第十二話 バキルガム
ご覧いただきありがとうございます!
評価、ブックマーク、感想、レビュー、リアクションは執筆の励みになりますので、少しでも面白いと思っていただけましたら気軽に残してもらえたら嬉しいです!
ああ、まただ……、また呪いの声がする。
静かな夜に現れる声。
戦場で殺した人の悲鳴と最期に遺された呪いの言葉。
守れなかった仲間の顔と最期に言われた呪いの言葉。
『バキルガム』
『バキルガム』
『バキルガム』
呪いの言葉を囁く声たちが問いかける名前。
わかっている。
俺が一番、わかっている。
その名前は俺が一番知っている言葉。
俺にとって一番の呪いの言葉。
『人殺しの名前』だ。
なあ……、そうだろう?
俺が一番わかっているんだ。
奪った命の重さを。
死んでも泣いてくれる人もいない俺が、家族がいる人を殺している。
生きる意味を見出せない俺を、仲間が庇って死んでいく。
世界が暗くなった今日も呪いの声がする。
『あいしている……』
戦場で殺した人が誰かに言った呪いの言葉。
『ありがとう』
守れなかった仲間が最期に俺に言った呪いの言葉。
『アリガトウ』の意味は知っていたつもりでいた。
その言葉は守れなかったのに言われる言葉ではない。
『ありがとう』は呪いの言葉にもなるのか。
知りたくない、知りたくない、知りたくない
全部、全部、全部、呪いなんだろ?
言葉なんて、全部俺を呪うものなんだろ?
眠りについても夢の中まで呪いの声がする。
『あいしている』
知らない女が俺にそう言ってくる。
毎日、毎日、毎日、毎日、毎日
もうやめてくれないか。
呪いの言葉はもう聞きたくないんだ。
俺が知っていたい言葉は一つだけなんだ。
それだけ知っていればいい。
戦場に立つ理由はこれだけなのだから。
『殺コロサレタイ……』
それだけなんだ、俺は。
◇◇◇
今日も世界が暗くなる。
それなのに呪いの声が聞こえない。
ミヤの顔とミヤの言葉しか聞こえない。
ミヤの顔が忘れられない。
ミヤの言葉が忘れられない。
『私はバキに生きていてほしいですっ…』
忘れられないんだ。
『バキ』はただの人の名前だ。
ミヤに呼んでもらいたいと願った、ただの人の名前。
生きていてほしい……?
その言葉は呪いではないのか?
死んでもいないのに、どうしてミヤは俺を見て涙を流してくれたんだ?
その涙の理由はなんだ?
俺が死んだら同じように泣いてくれるのか?
知りたい、知りたい、知りたい、知りたい
始めてだ。
言葉の意味を知りたいと思ったのは。
知りたい、知りたい、知りたい、知りたい
ミヤが笑ってくれる言葉が知りたい。
あの時、泣かせたかったわけではなかったんだ。
「ミヤ………、スキダヨ………」
もっと、もっと、もっと、もっと、もっと
ミヤに伝える言葉が知りたい。
『スキ』よりももっと特別な言葉を知りたい。
今日は呪いの声が聞こえない。
『バキルガム』と呼ぶ声が聞こえない。
静かな、静かな夜だ。




