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俺と魔王と勇者と  作者: 逆さメガネ
異世界水上都市アクア編
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魔王と俺

魔王ベールールに対して第2ラウンド開始を宣言した俺だが、情けないことに足が震えている。

どうせ死ぬのは変わんなくても怖いもんは怖い!



「キョウスケとか言ったな。本当に面白い奴だな♪」

「そんな余裕を見せてていいのか? 魔王ベールール、お前が支配の魔法とやらで空気を操れるってのはわかったんだぞ。カラクリがわかれば、あとはなんとかなる……はずさ」



少しだけ強がってみた。

気持ちで負けたら動けそうもないからな。

だが、魔王は気分を害した様子もなく、含みのあるイヤらしい笑いを浮かべ俺をみている。



「ふ~ん、いつ俺の支配の魔法が空気を操るだけだと言った? 俺の支配の魔法は、魂を持たない全てのものを操ることができるって言ったはずだぜ♪」

「そんな、まさか。……そんなことができるのか?」

「できる♪ だから、俺は魔王なのさ♪ その証拠を見せてやるよ」



魔王ベールールが手を振ると、広場の回りにある家々が、まるで生き物のように俺たちに近づいてきた。

俺たちの目の前に来ると、外壁から手を生やし、まるでモンスターのように俺たちを取り囲む。



「そうだな。ハウスゴーレムとでも呼んでみようか♪」



数十体のハウスゴーレムに取り囲まれる俺たち。

シフォンたちにはエクアの護衛もかねて避難してもらったし、マリアは気を失ったままだ。

絶望的な状況だ。



「そうだな。あれも使っとくか♪」

「?」



魔王が指をならし暫くすると、どこからともなく人間たちが現れた。

こちらの増援かと一瞬期待するが違うことに気がつく。

あれは、俺が地下室で見た死体たち。

まさか、あれも操れるのか?



「あー、何だろ、なんもいい名前が浮かばねぇな。とりあえず、死体人形とでも呼んでおくか♪」



魔王のもとに、数十体のハウスゴーレムと数百人の死体人形が集結する。



「おっ、その目は俺が死体を操るのが不思議なようだな。確かに魂のあるものは操れないが、魂の離れた者たちは操れるのさ♪ こいつらは俺の簡単な命令で本能のままに動くぞ♪」

「…………」



魔王は礼拝堂に上がる手すりに腰を下ろすと、モンスターたちに命令を下す。



「かかれ♪」



魔王の合図で一斉にモンスタ-と化した家や死体が襲ってくる。



「ファイアレイブン……levelMAX、朱雀!」



とりあえず、一番近場にいたハウスゴーレムを炎上させる。



「ハル、闘気斬でいくぞ!」

《了解です》

「闘気斬!」



魔剣ハルクライムを上段から降り下ろす。

迸ったエネルギーの刃が、ハウスゴーレム数体と死体たちを十数人巻き込み葬りさる。

白金級に上がって、さらに威力が上がっているようだ。

だが、一体一体は問題ないが数が多すぎる。



「マリアっ!」



ロンギヌスの叫びに目を向けると、気を失ったままのマリアが数体の死体たちに抱えあげられている。

ロンギヌスも助けようとしているが、さらに倍の死体たちを前に駆け寄れずにいた。

死体たちは生前の本能のままに、美少女の体を味わおうとしている。闘衣も解除されたワンピース姿のマリアの衣服が瞬く間に脱がされていく。

女の死体人形がマリアの白い肌にかぶりつこうとしている。

マリアにいい印象を持ってる訳じゃないが、それは助けないと言う理由にはならない。だが……。

くそ、こっちも自分の分の相手に精一杯だ。

せめて、頭数がもう少し欲しい!

そう思ったときだ。



「アイスショット×10」



マリアを取り囲む死体たちが飛来した氷塊に吹き飛ばされていく。



「シフォン!」

「地響きみたいな音が聞こえたから覗きに来てみたら、やっぱり、ピンチだったみたいね。来てよかったわ」

「グランド、咆哮!」



ソニアの指示による地竜グランドの振動波でハウスゴーレムが一体崩れ落ちる。



「ソニアもありがとう、助かった!」

「キョースケ、お礼を言ってる場合じゃないみたいよ」

「わかってる」



まだまだ十分に敵はいて、その先には魔王までいるんだ。

前に、うちの魔王少女ミリーは言っていた。

検索の魔法は、世界の理に触れる大魔法なのだと……だとしたら、魔王ベールールの支配の魔法も世界の理に触れる大魔法なのだろう。

命のないものに仮初めの命を与え操ったり、空気というたわいもないもので白金級の奥義を防いだりするのだ。

奴は本当に世界の理に触れているとしか思えない。

それを破るにはこちらもそれ相応の力がいる。

だったら、力を手に入れてやる!

理をぶち破れる力を……。



「なあ、ハル」

《なんでしょう? 兄貴》



俺は激しい戦闘をしながら、魔剣状態のハルに声をかける。

ハルも普通に応じてくれて会話をする。



「あのバカ魔王は、俺たちの大事なものに手を出そうとしてんだよな?」

《はい、その通りです》



今でも周りで激しい戦闘が行われている。

シフォンやソニアもそう余裕はない。



「そして、奴は死体すらも操って自分はふんぞり返っているってわけだ」

《そうですね》



俺が魔剣ハルクライムで襲ってきた死体の首を飛ばす。

俺の横を転がっていく死体人形の頭部。

その顔は死んだときの表情のままで、恐怖が刻み込まれていた。



「このモンスターにされた家々だって、みんなの思いや思い出が込められ、大切にされていたはずだ」

《そうだと思います》



俺はハウスゴーレムをまた一体破壊する。

中から、小さな子が遊びそうな子供のオモチャや大事そうに取り扱われてきたと思われる家具が散乱する。

俺は問う。



「あのクソ魔王を許せるか?」

《無理ですね》

「だな」



俺とハルの気持ちが1つに重なった。

理屈ではなくそう思う。



「さて、ハル。ここでもう1つ質問だ。俺たちの共鳴率は何パーだ?」

《99…………いいえ、100%以外あり得ません!》

「…………だな」



頭の中は怒りで一杯なのに、妙に気分は落ち着いていて客観的に周りの様子がわかる。

今なら大丈夫そうだ。

俺は、闘衣を解く。



「ちょっと、恭介っ! こんな戦場で闘衣を解いてどうすんの!」

「あぶないわよ」



シフォンやソニアが慌てて注意してくれているのが、ボーッとした意識の片隅でわかる。

だが、今俺たちに必要なのは闘衣ではない。

闘衣を越える力がいる。

そんな俺たちの選択は1つ。



「ハル、神衣化だ」

《了解です》



俺と魔剣状態のハルが光に包まれる。

次に姿を現した俺は金色の服に身を包まれていた。

手に持った魔剣ハルクライムの刀身が金色(コンジキ)に輝いている。

…………ちょっと輝きすぎだろ?

元々地味な俺としては、躊躇してしまう外見だ。

ただ、今必要な力はこれなのだ。

魔力も上がっているのを感じる。

ひょっとして、これなら……。



「ハル、いけると思うか?」



何をとは言わずに問いかけてみる。



《兄貴の思いのままに》



確信めいたハルの答え。

俺は魔導を発動する。



「ファイアレイブン、levelMAX…………朱雀×2」



2体の火の鳥、朱雀が飛翔する。

今までには出来なかったことだ。



「ハル、喰え!」

《了解です》



ハルの金色に輝く刀身が2体の朱雀を吸収する。



「真・朱雀装!」



俺の体を魔力と闘気の奔流が駆け抜け、金色と朱の織り成す神衣が顕現する。

その背には2対4枚の炎の翼が生えていた。

魔剣の刀身は、これは朱金とでもいうのだろうか? 

不思議な色をしていた。



「なあ、ハル。これって翼があるってことは空も飛べるんかな?」

《出来るかもしれませんね。ただ、それはこの状況を脱出できてから考えましょう!》

「だな」



俺は、俺たちを取り囲むモンスターたちに向かい合う。



《その炎の翼を攻撃に使えますよ》

「マジか!」

《技の名前は兄貴に適当に任せます》

「……それじゃ早速、火炎翼翔弾(ウイングショット)!」



炎の翼から炎の羽が乱射される。

一発一発は、火球を打ち出すファイアショットと同程度の威力のようだ。

それが撃ち放題。

メッチャ、気持ちいい!

気が付けば周囲のモンスターたちは全滅していた。



「ほう、まさかあの状況を乗りきるとはな」



様子を観戦していた魔王が褒めてくれている。

剣を叩き斬ったときとは違い、その声には少しだけ感情の色が窺えた。

俺は切っ先を魔王へ向けて宣言する。



「さあ、魔王ベールール。そんなところにふんぞり返ってないで、こっちに来いよ!」

「お前の言うところの第3ラウンド開始ってやつか?」

「いやいや、これが最終ラウンドだ」








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