上陸
俺たちは森を出てから水辺までの水竜を一気に片付けた。
これで、少しは一息つけるはずだ。
検索の魔法でも近くに水竜の反応はない。
俺は、体力温存のために玄武装を解き、普通の旅姿に戻っておく。
一応、フィジカルブーストは発動したままだし、ハルには魔剣形態のままで臨戦態勢を維持してもらっている。
「さて、これからどうする?」
遠くの水面に浮かぶ水上都市アクアを眺めながら、一応うしろにいるシフォンたちに聞いてみた。
「ここまで来たんだし、行くしかないでしょ」
「当たり前よ!」
俺の質問に、シフォンとソニアは今すぐ行くと返答する。
いつもながら、目の前の危険にも決して怯えない男前な彼女たちだと思う。
確かに美しい都市のあちこちから煙が上がっているところをみると、一刻も早く行った方がいいのは間違いないかもしれない。
しかしだ。
水面に浮かぶようにして存在する水上都市アクアへの唯一の交通手段である橋は落とされているって話だ。
シフォンのアイスドールの飛行距離にしても、俺のテレポートにしても、おそらく距離が足りない。
途中で水にボッチャン!なんてのはごめんだ。
どうやっていけばいいものか。
そんなことを考えていると遠くの水辺で戦闘音と悲鳴が聞こえた。
どこか他からの救援部隊が、水竜に遭遇したのかもしれない。
こういうときに、うちの女性陣の言うことは決まっている。
「恭介、助けにいくわよ」
「キョースケ、早く」
ほらな。
シフォンもソニアも行く気満々だ。
こいつらに放っとけるわけがない。
《兄貴、行きますか》
「そうだな」
俺たちは地竜グランドの背に乗り、音のした方へ向かう。
数分も走ると戦闘場所が見えてきた。
元々はここに橋がかけられていたのかもいれない。
かなり開けた場所だ。
そこで10人くらいの人間が5匹の水竜に取り囲まれつつあった。
普通の兵士や冒険者なら、あの頭数の違いは致命的だろう。
「グランド、突っ込んで!」
今にも襲いかかりそうな水竜の一体に向かい、グランドに体当たりをぶちかまさせる。
今更ながら、ソニアはじゃじゃ馬なお嬢様だ。
だが、地竜にとっては気持ちよく暴れさせてくれるいい主人なのかもしれない。
「戦女神、あの人たちを守って」
シフォンがアイスドールを操りつつ、囲まれていた人たちを守っている。
「ウインドタイガー……levelMAX、白虎」
俺も、巨大な大気の塊をぶつけ、数体の水竜を後方へと吹き飛ばす。
とりあえず、一番年上そうなお兄さんに声をかける。
「大丈夫ですか?」
「君たち、助かったよ。この恩は……」
「話は後です。まだまだ来そうですよ」
水辺からは新手の水竜があがってきているので、どんどん倒していかないと大変なことになりそうだ。
俺たちは動き出す。
しばらくして、
「ハル、俺たちで何匹倒した?」
《10匹以上は確実ですが、わかりません》
新たに水中から出てくる水竜の数が増え続け、いちいち数えていられないっていうのは同意見だ。
見ると、シフォンのアイスドールにも、水竜の攻撃でヒビが入ってきているし、グランドも一体一体相手するので手一杯になってきている。
「とりあえず、時間稼ぎがしたいな」
《そうですね。兄貴、ミリーの姉御の使えた技のなかに使えそうなのがありませんか?》
「そういえば、まだ使ったことがなかったのがあったな。使ってみるか」
俺は、近くの水竜の首をはねつつ森の手前まで移動する。
「全員、俺のうしろに移動しろ!」
「!……了解」
全員が俺の後方に避難したことを確認。
「くらえ、津波……levelMAX!」
高さ10メートル、幅50メートルに及ぼうかという波に水竜たちが一気に沖合いにまで押し流された。
これで、一息つけそうだ。
グランドは亜空間にはいってもらい、体力の回復につとめてもらう。
「助かったよ。私はこの先見隊の隊長のダラハムだ」
「魔都ミリハイム出身で、黄金都市ユグシルから派遣されてきた恭介です」
俺はここぞとばかりに、魔都ミリハイムの紹介もしておく。
まだまだ知名度は低い魔都ミリハイムのため宣伝は大事だ。
「俺たち、これから水上都市に向かおうと思います。あなたたちはどうします?」
「我々は王都からの救援の先見隊だ。これからここへ向かっている我々の本隊へ報告のため合流するし、その中には白金級の勇者とその使い手もいるので大丈夫だ」
王都が動いてくれるって言っていたのは本当だったようだ。
少し時間はかかっても白金級の勇者とその使い手が来てくれるというなら心強い。
先見隊の人たちのことは任せてもいいだろう。
「しかし、君たちはどうやって移動するんだ? 見ての通り、橋はないし、小さな船程度なら水竜にやられてしまうぞ」
確かに、それが問題だ。
陸上で、楽に勝てる相手だからって、水上でもそうだとは限らない。
ましてや、水竜なんて言うくらいだから、水中や水上は奴らの得意なフィールドかもしれない。
ここから、水上を一気に駆け抜けたいところだ。
………………そうだ!
さっきのあれは使えないだろうか?
「シフォン、俺が起こした津波の上に、アイスウォールで足場を作ることができるか?」
「できるとは思うけど、それでどうするの?」
「それに乗って、沖合いまで一気に移動して、そのまま水上都市に乗り込む!」
「なかなかいい作戦ね。私好みだわ♪」
ソニアは褒めてくれるが、策としては下の下だろう。
ただ、ここで指をくわえて待っているよりは数倍マシだ!
「隊長、水竜が再び現れ始めました!」
見張りをかって出てくれていた先見隊の隊員の報告により、わずかな休憩時間が終了する。
「恭介。私、もう魔力がないんだけど、どうする?」
「ちょっ、シフォン、ここでか?」
「照れてる時間はないわよ」
俺は覚悟を決める。
「……我が魔力の一部を譲らん」
俺はシフォンと唇を重ねる。
先見隊の方たちもいるってのに、公開キスをする俺とシフォン。
思った通り、先見隊の人たちが呆れたようにこっちを見ている。
昔、道端でイチャイチャとキスするバカップルを見ては、アホクサと思っていたが、いやいや、あいつら勇者だと思う。
だって、この、こいつら何やってんだって空気、痛すぎるって!
若い年頃の隊員なんて、さっきまで友好的だったのに、『ケッ、水竜にやられて死ねばいいのに』って目で見てるし……。
「さあ、恭介、いつでもいいわよ♪」
言い訳をさせてもらいたいが、その時間もなさそうだ。
どうにでもなれ。
「津波、levelMAX」
「今ね! アイスウォール!」
シフォンが俺の津波に合わせて氷の板を生じさせ、俺たちはその板に乗り込む!
俺が起こした津波は、俺たちの乗った氷の板と新たに現れた水竜たちを飲み込みつつ、沖合いに向かって行く。
一応、ハルを突き立てて振り落とされないようにしているが、その乗り心地は、安全対策が不十分なアクティビティって感じで超怖ぇ-!
俺にしがみついているため、両脇に感じるシフォンとソニアの温もりでも気が紛れないくらいだ。
でも俺は密かに誓った。
絶対にあの先見隊の人たちに、シフォンとのキスの言い訳をさせてもらうために生きて戻ろうと!
もうちょっとで水上都市に到着だ。
読んでくれた方いましたらありがとうございます。
拙い文で誤字脱字も多いですが、少しでも進んでいけたらと思います。




