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俺と魔王と勇者と  作者: 逆さメガネ
異世界水上都市アクア編
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水上都市アクアへ

俺は、自分の新たな可能性に喜び一杯のソニアや、強くなったことを確信したシフォンとともに、ベルの塔から黄金都市ユグシルの街に戻ってきた。

うちの変態勇者ハルは、地竜グランドとともに亜空間の中に入れている。

マジックブーストのために行った、俺とシフォンの公開キスを冷やかした罰として、今はグランドとの楽しい鬼ごっこの真っ最中のはずだ。

街の入り口の門をくぐる。

すると、街の様子が少しいつもと違う気がした。

どうしたんだろ?

なんか、街の雰囲気が慌ただしいような気がする。



「何かあったのか?」

「わからないわ。とりあえず、お父様のところに行きましょう」

「そうね、行くわよ。キョースケ」



俺たちは、ソニアの父親で、この街の長アルフォートさんのところに行くことにした。



「アルフォートさん、何があったんですか?」

「おお、キョースケ君か。……ソニアにシフォンさんも。悪いが、今ちょっと立て込んでるんだ」



アルフォートさんが、俺に向けて何か言いたそうだったが、ソニアがいるのを確認すると、言うのを止めたようだ。

ソニアに言えない内容……だいたい想像がつく。



「わかりました」

「えっ! ちょっと、キョースケ、私は何もわかってないんだけど……ちょっと、きいてるのキョースケ!」



俺は騒ぎそうになるソニアを連れて強引に退室すると、今も不満そうなソニアに頼みごとをする。



「ソニア、シフォンと買い物に行ってきてくれ。もしこれから旅になるとしたら、いろいろ要りようだからな。シフォン、屋台のおばちゃんの串焼きも忘れずに頼むぞ」

「わかったわ。行こ、ソニア」



シフォンも俺の意図を汲んでくれているのか、ソニアを促してくれている。



「でも、お父様、絶対になにか隠している」

「だとしても、話してくれないものはしょうがないだろ。準備をしておけば何かあってもすぐに動けるだろう? ついでに街をまわりながら情報も集めていけばいいだろう」

「……そうね。じゃあ、行ってくる。キョースケは?」

「俺もトイレにいったら追いかけるさ」



有りがちな理由で誤魔化す。

そうやって誤魔化して、アルフォートさんから話を聞いたあと二人と合流しようという考えだ。

それにしても、ソニアもだいぶ聞き分けがよくなった気がする。



「ソニア、恭介のトイレは長いからほっときましょう♪ 一時間でも二時間でも入っているときあるし」

「そうなの? いいお医者様を紹介しましょうか?」



シフォンも援護してくれたが、それはどうなんだろうと思う。

ソニアにお尻の病気持ちと思われたと思うと、少しショックだが今は気にしてられない。



「今は間に合っているから行ってくれ」



俺は二人を見送ると、再びアルフォートさんがいる執務室の扉をノックする。

先程は、慌ただしく指示を出していたアルフォートさんが今は執務席に腰かけていた。



「やあ、待ってたよ」

「俺が戻ってくるとわかってたんですか?」

「キョースケ君、君はその若さに似合わず、なかなかの強さと見識の持ち主だからね。ソニアを余所に連れ出してから事情を聴きに必ず戻ってくると思っていたよ」



俺はミリーから貰った魔力の影響か十代半ばに若返っているというのに、アルフォートさんの俺への思わぬ高評価に驚きだ。



「それで、いったいどうしたんですか?」

「水上都市アクアが落とされそうなんだ」

「えっ! 水上都市へは援軍も送られていたんでしょ?」

「そうなんだが、水上都市は名前の通り水の上にある都市。そこへの出入りは一本の橋で行われていた。どうやら各都市からの救援部隊が水上都市入りしたタイミングで橋が落とされたらしい。今はまだ大丈夫かもしれないが、補給も絶たれては長くは持たないと思う」



水竜の群れに襲われて、ここ黄金都市ユグシルからも救援に向かっていた水上都市アクアの危機。

確かに、ソニアが聞いたら黙って見ているなんてできない事態だろう。さすが父娘……自分の娘のことをよくわかっている。



「それで、どうするんですか?」

「幸いにも、ここから水上都市アクアまでは遠かったから、ユグシルからの救援部隊に被害は出ずに、こうして橋が落とされたと報告も受けることが出来たのだが、近隣の都市はすべての部隊がアクア内部での防衛に当たっていたため、情報すら入っていないのが現状だろう。とりあえず、各都市に伝令を出しているところだ」

「そうですか」

「もし、都市を水上に固定する魔性石に問題が発生したら大変な事態になる……」

「!」



何か、聞き覚えのある単語が聞こえて来た気がする。

魔性石。

白金級(プラチナクラス)の勇者ロンギヌスとその使い手マリアが、うちの魔王少女ミリーの魂を閉じ込め奪っていくのに使っていた石の名前だ。



「事態を重くみて、この大陸における三大都市のうちの一つ、王都も動いてくれるようだ」

「三大都市?」

「この大陸には、王都、神都、聖都といった規模や戦力、生産性によって選ばれた三大都市というものがあるんだ」



アルフォートさんが俺にもわかりやすいように説明してくれる。

三大都市、何かカッコいい!

いつかは魔都ミリハイムも入れてもらえないだろうか?



「でも、王都が動いてくれるんなら大丈夫なんでしょ?」

「そうとも限らない。到着に時間がかかるため、その前に水上都市が落とされるって可能性もある」



思っていたより事態は深刻だ。

俺とアルフォートさんが真剣に悩み話していると、



「話は聞かせて貰ったわ」



俺とアルフォートさんが振り返ると、そこには仁王立ちのソニアがいた。



「えっ! 何でソニアがここに? 確かにシフォンと出掛けていっただろう」

「あれは、私の影よ」



ソニアが堂々と言い放つが意味がわからない。

えっ! 影? 何いってんの?



「そうか、最初にこの部屋に入ってきたときには入れ替わっていたのか……誘拐対策にイロイロとしてきたことがすべて裏目に出てしまって、ソニア、お前ってやつは!」



いやいやいや、アルフォートさん、入れ替わってたのか…じゃなくて何でソニアはそんなもの持ってるんですかって話ですよ。

縄脱けできて、身代わりの影とかも持ってて、……俺のお嬢様の概念が変わりそうだ。



「お叱りはわかります。ですが、お父様、今ここで動かせる戦力がユグシルにありますか?」

「……」

「無言は肯定と受けとります。確かに、普通の救援部隊が到着したとしても出来ることは限られているでしょう。通常、水竜相手も一体を複数名で相手するのが定石ですから。ですが、キョースケやシフォンちゃん、それに私なら一人で一体を相手することも可能です」

「まさか! キョースケ君はともかく、お前やシフォンさんまで……」

「本当です」



俺が何かいう前に、ソニアが言い切った。

その言葉を俺も肯定しておく。



「確かに、絶対とは言い切れないですが、ソニアは獣使い(テイマー)の才能があって、今は俺が飼っていた地竜を操れるんです」

「まさか!」

「そして、シフォンは氷の魔導の使い手で、地竜を駆るソニアに勝ります」

「今も、あの街の人たちは危機に怯えているでしょう。だから、お父様。私たちを行かせてください」



アルフォートさんが悩んでいる。

だが、ソニアの剣幕と、俺の説明を聞き覚悟を決めたようだ。



「わかった。どのみちソニアに聞かれた以上、放っておいても勝手に行ってしまうだろう。君たちを、黄金都市ユグシルの使いとして、正式に水上都市アクアへ派遣したい」



大都市の長としての顔になったアルフォートさんが俺たちに正式に依頼してきた。



「わかりました」



こうして、俺たちは水上都市アクアへ行くことになった。


読んでくれたかた有り難うございます。



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