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同じ朝を三十七回
彼女を死なせないために、同じ一日をくり返した話。
三十七回目の朝も、彼女は元気に「おはよう」と言った。
異世界に召喚されてから、私はずっとこの朝に戻り続けていた。
一度目は彼女がどこで死ぬか、何も分からなかった。
ただ気づいたら夜明けの宿屋にいて、また同じ朝が始まっていた。
十二回目で、夕刻の橋が危険だと知った。
二十回目には橋を避けさせたが、今度は森の入り口で倒れた。
この世界には、彼女を執拗に狙う何かがいる。
それでも私は諦めなかった。
ループのたびに少しずつ賢くなれる、と気づいたから。
三十七回目の今日、全てのルートを把握した私は、正面から彼女に全てを打ち明けた。
「そんなこと、ずっとしてたの?」
彼女は泣いた。
私も泣いた。
「言えてよかった」
翌朝、世界は初めて次の日に進んだ。
ループが終わった。
三十七日ぶんの疲労が一気にきて、その場でへたり込んだ。
彼女が笑いながら手を差し出してくれた。
「ありがとう。三十七回も、私のために」
何度繰り返してでも、救いたい人がいる。
そう気づいた瞬間から、あの苦しい日々に意味が生まれていた。




