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ヒール(回復魔法)がこの世界では魅了魔法だったなんて聞いてません!!  作者: 夜風ほたる


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第六話 怖い願い事をされました


ご覧いただきありがとうございます!

評価、ブックマーク、感想、レビュー、リアクションは執筆の励みになりますので、少しでも面白いと思っていただけましたら気軽に残してもらえたら嬉しいです!





 重傷者の治療を終えた後、団長が部屋まで呼びに来て残りの負傷者の治療はまた後日となった。

 その後も、夕食から湯浴みまで丁寧に案内されて一日中客人の扱いを受けて今に至る。

 現在は寝泊まりする部屋に案内されて、バキルガムに返し損ねた上着を手に持ち悩んでいた。


 (この上着、どうしよう……)


 結局あの後はバキルガムと会う機会がないまま夜を迎えていた。寝るにはまだ早い時間だが、夜に男性の部屋まで訪ねてもいいものかと悩み出す。

 それでも明日の朝に返そうと決めきれないのは、日が沈んでから王宮の中は肌寒く感じるからだった。


 (やっぱり、今から返しに行こう…)


 悩んだ末に返しに行く決意をして、上着を手に部屋を出る。バキルガムの居所を尋ねる為に従者がいないか通路をキョロキョロしながら歩いていると、突き当たりにバルコニーが見えた。

 そこから満点の夜空が視界に入り、思わずバルコニーに足を運ぶ。


 (綺麗……!)


 天を見上げると、そこには無数の星が煌めいていた。

 空が澄んでいるからか、星の輝きが力強く、手を伸ばせば届きそうなほど近くに感じた。

 そこでふとジークの言葉が脳裏に過ぎる。


 『ミヤさん、今日は願い事をすると叶う日なんですよ』


 折角ならば願い事してみるのもいいかもしれない。

 叶えたいことは沢山ある。

 だけど、今日ここで願いたい事は何だろう。


 満点の夜空を見上げて願い事を考えていると、後ろから特徴のある声がした。


 「ミヤ…!………会(ア)イタカッタ!!」


 声のする方に振り返ると、数ヶ月ぶりに再開したかのような勢いで走り込んでくる姿が見えた。

 咄嗟に身構えると、真横で足音が止まり、むぎゅっと想像より優しい拘束がミヤの体を襲った。


 「ミヤ……、ミヤ……」


 頬にスリスリと擦り寄られながら、ただの名前を愛おしそうに何度も呼ばれて気恥ずかしくなる。

 落ち着かずに視線を下に落とすと、手に持っていた上着が目に入った。そこでやっと、上着を返す為に部屋を出たことを思い出し、バキルガムに話しかける。


 「バキ……、あの…」


 「ミヤ……?ドウシタノ?」


 「この上着、ありがとうございました。着替えは用意してもらいましたので、お返しします」


 手に持っていた上着をバキルガムの前に差し出すと、ミヤを拘束していた手が解かれて上着を受け取られた。

 それから、じっと上着を見つめていたバキルガムは寂しそうに眉毛を下げた。

 やっぱり臭かったかな?と心配になり、確認をする。


 「やっぱり、洗って返したほうがいいですよね?」


 「……………違(チガ)ウ」


 「ご、ごめんなさい!洗って返しますねっ」


 「……嫌(ヤ)ダ!……ミヤノニオイ、スキッ……」


 慌てて謝り上着を持ち帰ろうとすると、がっしりと上着を掴まれて否定された。

 どうやら匂いが原因ではなさそうだが、寂しそうな顔をする理由が分からず、改めて尋ねる。


 「匂いが嫌ではないのなら、どうしてそんな顔を…?」


 「カワイカッタ……、ミヤガ俺ノ服着(フクキ)テルノ……」


 「それは……、また着て欲しいってことですか?」


 まさかと思いつつも、他に思い当たる節がなく聞いてみると、コクリと素直に頷かれた。バキルガムは寂しそうな顔をして上着をぎゅっと握り込む。

 その姿を見て、喜んでもらえるのならと一つ提案をする。


 「その上着は無いと困ると思いますからお返しします。だけど、バキが普段着ないお洋服でしたら、いつでも着ますよ?」


 そう言い終わると同時に、バキルガムは顔をがばっと勢い良く上げてミヤを見る。その瞳はキラキラと輝いていた。


 「本当…!?ミヤ……、イイノ!?」


 「は、はい……。王宮の中だけでよければ…」


 「ミヤ……アリガトウ。……スキダヨ…」


 バキルガムの勢いに気圧されて、しどろもどろに返答すると、お礼が返ってきた。

 明るい表情に戻ったバキルガムは、受け取った上着をその場で着ると、『ミヤノニオイ、スル』と言いながら嬉しそうに笑った。


 和やかな雰囲気の中、夜空に視線を戻した。


 そう言えば、バキルガムは願い事はしたのだろうかと、何となく気になり話題を振ってみる。


 「バキ、今日は良い夜空ですね」


 「夜空…、ソウダネ……」


 「今日は、願い事をすると叶う日らしいですよ」


 「願(ネガ)イゴト…?」


 「はい。バキは願い事はありますか?」


 「俺ノ……、願(ネガ)イ…ゴト…………」


 軽い気持ちで聞いたつもりが、バキルガムは真剣な顔をして考え始めた。

 俯いて『願(ネガ)イゴト、願(ネガ)イゴト』と何回か呟いた後、願い事が思い浮かんだのか嬉しそうな顔をした。

 

 後になって聞かなければ良かったと思うことになるとはつゆ知らず、バキルガムの嬉しそうな顔に期待を膨らませて願い事を聞いていた。


 「良い願い事があったのですか?」


 「ミヤ………、叶(カナ)エテホシイ……」


 「私が叶えるのですか!?神に願う日らしいですよ…?」


 「ミヤニシカ出来(デキ)ナイ……」


 私にしか出来ない?それはどういう意味だろうかと、小首を傾げ問う。


 「私にしか出来ない事とは何ですか?」


 「俺ノ願(ネガ)イゴトハ」


 「はい」


 「ミヤニ殺(コロ)サレタイ。俺ヲ、殺(コロ)シテ」




  ………………え!?!?


 (私は殺(ヤ)られる側ではなくて、殺(ヤ)る側だったの!?)





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