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ヒール(回復魔法)がこの世界では魅了魔法だったなんて聞いてません!!  作者: 夜風ほたる


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第十一話 団長に頼まれました


ご覧いただきありがとうございます!

評価、ブックマーク、感想、レビュー、リアクションは執筆の励みになりますので、少しでも面白いと思っていただけましたら気軽に残してもらえたら嬉しいです!




 「ミヤちゃん、午前はお疲れ様!」


 「昼食までご用意していただき、ありがとうございました!お待たせしました」


 昼食を終えたミヤは団長室にやって来ていた。

 相変わらず明るい団長に出迎えられ、部屋の中へと入る。


 「いいんだよ、王宮(ここ)にいる間は食事くらいしっかりと食べてくれ。それで、早速なんだが話してもいいか?」


 団長が座る席まで歩き姿勢を正して止まると、真剣な顔に変わった団長がミヤを見た。


 「は…、はい。なんでしょうか…?」


 途端に緊張して、引き摺った情けない声が出る。


 「無理難題を言うつもりは無いから安心してくれ。実はさ、ミヤちゃんに言葉の勉強をしてもらいたいんだよ」


 「言葉の勉強…ですか?」


 この国に来て不思議と言葉は通じる。

 だけど、文字の読み書きは出来なかった。


 (文字の読み書きも覚えられるだろうし、勉強させてもらえるのなら助かるけれど……、どうして急に?)


 そこまで考えて、一つの不安が過り血の気がサーっと引く。


 「ももももも申し訳ございません!私がこの王宮で、失礼にあたる言葉遣いをしてましたでしょうかっ!?」


 人生で一番深く頭を下げて謝罪を述べる。

 すると、予想外に楽しげな笑い声が返ってきた。


 「ハハハッ!!ミヤちゃんは面白いな!別にミヤちゃんの言葉遣いが悪かったとは言ってないだろう。むしろ、俺たちにはもっと砕けてくれていいんだぞ。そうじゃなくてな、騎士団で言葉の勉強のために講師を雇うことにした。それで、バキルガムと一緒に授業を受けてもらいたいと思ってさ」


 「……………………え?」


 拍子抜けして、喉の奥から変な声が出た。

 ぱちり、ぱちりと目を瞬きながら、団長の言葉を思い返す。


 「バキと一緒に授業、ですか?」


 「そうだ。これはあいつからの願いだ。今朝ミヤちゃんと別れた後に、真面目な顔で相談があるとか言い出すから何かと思えば……、言葉を知りたいと言い出した」


 「バキが……ですか?」


 「そうだ。それはまあ驚いたけど、これでもあいつのことは息子みたいに大切に思ってるんだ。だから、叶えてやりたくなっちまってさ」


 あいつとはバキルガムの事なのかと、信じられずに問うとあっさりと返事が返ってくる。

 まだ頭が追いつかない状態で言葉を失っていると、真剣な顔になった団長が話を続けた。


 「詳しくはあいつが話したくなった時に聞いてほしいんだが、あいつは拾ったんだ。十歳くらいの年齢なのに、言葉が一つも話せなかった。『バキルガム』って名前も、あいつが持っていた手紙の宛名に書かれた文字が何となくそう読めたからなんだ。実際は違うのかもしれない。それでもあいつが否定しないから、今ではバキルガムで定着したけどな」


 「そうだったんですね……」


 団長の言葉にズキズキと胸が痛み出す。

 満天の星空だったあの日と、同じことを胸に抱く。

 


 貴方はこの世界でーーー、何を見て生きてきたの?



 私が知り得ない過去のバキルガムに思いを馳せる。

 思い出すのは、今までで一番綺麗だと思ったあの笑顔だった。


 「ごめんな、こんな話して」


 暗い表情になっていたのか、察した団長が気にかけてくれる。その言葉に我に返り、力なく笑い返す。


 「大丈夫ですよ。教えて下さりありがとうございます」


 「言葉なんて教える機会は幾らでもあったんだけどな…。あいつは物分かりもいいし、本当は言葉を覚えたくないだけなんだと思ってたんだ」


 「言葉を覚えたくない……?」


 どうして言葉を覚えたくないのだろうかと、不思議だった。そんなミヤの表情を見て、窓の外に視線を移した団長が静かに重く答えた。


 「戦場には、聞きたくないものが山ほどあるんだ。知りたくない言葉も、山ほどな。本当はあいつをこの騎士団に入れるつもりはなかったんだ。そう思ってたのに、保護しているだけで危険に巻き込まれる事が何度もあって、気づけばこうなってしまった。不幸なことに、あいつは戦う素質も群を抜いていたんだ」


 話している間もずっと遠くを眺めている団長は、空よりも遠くのミヤが見えないものを見つめていた。

 返す言葉が見つからず、その様を静かに見る。すると、一瞬でぱっと明るい表情になった団長が話を加えた。


 「だから、俺からミヤちゃんにお願いしたいんだ!あいつに、優しい景色(ことば)を教えってやってくれないか?俺ら騎士団は汚れすぎてしまって叶えてやれないんだ」


 『頼むよ』とニカッと白い歯を見せられてお願いされた。

 断る理由はなく、素直に頷いた。


 「わかりました!こんな私でよろしければ、一緒に授業を受けさせて下さい!」


 「ミヤちゃんじゃないと駄目なんだ。あんなに表情豊かなバキルガムは初めて見たんだ。元の世界に帰るまでは、ずっとあいつの側にいてやってくれよ」

 

 優しく、それでいて悲しく笑う団長の顔は、我が子を案ずる父親の顔に似ていた。



 『元の世界に帰るまでは』



 昨日までは望んでいたはずの願いに胸がチクリと痛む。


 (どうして……?どうして痛いの……?)


 それはバキルガムが心配だから?

 それとも王宮の人達が優しいから?


 心の問いかけに答えは見つからなかった。


 



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