第九話 治療部屋が修羅場になりました
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「よお!やっと来たかミヤ。待ってたぜ!」
「ミヤちゃん!今日は俺の傷もお願いね!」
「お待ちしておりました。ミヤさん、今日も女神の様に美しくて、可愛らしいですね」
昨日も訪れたこの部屋で、今日も治療を開始していた。
部屋の扉を開けて直ぐに騎士達の歓迎の言葉が飛び交い思わず一歩後ずさる。
「ミヤどうした?てか、何で治療が終わったジークまでこの部屋にまだ居るんだよ!」
「僕は頭を怪我してましたので、団長から念のため今日も異常がないか様子を見ろと言われました。ミヤさんに二日連続で会えるなんて光栄ですね」
「早速口説き始めてんじゃねえよ!邪魔だからお前は端っこにいろ!」
朝から騎士達の口喧嘩が始まってしまった。
苦笑いをして様子を窺っていると、扉の直ぐ内側からコソッと声がする。
「ミヤちゃん朝からうるさくてごめんねっ…。早速だけど、向こうの椅子に座ってくれるかな?今日は軽傷者ばかりだから、順番に並ぼうかと思うんだけど」
昨日は使うことがなかったテーブルと椅子を、騎士が指差した。残りの負傷者は全員立ち上がれる人だけとなり、効率が良さそうなその提案を受け入れることにした。
「わかりました!ありがとうございますっ」
お礼を言ってから、入り口でまだ揉めている騎士達を通り抜けて、テーブルの横に置かれた椅子に座る。
すると、なぜか今日も顔が赤い騎士達の熱い視線を一身に受けた。
(やっぱり全員、熱があるの!?この部屋でウイルスでも充満しているのかな…!?)
一抹の不安を抱き、部屋の騎士達に投げかける。
「少し肌寒いかもしれませんが、窓を開けてもよろしいでしょうか!?換気をしないとウイルスが充満して、風邪や病がうつります!」
必死な顔で訴えると、驚いた顔の騎士達がミヤを見た。
「ういるす……?俺たちは怪我はしているけど、病気にはかかってないぞ……?」
「朝一で検査も受けたぞ?」
「で、でも、皆様は熱がありそうな顔をしてますので…」
次々と疑問を返され、自身がなくなり弱々しく答える。
すると、また直ぐに疑問が返ってきた。
「熱………?ないぞ。お前らもないよな?」
「「「「「ないです!(ありません!)」」」」」
複数人の返事が重なる。
それではなぜ騎士達の顔が赤いのかと、消えない疑問を問いかけた。
「それでは騎士様たちの顔が赤いのはなぜですか…?」
「「「「「…………………!?」」」」」
……………………………。
……………………………。
(なに……?この沈黙は……?)
あんなに騒がしかった騎士達が、誰一人言葉を発さなくなった。そしてなぜか、今さっきよりも顔が赤い気がする。
(だからこの現象は何なの〜!?誰か教えてっ!!)
この国に来てから度々起こる謎の現象。
それは『相手が顔を赤らめること』だった。
恥ずかしい話など一切していないのにそれは起こるのだ。
「と、取り敢えず……、治療を開始してもいいでしょうか…?」
沈黙に耐えきれず、逃げる様にテーブルに向き直った。
「お、お願いします!!」
一人の騎士がまだ赤らんだ顔で返事をすると、他の騎士達も頷く姿が視界に見えた。
◇◇◇
治療を開始してニ時間が過ぎた頃、残りの負傷者はあと一人になっていた。
左手首に包帯を巻いた騎士がミヤの目の前の椅子に座る。
そのミヤの真横にはもう一人の騎士がいた。
「ところでジーク、お前は何故ずっとミヤの横に立ってるんだ!?」
目の前に座った騎士が突っ込まずに居られなくなり、ジークを睨みつけた。
「僕は元気になりましたので、ミヤさんの治療のお手伝いをしようかと思いまして」
「元気ならさっさと訓練に戻れ!!」
「だから先程も申し上げたように、今日は団長から安静にするよう指示を受けています」
騎士の怒鳴り声にジークは怯むことなく、あっけらかんと答える。その様子に頭に血が上った騎士は、肩をわなわなと震わせ出した。
「お前の手助けなんて要らねえんだよ!大体さっきから、突っ立てるだけじゃねえか!ミヤの側に居たいだけだろうが!」
「はい、そうです」
怒りに任せて椅子から立ち上がった騎士に、ジークはにっこりと笑って答える。肩をわなわなと震わせていた騎士は、今にも殴りかかりそうな表情へと変わった。
負傷者同士に暴力を振るわせる訳には行かず、慌てて目の前の騎士の手を取り止めに入る。
「怪我をされているので、暴れないで下さい!」
「…………っ!?」
不意打ちでミヤに手を取られて、緊張のあまり体勢を崩した騎士は、ミヤの方に倒れ込んできた。
負傷者を守るために咄嗟に騎士を胸に抱き止める。
「「「「「なっ…!?」」」」」
動揺した騎士達の声が重なって響き渡る。
抱き止めた騎士も我に返り焦りだす。
「ごごごごめんねミヤ!いま退くかーーー」
「触ルナッ……!!」
前触れもなく、地を這う声がした。
部屋の全てが凍りつきそうな冷たいその声は、扉の前から部屋中に響き渡る。その一声だけで、顔面が真っ青になった騎士達が肩をガタガタと震わせ出す。
「何ヲシテタノ……?」
騎士達が声を出せず震えている間にも、ゆらゆらとミヤが座る椅子までバキルガムが歩いてくる。
遠くからでも光が消えているのが分かる青い瞳には、黒い何かが棲んでいた。
ゆらり、ゆらり。
「………何ヲ、……シテイタ?」
目だけで殺されそうなほどに強い殺意が込められた視線が、ミヤの腕の中にいる騎士に向けられていた。




