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僕と異種族な君の青春日誌<前編>  作者: 有坂まの
二年生第二章
63/142

第33話 新たな仲間

 喫茶店で茶を共にした後、

 喫茶店の最寄り駅で別れることとなった歩花とパルディローズ。



「今日はありがとうございました。

 ……リーフェルトさんとのこと、もっと真剣に考えてみようと思います」



 深く頭を下げた歩花に手を振り、パルは弟の恋人に背を向ける。



「パルディローズ様」



 少し歩いてから自分の名を呼ぶ声が聞こえ、

 そちらをパルが見やれば、彼女の専属メイド、アイリスが私服姿で立っている。


 パルは彼女と一瞥するなり、



「二人のときは敬語じゃなくて良くってよ、アイリス」

「……こればっかりは、もう職業病ね」



 実は昔、学生時代。人間界で親友同士だった二人。


 過去、末期の癌と判明したアイリスの血を吸い、

 以来パルは彼女を自分の城に置いている。



「どうだった? あの子」

「……王族の仲間入りができると浮かれているようだったらどうしようかと思っていたけれど。

 本当に弟が好きなのね。つい応援してしまったわ」

「見るからに真面目そうだものね。でもあまり器用なほうじゃないかも。

 昔の貴方にちょっと似てるわ」

「……! そ、そうかしら……?」

「なんとなくね」



 頬をほんのり赤らめたパルに、アイリスは悪戯っぽく小さく笑った。













 その日の深夜。



(……本当にバラバラだな……)



 干からびた死体が発見されたという現場を、昼から調べまわっていたリーフェルト。



 変死事件はすぐに、リーフェルトたちが住む街以外にも見られるようになった。

 しかし――


 例の吸血鬼の行動範囲がわかるかもしれないと、現場の位置を地図で印をつけてみたのだが、

 この街から近い場所だったり、うんと遠めだったりと、よくわからない。


 まあ羽が付いているのだから、それくらい上手くはやれるのだろうが。



 男だったり女だったり、学生だったり、そこらの会社員や主婦だったり、

 襲っている人間の特徴もあまり一致しない。

 吸血する対象に対し、“こだわり”さえ見えないのだ。



(足を掴めるかなと思ったのに。簡単にはいかない……かな)



 今夜も引き上げるしかなさそうだと、リーフェルトは羽を広げて自宅に戻る。



 自宅のドアのキーを鍵穴に刺し、回して入る。

 自分一人でなんとかしようと意気込みすぎたせいか、なんだか疲れてしまった。シャワーを浴びて寝てしまおうとリビングに入った途端、

 電気のついていない部屋から「遅い」という苛立った声が飛んできた。



「……! 姉さん……!?」

「こんな遅くに帰って来て、一体何をしていたのかしら」



 ソファですらりとした脚を組み、じとりとした瞳で自分を見つめる姉の姿。



「ど、どうしたんです。こんな夜更けに――」

「夜更け?? 今日一日中、ずーっと貴方を待っていたのよ?」

「そ、そうだったんですか……それは、すみませんでした」

「まったく……」



 ヴァンパイアは夜目が利くので必要性はないのだが、とりあえずリーフェルトは電気をつける。



「どこへ行っていたの、リーフェルト」

「……いえ。別に、そんな……大したことでは……」

「ふうん? この私を待たせておいて、“大したことじゃない”??」

「う……」

「ここではとても言えない夜遊びでも覚えてきたのかしら?」

「そんなことはっ、ないです!! 決して!!」

「そ。ならいいけれど。可愛い彼女を悲しませないようにね」

「……そんなことは、しません」



 歩花は事情を知っているから、疑われることはないが。


 パルにこの街か、周辺にヴァンパイアが潜んでいることを勘付かれるわけにはいかない。

 もし知られでもすれば、姉のことだ。問答無用でそのヴァンパイアを処刑の対象とするのだろう。


 自分は例のヴァンパイアが人間に危害を加える理由を、きちんとこの耳で聞いておきたいのだ。

 理解したい。その上で、彼をどうするか考えたい。




「人目のない場所で自由を満喫するのも結構だけれど。ほどほどになさいな」

「……はい」

「修学旅行中も王族として恥じない行動を心がけて。羽目を外しすぎないで」

「あ、いえ。修学旅行は行かないつもりで――」

「駄目よ。行きなさい。初めての場所で消極的になるのもわかるけれど、学校行事も学問の一環よ。

 ただでさえ貴方は受け身すぎるのだから。もう少し物事に積極的になりなさい」

「……えっと」

「わかったわね」

「……――はい……」




(……しまった。『はい』と言ってしまった……)




 確かに自分は押しに弱すぎる。



 まだまだ姉に逆らえない自分に、

 リーフェルトは自己嫌悪のあまり頭を抱えたくなった。













 翌日――笹永家。


 学校から帰宅した陽人に、休暇で家にいる母親が声をかける。




「アンタに手紙来てるよ」

「おー」

「何。退魔師関係?」

「多分」




 手紙を受け取り、その場で開封する。



 日本各地の退魔師たちが、

 自分が住んでいる街に魔の脅威が及んでいるのに、やむをえない事情があって離れなければならない時――

 たとえば今の陽人や歩花の場合、小夜を守るため。修学旅行へ行かなければならないため―――師の伝(つて)などを使い県外に住んでいる退魔師たちに、代わりにその場所を守ってもらえるよう依頼することができる。



 退魔師によって事情は色々なので指名はあまり期待できず、

 どんな退魔師が自分の代わりになってくれるのかはランダムで決まる。




 事務的な手紙の内容を見る限り、

 どうやら自分たちの留守を守ってくれる退魔師は見つかったようだが――




「……――」




 その名前に目を止め、陽人は少しだけ微妙な顔になった。



 一方。二階堂家でも、歩花が目を疑うような顔でその文字を凝視していた。












「すごい人の数だねー」


「都会やからなあ」




 流石新宿――と、呑気な声で小学生のなりをした少年に相槌を打つ、リーフェルトたちより少し歳上らしき青年。




「これを機に、都会の彼女つーくろ」

「何人?」

「ぎょーさん♪」




 興味がなさそうにぼんやりとした少年の瞳に、にっこり、青年は微笑んだ。




「で、また女の子たちに集団でボコボコにされんの?」

「……まあ。お前の力でなんとかなるやろ?」

「嫌だよ。俺助けないよ? 見捨てて大阪帰るよ?」

「なんで!? お前俺の相棒やろ!?」

「お前は俺がいないと困るかもしれないけど、俺はお前がいなくても困らないからね。

 いつだってコンビ解消するよ? 喜んで」

「“喜んで”……!? 男なら日本各地――いや、世界各地に恋人作りたいって気持ち、わかるやろ!?」

「実際にそれを実行できると考えてるお前の頭の温かさに引いてるんだよ」

「お前、それでも『アルプ』か!」

「夢魔もドン引きするレベルで本能に忠実な人間って逆にどうなのさ」

「お前――!!」




 温度差の酷い会話のやりとりをしている奇妙な二人組は、

 思いっきり人目を引きつけながら、新宿駅を歩く――。













キャラクター図鑑



笹永陽人(ささながあきと)


 退魔師の少年。ただの人間だが、退魔道具の聖書の恩恵を受けており聖の力を身体に宿している。南実先高等学校二年D組。

 歩花の幼馴染である木塚小夜を幼稚園の頃から一途に想い、彼女を守るために戦ってきた純真な少年。歩花とも付き合いが長くパートナー同士だったが、リーフェルトの一件で解消。しかしそれがきっかけとなり、自立した強さを得る。

(小学生の頃から歩花とは姉弟のように苦楽を共にし、自分よりも長く小夜を守ってきた彼女を尊敬していたが、いつしか歩花への憧れが依頼心へと変わり、また歩花も陽人には自分がいなければと無意識に思い込むようになる。パートナー解消となるまで共依存関係だった)


 穏やかで友好的な性格。心優しく、争わずに生きたいとぼやくほどであるが、戦う時は戦い、しめるときはしっかりしめる。

 今は友人は沢山いるが、幼少の頃はドライな仕事人間の両親からなかなか思うように愛情を得られず、喧嘩するほどの関係でさえなかったため、なんでも自分の気持ちを胸の内に閉じ込めてしまう内気で孤独な少年だった。だが小夜が魔に襲われる場面にたまたま遭遇し、ただの人間でありながらどれだけ怪我を負っても身を呈して彼女を助けようとしていたところを歩花に認められてから、自分に自信を持つようになった。

 小夜が魔に狙われやすい体質だということを歩花から聞いて、自ら退魔師になりたいと志願。歩花の義父であり師である二階堂左一の扱きに歩花と共に耐え、心身を鍛えた。現在では両親と既に和解済みで、絶対に死なないとの約束の上で退魔師の仕事を認めてもらっている。


 歩花同様日々家事を一通りこなすが、和食が得意な元相棒とは正反対に洋食が得意。得意料理はオムライス。





メイン武器↓


『聖書』

 聖の力のバッテリー。万能ともいえる力を引き出すことができる。毎日目を通す(流し読み程度で十分。内容まで覚える必要はない)ことで聖の力の祝福を身体に蓄積させれば、本なしでも多少技を使うことができるようになる。ただし本を持っていても引き出せる技の回数は無限ではなく、無駄遣いすればすぐに力が枯渇してしまう。他の退魔道具と上手く組み合わせ、使用することが重要となる。



サブ武器↓


『退魔師の札』

『狐の札』

『狗の札』

 狗の魔の祝福を受けた魔石と密封し、その能力を付着させた札。匂いの強いものと更に密封すれば札がその匂いを記憶し、さらなる応用が可能。

 ダーツやボウガンに巻き付ければ、追跡型の飛び道具となる。

『聖水』

『おばりよんの札』

 おんぶお化けとも呼ばれる妖怪の祝福を施した札。敵の身体に貼り付け、重さで身動きをとれなくする。重くなった体に恐怖を感じれば、貼られた対象は更に札を重く感じ、恐怖に打ち勝てばその錯覚から逃れることができる。

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