魔王に備えて
うちの変態勇者ハルのlevel上げも無事に済み、俺は広場に作った転移門の前で待つ。
ハルは急激に上がったlevelを制御・調整するために一人で何やらやっている。
集中させておいた方がいいだろう。
そうこうしているいちに広場に人が集まってきた。
「皆さん、こっちに来てください」
俺はシフォンたちの声かけに気づき広場に集まって来た生き残りの住民たちを転移門の方へ案内する。
次から次に住民たちが集まってきており、結局、生き残りは数千人に登りそうだ。
分けて案内するが、俺だけじゃ手が足りなくなってきた。
そう思っていたところへ、シフォンたちが帰ってきた。
「おかえり、これで生き残りは全員か?」
「一応、水上都市を一周して主だった場所は回ったはずです」
「ここの出身のエクアが言うんだから間違いないだろ。列の整理にあたってくれ」
「わかったわ」
シフォンやソニアも加わり、住民たちの誘導はつつがなく行われていく。
ソニアに黄金都市ユグシルの長アルフォードさんへの連絡を依頼し、同じようにシフォンに魔都ミリハイムへの連絡を頼む。
決して、俺自身が今はレオナやミランダたちに会いたくないとかじゃない。
え~と、ほら……俺には、この場所を守るって大事な使命がある!
そう、そういうことにしておこう。
いきなり千人単位での住民の受け入れがどうなるかと心配だったが、双方とも受け入れてくれることが決定し、シフォンたちが戻ってきた。
住民たちの移動が終わりに近づいてきた。
そんなとき問題が起こる。
一部の住人が避難を嫌がったのだ。
見ると、その人たちはほとんどが年寄りの人達だ。
「え~と、どういうことですか?」
俺の質問に、残りたいと言った年寄り連中が答える。
「あたしらはこの街の出身です。この街がなくなるんなら、短い余生だし、ここで最期を迎えたいんです」
「そうじゃな」
いやいや、ここでこんな我が儘言いうとは!
こういうことをいうと、きっと……。
俺はチラッとエクアの方を見る。
「それじゃ、私もこの方々と残ります。少なくとも私がいる間はこの水上都市が沈むことはないので」
まずはこの街の学術師にて、魔性石の宿主のエクアがそんな感じで居残ると言い出した。
あちゃ~。
このあとの展開も容易に想像がつく。
「エクアさん、そういうことなら私も残りますよ」
「ソニアだけじゃ心配よ。私も残る」
俺が心配した通り、うちの女性陣も残ると言い出した。
ハア、ため息が出る。
「じゃあ、俺は避難を……」
「(ギロ!)」
うおっ! メッチャ、シフォンたちに睨まれた。
ハイハイ、俺も残ればいいんですよね。
「俺も残ればいいんだろ」
「当然よ」
こうして、俺たちは夜を待つことになった。
暇なので食事の用意をしてみる。
俺はスープを作って振る舞ってみた。
なかなか好評だ。
ソニアがサラダを作る……というか盛ってくれた。
怪しげな血の色のソースが印象的だ。
大量の死体を見た日に出されると、ちょっと凹む。
メインは任せろというのでシフォンに任せたが、パッサパサになるまで焼かれた猪の丸焼き肉がドーンと出された。
…………せめて、内臓くらい処理してほしい。
まあ、腹に入ればみんな一緒だよな。
まだ時間があるので、ハルの様子を見に行く。
「ハル、調子はどうだ?」
「兄貴、もう大丈夫ですよ。今は能力検証をしていたところです」
「なんか能力は追加されたのか?」
「はい♪」
「どんなんだ?」
もし、なんか能力が追加されているのならば心強い。
せっかく黄金級から白金級に上がったのだ。どうせなら、ズバッと格好よく魔王すら倒せるようなものがいい。
「固有奥義の聖魔装破斬が強化されています」
聖魔装破斬はハルの持つ固有奥義だ。
その威力は相手の体を一切傷つけることなく、武装解除させる。
簡単に言えば、ひんむいてしまう技だ。
女性を相手に使う分には俺的には嬉しい技だが、魔王、しかも男の姿をした奴を相手に武装解除って、どれだけ意味があるのだろうか?
威力的にも、エロ的にも……。
「それで、他には?」
「共鳴率が100%以上で、限界突破することで、闘衣化の上位版の神衣化というものが使えるらしいです」
「それは心強いな♪」
「あとは、エネルギー総量が十倍になったくらいです」
「十倍っ!」
それってとんでもないことじゃないんだろうか?
「でも、どうしたんですか? 兄貴、俺らはあの魔王が来る前にこの街から出ていくんですよね?」
あれ、そういえばまだハルに言ってなかったっけか?
俺はハルに決定事項を報告する。
「ええ~! あの魔王と戦うんですか!」
「シフォンたちが残るっていってるし、無視するわけにはいかないだろ。必然的にそうなるな」
俺とハルはため息をつく。
「とりあえず、共鳴率をあげておくか」
「そうですね。でも、どうやって上げるんですか?」
俺は検索の魔法でシフォンのパンツを検索する。
俺たちの目の前に、シフォンの青い下着が映像で表示される。
「兄貴、これって!!!」
「ハル、シフォンたちには内緒だぞ」
大興奮のハルにそっと釘をさしておく。
「ひょっとしたら見納めかも知れないからな、しっかり眼に焼き付けとこう」
「はい♪」
こうして、俺たちの短い憩いの時間は過ぎていった。




