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俺と魔王と勇者と  作者: 逆さメガネ
異世界黄金都市ユグシル編
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魔都ミリハイム

ミリハイムの町の戦いを終え、白銀級の勇者の使い手たちを俺が地の魔導で作った簡易牢にぶち込んだ後、俺はミリハイムの町の町長の少女、レオナに報告にいった。

執務室にいくと、レオナはシフォンのいる部屋にいるとミランダが教えてくれた。

レオナもシフォンの様子を心配して見に来てくれていたようだ。



「レオナ、外の方は終わったぞ。どうだ、シフォンの様子は?」


「シフォンちゃんは、キョースケが治療してくれたから大丈夫。今は寝ているとこ」


「そうか、良かった」


「今回は焦ったわよ。まさか、このミリハイムの町が勇者に教われるなんて思ってもなかったから」


<……雫のせい……>


「雫ちゃん!」


「雫、無事だったのか!」



いつの間にか、水道を通して、この町の水源を管理してくれている魔物の少女、雫も部屋の中に姿を表していた。

その幼い顔は、涙でグシャグシャになっている。

今回の勇者襲撃の責任を感じているらしい。

何も悪いことをしていない雫を魔物というだけで襲った勇者たちのほうが、どう考えても悪いと俺の基準では思うのだが、それはおかしいのだろうか?



「雫ちゃんは、悪くない!」



町長のレオナも同意見のようだ。

うん、やっぱりそうだよな!



「あなたの倒した勇者の使い手たちは、今どうしてるの?」


「とりあえず、いろいろ話を聞いてみないといけないし、牢屋を作ってぶち込んである」


「話を聞いた後はどうするの?」



レオナが聞いてきたが、それが問題だ。

殺す。

それは簡単だ。今の装備を全部剥ぎ取られた使い手たちなら、今の俺なら一瞬で殺すことができるだろう。でも、それでいいのだろうか?

元々、殺人が非日常的な日本育ちの俺に、実際に殺すことは出来ても殺した後の罪悪感を乗り越えることができるのだろうか……?

答は出ない。

意外とあっさり乗り越えることが出来るかもしれないし、……出来ないかもしれない。

それは今はわからないことだ。

だけども、ひとつ言えることがある!

俺は、人を殺すだのなんだのより、ハルが魔剣になって出来るようになった闘衣化(朱雀を食って魔力に変えさせたんで、朱雀装と名付けた♪)とか、オルジナル奥義だとかのほうに心ときめいている!

この世界で何が正しいのか知んないが、俺は俺の価値観で生きてやる!

じゃないと、うちの魔王少女ミリ―に顔向けが出来なくなりそうだ。

とはいったものの処遇の問題は残ったままだ。



「ホッホッホッ、坊主。そやつらは、ワシが引き受けよう」


「!」



この声は!



「ユグドラシルじいちゃん!」



部屋の入り口にユグドラシルじいちゃんがきていた。

じいちゃんは、長いこと生きている(存在している?)黄金級の勇者だ。

いい案があるかも。



「レオナ紹介するな。このじいちゃんはユグドラシル。黄金級の勇者だ」


「ワシがあやつらに勇者に代わる武器を用意してやろう。それで、冒険者となって各地にこの町の宣伝をしてもらえばどうだ? この町は正直いい町じゃ。そこの魔物のおかげで人が生活していく上で大切な水の心配もないしな」


「だけど、それじゃ魔物の雫を狙って、他の勇者もやってくるんじゃ?」


「そうじゃな♪」


「そうじゃなって……」



やっぱり、このじいちゃん駄目かもしれない……。

他の勇者が今回のように押し寄せたらどうするっていうんだ。



「確かに、今回は危ういとこじゃった。でもそれは、お前がお前の持っている勇者を復活させるために動けんかったからじゃろ? もう勇者も魔剣として復活したし、白銀級の勇者などものともしないお前らが今はいる♪」


「……確かに」


「それに勇者を倒すと、こんな特典もあるぞ♪」



ユグドラシルじいちゃんの手には勇者の核が二個握られていた。

あれはひょっとして俺が倒した勇者の核か?



「この勇者の核には勇者を復活させるという方法の他にも使い道があるのじゃ。これを使えば、勇者のlevelを上げることも可能なのじゃ」


「勇者のlevelを上げる?」



勇者にlevelがあるのも初耳だ。

青銅級とか黄金級とかのクラス以外にlevelもあるのか。



「そうじゃな。試しにこの勇者の核を一個貰ってもよいかの?」


「どうぞ」



俺が倒したから俺に許可を求めたんだろうが、俺が持っていても宝の持ち腐れだ。利用方法を教えてくれるってんなら、一つくらいあげてもいいだろう。

ハルの復活でもお世話になったしな。



「それでは、まずは検索の魔法で、ワシとお前の持っている勇者のlevelを調べてみろ。前に、ワシのことを魔法で調べようとしたときは防御しとったが、今なら調べられるじゃろううて」



俺は検索の魔法のことをじいちゃんに言ったことはなかったはずだ。

とくに、じいちゃんに使用できなかったこととか。

まぁ、千里眼とかいう能力もあるんだとしたら、もうユグドラシルじいちゃんが何を知ってても驚かないぞ。

俺は、言われた通り検索の魔法で、ユグドラシルじいちゃんとハルのlevelを調べてみる。

ハルクライム・・・level85

普通ゲームとかではlevelは100までだし、85ってのはなかなか凄いんじゃないだろうか。

そんじゃ、じいちゃんはと……。

ユグドラシル・・・level260

……って、トリプルスコア以上! 

これは卑怯だろ。


因みに、levelを1上げるためには十年経過するか、力のある存在を倒して経験値を稼ぐ必要があるらしい。

ユグドラシルじいちゃんの話では、levelが30までは青銅級、levelが50までが白銀級、level500までが黄金級ということだった。

ということは、少なくとも白金級のロンギヌスはlevel500オーバーということになる。

絶望的なlevel差だ。

勇者は武器として存在しているだけで経験値は上がっていくが、それは向こうも同じだし、そうそう力のある存在なんているはずがない。

よってlevel差が覆ることなんてほとんどない。

だが、それを覆す方法がある。

それが今回じいちゃんの教えてくれた摂収<テイクオーバー>だ。



「方法は簡単じゃ。持って核同士を合わせてテイクオーバーというだけじゃ。やってみるぞ。<テイクオーバー>」



ユグドラシルじいちゃんが自分の額にある勇者の核に、手に持っている核のひとつを当てて言葉を唱えると核から核へ光の粒子が流れた。



「完了じゃ」



俺はもう一度、検索の魔法でユグドラシルじいちゃんのlevelを確認する。



「あれ? じいちゃんのlevelが上がってる!」



じいちゃんのlevelが295に上がっていた。

さっきと比べると35上がった計算だ。

俺もハルの本体である魔剣にある勇者の核に、じいちゃんから受けとった勇者の核をあてる。



「<テイクオーバー>」


魔剣ハルクライムが光に包まれると、やがてその光の中から十歳くらいの男の子が出てきた。

ダークブラウンの瞳に、茶髪……間違いない。

ハルが精神体の時に良くとっていた人間の姿だ。

それが精神体ではなく、実体になっている。



「兄貴、俺どうしたんでしょう?」



ハル自身、突然のことに戸惑っているようだ。

俺が検索の魔法で確認すると、ハルのlevelが120に上がっていた。

何この方法。

メッチャ、level上がるんだけど?

これだったら、level500以上の白金級もすぐいけそうだ……って、おかしくないか? こんな簡単に上がるんなら、何でみんなやらないんだ?



「じいちゃん、この方法なら、みんな簡単に上のlevelに上がれるんじゃ?」


「そう思うじゃろ。ワシらにテイクオーバーされた勇者の核を調べてみい」



俺はユグドラシルじいちゃんに言われるままに、検索の魔法で勇者の核のlevelを調べてみる。

すると、levelは0と表示された。

成る程、levelをとられた方は0になるってわけか。

強い奴が、更に強くなるシステムだ。

だが、弱い奴が手っ取り早く強くなれる方法でもある。



「本来、このテイクオーバーがあるせいで勇者同士は組むこともなければ出会うこと滅多にない。今回、白銀級の勇者が二人も来てくれたのは幸運だったんじゃよ」


「そこで、更に勇者を呼ぼうってわけですか。強くなるために」


「坊主、お主らの目的のためには手っ取り早いんではないか?」



確かに、ユグドラシルじいちゃんのいう通り、このまま魔物の雫を囮にして、このミリハイムの町に勇者を誘き寄せられたら手っ取り早く強くなれるだろう。それにともなって、訪れる勇者の使い手以外の人々があれば、町の収入源になるかもしれない。

あくまでも、俺がそいつらに勝てることが前提だが……。

これって人としてどうなんだろうか?

チラッて、今もあどけない顔をしている雫をみる。



<……お兄ちゃん、雫が役に立つんだったら……雫、がんばる……>


「って、雫ちゃんは言ってますが? まぁ、町の長としては外の人間がこの町を訪れてお金を落としてってくれるのは大歓迎! 人死に以外なら、人的被害でも物的被害でも、キョースケが直してくれるしね、……もちろん、タダで♪」



雫の目はあどけないが、レオナの目は金という文字が浮かんでいる。

ただ、二人に共通しているのは、俺の勝ちを疑っていないということだ。



「恭介、そこまで言われたら男ならやるしかないわよね♪」


「シフォン、起きたのか!」



今回、一番の功労者で被害者でもあるシフォンも言ってくれている。

断る理由は何もなかった。

可愛い雫を殺そうとする奴がいるなら、俺は喜んでそいつらをぶっ倒してやる!



「よし、いっちょあいつらには大々的に宣伝してもらうか。いっそのこと、魔物のいる町らしく町の名前も変えるか?」


「えー、ミリハイムって名前、結構気に入っているのに!」


「じゃあ、……魔王所縁の土地で魔物のいる町。王がいるのが王都なら、魔物がいるのは魔都……そんで、ミリハイム……そう魔都ミリハイムってどうだ?」


「魔都ミリハイム……うん、いいんじゃない?」


「私もいいと思う」


<……雫もそれでいい……>



全員一致で決まった。

ミリハイムの町改め、魔都ミリハイム。

我ながらいい名前かもしれない。



さて、方針も決まったし、一度黄金都市ユグシルヘ戻ってみるか。








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