第三話 一番ヤバそうな人に番認定されました
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「はぁ…、お前らもマジなのかよ。それじゃ、本人に決めてもらうしかないな!おい、お前は誰と付き合いたい?」
未だベッドの上で抱き締めたまま離してくれない男性に、問いかけられる。
(この四人の中から恋人を選ばなきゃいけないの!?)
意味不明な展開は、やはり夢だからなのだろう。
そう納得させて四人の男性を見る。
一番見た目がタイプな男性は『僕』と言った人だった。
青髪に温かい茶色い瞳、優しそうな雰囲気が好みだった。
(夢なら本音を言ってもいいよね…?)
勇気を出して、素直に言うことにした。
これは夢なのだから。
「私は、そこの優しそうな青髪の貴方がいいですっ…!」
「ぼ、僕ですか!?わぁ!!嬉しいです!」
花が綻ぶようにふわりと綺麗な笑顔で微笑まれた。
思わずそれに見惚れていると、抱き締められていた腕の力が強まる。
「な!!あいつより俺の方が強いぞ!?なあ、やっぱり俺にしないか?」
「え!!ダメですよ!いま僕がいいって言ってーーー」
バンッッッ!!!
「おい何の騒ぎだ!!お前らは安静にしてろって……お前らなぜ起き上がれてる!?……その、女性は誰だ?」
部屋の扉が壊れそうなくらい無遠慮に開かれ、目つきが鋭い大柄な男性が現れた。
その目は驚きに見開かれ、ミヤ達を怪訝そうな顔で見る。
一変した部屋の空気に、ロッディと呼ばれていた男性が慌てて声を出す。
「団長!!この子が俺たちの怪我を治してくれたんです!ほら、俺の腕もこの通り!」
そう言って腕を動かして見せた。
団長と呼ばれた大柄な男性はぽかんとした顔をする。
「怪我を治した…?治療薬なんて一般人は手に入らないものだろう?なぜそこの女性が持っている?」
「治療薬は使っていません!私の特殊体質と魔法で治しました」
団長の質問に対して話が拗れる前にすかさず返答をする。
するとまた、ぽかんとした顔のまま質問が返ってくる。
「トクシュタイシツ…?マホウ…?なんだそれは」
(特殊体質は稀なものだから知らなくてもおかしくないとしても、魔法も伝わらないの……?)
「魔法をご存知ではないのですか?」
「マホウ?そんなもの、この国で聞いたことはないが」
再度確認しても、即答で知らないと言われてしまった。
いや、待てよ。
いま確かに『この国で』と言わなかった?
ここはーーーー、夢ではないの?
疑問に頭を悩ませていると、抱きしめられていた腕がべりっと剥がされ、強い力で後ろから他の腕に引き寄せられた。
そして、真後ろから地を這う声がした。
「触ルナッ!!………コノ子ハ、俺ノ番ダッ!!!」
その一声だけで部屋の温度が一気に下がり、不穏な空気が漂う。視界に映る男性達の顔も恐怖に怯えていた。
(私はいま何に、後ろから抱きしめられているのっ…?)
これは夢、大丈夫、私は死なない。
自分に言い聞かせてから恐る恐る、後ろに首を動かす。
そこには地を這う声からは想像がつかない、王子様の様に綺麗な男性がいた。
柔らかそうな金髪、青い瞳、綺麗な白い肌、整った顔立ち。
(この人がさっきの声を出したの……?)
頭が混乱して、無言のままじっと男性の顔を見てしまっていた。
「ドウシタ……?君、名ハ?」
地を這う声を出したのはこの人だ。
目の前から声がしてやっと頭が理解した。
さっきよりかは落ち着きのある声色で、私に名前を問いかけてきた。
この人を怒らせてはいけない。
本能にそう訴えかけられて素直に答える。
「私の名前ですか?ミヤです」
「ミヤ……。俺ハ『バキ』ッテ、ヨンデ?」
「バキ…さん?とお呼びしたらいいのですか?」
「『バキ』ガ、イイ…」
「バキ……?」
「ソレガイイ。…………ミヤ…、スキダヨ………」
綺麗な顔でにっこりと微笑まれた。その笑顔に不本意ながら胸がドキッと高鳴り、顔が熱くなる。
(この状況はどうしたら……?)
バキと名乗る男性は後ろから抱き寄せる腕の力を強め、スリスリと頬擦りをしてきていた。
「バキルガム副団長!?いつの間にこちらに…?彼女が『番』というのは本当ですか!?」
バキルガムの纏う空気が和らぎ、今まで怯えていた男性達が話に加わってきた。
「本当ダ………。ミヤ……、イイニオイ、スル」
「番の匂いですか……」
「つ、つがい!?え……、それじゃ僕の恋人になってくれるって話はーー」
「恋人…?……ミヤガ、ダレノ……?」
男性の言葉にピクッと反応したバキルガムが、また地を這う声を出す。
彼を纏う空気がサーーーと冷たく、暗くなる。
「ダレノ……?」
青い瞳の中に何かが潜み黒く揺れた。
「ひっ……、誰の恋人でもないですっ!!!!」
男性は慌てて叫ぶ。
バキルガムの冷たい視線にガクガクと震えていた。
「ミヤ…………、アレガ、スキ?」
光が消えた青い瞳が、ゆらゆらと不安定に揺れながらミヤを見た。ここであの男性が気になると言えば、男性の命はない気がする。
そこまで考えが及ぶと、咄嗟に否定を口にしていた。
「そんなことはありません!」
「ソウ……。ソレナラ……俺ヲ、ミヤノ恋人ニシテ?」
青い瞳がゆらり、ゆらりと、暗く揺れていた。




