄大は周りを見渡し、無事を確認する。

 あのヤクザ者以外は大丈夫そうだ。あちらも命に別状はないであろう。

 そこでハンバーガーショップにいる勇美達を見つける。


「おう、どうしたお前ら? 偶然だな」


 雄大は手を振る。

 四人はただただ拍手した。


「つええ、バケモンだあ」


 風雅は拍手をしながら冷や汗を流し、周りもコクコクと頷く。


「ん? 何だあれ?」


 大和が気づく。倒れ伏した男の口から、何かが抜け出していた。

 それは霧状になった人であった。

 人型の幽霊のようなもの。

 ふよふよと宙を舞い、逃げ出す。


「逃げるぞ!」

「何? なんにも見えないわよ?」


 陽美香の疑問に、大和は感づく。風雅も見えていることから、あれは霊界に属する力だ。


「任せろ」


 風雅は懐から札を出し、口に咥える。


邪無猫(しゃむねこ)


 咥えた札から、青白い猫が出てきた。


「何? この猫ちゃん何してんの?」

「陽美香ちゃんに見える程度だから、大した術じゃないけどね」

「あ、異能って奴?」


 早い理解に風雅が笑う。


「あれに追わせよう、位置が分かるはずだ」


 そして風雅は座り、鞄から地図を広げる。

 札を丸め、地図に乗せると、ごろごろと転がり始めた。


「わあ、凄い」

「これで、相手の場所も分かるはず」


 雄大が大和達に近づいてくる。


「何か分かりそうか?」

「ええ、術者の場所が分かります」


 その言葉に雄大が頷く。


「パトカー出すぜ、送ろう」


 四人は雄大のパトカーに乗り込もうとする。


「里美は現場検証と救急車呼べ、2台な」


 里美と呼ばれた若い婦警は驚く。


「ちょ、井上さん、一般人を……」

「こいつら神殺しだ、ちょっと送ってく」

「……分かりました、お気をつけて!」


 婦警に軽く手を上げ、彼らはパトカーに乗り込む。

 荷物をトランクに入れ、パトカーは動き出した。

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