転移門
俺たちは旅の準備をする。
シフォンとソニアも各々の準備のために別行動とし、後で門のところに集合としている。
何か忘れている気がするが、思い出せないなら大したことはないんだろう。
「おばちゃん、串焼き頂戴」
「あら、キョースケちゃん、さっきシフォンちゃんも来たけど、二人一緒じゃないって珍しいわね」
「少し、遠くにいくもんで、その準備中なんだ」
「そう、気をつけてね」
俺は、串焼きを10本買うと亜空間にしまいこむ。
グランドに食われないように、大事なものは亜空間の中でも隔離していた。
寝具も準備しているし、後はと……。
俺は全国共通ギルドの入っている建物の近くに行き、あるものを作成する。
「やっぱり、作るとしたら立地的にここだよな。アルフォートさんからは許可も貰っているし、問題ないだろ」
(ハウスメイク)
俺は入り口が大きめの小屋のようなものを作成した。
そこに、俺が作ることのできる亜空間を接続する。
よし、繋がった♪
簡易版の転移門の完成だ。
魔都ミリハイムの倉庫にも俺が作った亜空間が使われており、亜空間が繋がることで行き来ができると、ユグドラシルじいちゃんから聞いていた通りだ。
試しに潜ってみる。
「おお、確かにここはミリハイムだ」
亜空間の中を十メートルほど進むと、懐かしい魔都ミリハイムにくることができた。
レオナや雫たちに会ってこよう。
俺はレオナのところに行く。
レオナは自宅の執務室にて今も忙しく働いていた。
脇には秘書のような立場で、レオナの幼馴染みで巨乳の少女ミランダもいた。
「よう、レオナ、久しぶり」
「キョースケ、どうしたの?」
「立ち話もなんですし、今お茶の用意をしますね」
「有り難うとう、ミランダ」
俺は執務室にある椅子に座る。
そして、レオナに黄金都市の長アルフォートさんとのやり取りを話す。
「というわけで、黄金都市ユグシルから物資や人口の流入があると思うが……勝手に決めて大丈夫だったか?」
レオナはわなわなと震えている。
あちゃ、やっぱり勝手にして怒ったか?
そう思っていると、
「キョースケ、有り難う♪」
いきなりレオナが俺に抱きついてきて驚いた。
全身からレオナの情報が伝わってくる。
少し見ない間に、ミランダには遠く及ばないとはいえ、また少し胸部の辺りが成長したようで、それを惜しみもなく俺に押し付けてくる。
シフォンより確実にデカイ! それにメッチャ、柔らかい!
俺の方こそ有り難うと言いたいくらいだ♪
少しして、レオナは俺から離れるといきいきと目を輝かせる。
「これで当面の財政状況だけでなく、今後のこの魔都ミリハイムの発展の足掛かりにもなるわ」
「この街とレオナの助けになるなら良かった」
「いつもキョースケには助けてもらってばかりね」
「そんなことないさ」
本当に頑張っているのはレオナたちだと思う。
この街が発展したとしたら、それはレオナを始め、この街をよくしようと頑張っている住人たちのお陰だろう。
俺がしているのは、ほんのきっかけ作り程度の手伝いだ。
それでもレオナは上機嫌だ。
「キョースケが望むなら、あなたの嫁にいってあげてもいいわよ♪」
レオナが、冗談でそんなことを言ってくるが、中身は26歳の大人の俺はそんな社交辞令くらいじゃ動じない。
余裕の笑顔で受け流す。
「あはは、レオナにその気があるならいつでも大歓迎だぞ」
その俺の答えにレオナが赤面する。
あれ? 何でこんな反応? ……え~と、冗談だよね?
ちらって、レオナの秘書のようなことをしてくれている少女、ミランダのほうを見ると、おめでとうと拍手しながら涙ぐんでいる。
俺は、何かえらいことを言ってしまったかもしれない。
……シフォンに何て言おう。
「あのさ、レオナ。俺は……その……シフォンのことが」
「大丈夫、私はシフォンちゃんの次、二番目の奥さんでいいから♪」
軽いノリで大事なことをサラリと答えるレオナ。
次ってのは、シフォンと別れた後ってことなのか、一夫多妻制がオッケーてことなのか気になるところだ。
だが、ここまで言われて、なんだかnoとは言えない雰囲気だ。
「今は少し忙しいが、一度みんなでちゃんと集まって話しよう」
「うん、父さんたちにも話して待ってる♪」
俺の知る限り仕事一筋だったレオナが、今までで一番愛らしい笑顔を浮かべる。
何でだろう。メッチャ可愛いのに胃が痛む。
これには回復の光すら効かないだろう。
こうして、俺に水上都市アクア以上に重大な問題が誕生した。
俺は、レオナたちと別れ、ミリハイムの住人たち数人に少し挨拶しながら雫に会いに行った。
<……わあ、お兄ちゃんだ♪……>
「雫、久しぶりだな。元気していたか? って、少し小さくなってないか?」
魔物の少女相手に変な挨拶かと思いつつも、人間に近い外見の雫に対して使うのに違和感はない。
ただ、今までは5,6才の外見だったのに、今はもう少し幼いような気がする。
<……雫の体は元気だけど、少し魔力が足りない感じ……>
「そうか」
雫にはこの街の水源を回してもらっている。
俺の我が儘も手伝って、上下水道も完備しているくらいだ。
まだまだ魔物として幼い雫は、魔人級の力があるとはいえ一つの都市の水をすべて管理するのは、魔力が減ってくるようだ。
そうだ、マジックブーストを雫に使えないんだろうか?
早速、試してみよう。
「雫、キスしていいか?」
<……あわわ、……いいよ……>
魔物の雫とはいえ、その行為の意味は知っているのか、少し慌てている。
そのしぐさも可愛い♪
「俺の魔力をお前に少し渡すぞ。……我が魔力の一部を譲らん」
俺は言葉を唱え、あどけない顔で俺の行動を静かに見ている雫と唇を重ねる。
雫の唇は澄んだ泉の水のように冷たかった。
シフォンにマジックブーストすると体が発光していたが、雫にマジックブーストすると、違う反応を見せた。
体が成長したのだ。
さっきまで3,4才だったのが、今は10才位に見える。
どことなく雰囲気が、ミリーに似てきた気がする。
「どうだ、これでなんとかなりそうか?」
<……大丈夫、ありがと、お兄ちゃん♪……>
雫が照れたようにお礼を言ってくるが、俺が無理をさせて申し訳ないと思っている。
俺の方こそ有り難うって感じだ。
さて、これでミリハイムも大丈夫そうだし、シフォンたちとの約束の時間だ。
そろそろ、転移門を使い、黄金都市ユグシルに戻るとしよう。




