ミリハイムの町の戦いの決着
ミリハイムの町の住人たちの避難も完了した。
これで、心置きなく戦える。
俺は、改めて白銀級の勇者の使い手たちと対峙する。
青銅級の勇者だったハルと違って、あいつらの持つ武器は確かに白銀級の勇者なのだろう。
感じる圧力が全然違う。
一段階違うだけで、勇者の格は大分違うみたいだ。
だが、黄金級のユグドラシルじいちゃんや白金級のロンギヌス程の化け物のような力は感じない。
相手は、白銀級の勇者の使い手の二人。
あいつらの武器で、今は本体と同化している勇者も合わせたら、四人だろうか?
だが、今の俺には変態級の勇者ハルもいてくれる。
負ける気は全くしない。
そういえば、魔剣として復活した元青銅級の勇者ハルは、今は何級になるんだろう?
まぁ、今度聞いとけばいいか。
奴らを待たせ過ぎたら悪いしな。
「待たせたな。さあ、始めようか」
俺は、開戦の狼煙がわりに使い手たちに向かって魔導を放つ。
「ファイアレイブン!」
《兄貴、直接的な魔導は、勇者の使い手のあいつらには効かないと思いますよ》
「だろうな♪」
《わかってて、なんで使うんですか!》
鳥の形をした火の魔導が使い手の男に襲いかかる。
だが、男は動じない。
むしろ、馬鹿がとばかりに笑っている。
その理由は簡単だ。
さっき、ハルが慌てて忠言してきたように、勇者の使い手は共鳴率により奥義が使え、その中の一つに『魔鏡閃』という魔導を跳ね返せる奥義があるからだ。
「喰らいやがれ! 魔鏡閃!」
男が、予定通り俺の魔導を跳ね返してきた。
跳ね返された魔導は、威力も上がっているようでサイズも大きくなっている。
俺に向かって、炎の鳥が迫ってくるが慌てない。
だって、その必要がないからだ。
俺は、静かにその炎の鳥を見つめた。
そして、魔力を練り上げる。
「ファイアレイブン、levelMAX……朱雀!」
俺が新しく繰り出した火の魔導、朱雀は、いとも簡単に炎の鳥を飲み込むと再び男のほうに向かっていった。
「何っ!!!」
朱雀が男に直撃して炎上する。
あっ、しまった。
ゆっくり、じっくり、相手するといったのに殺してしまっただろうか? だとしたら、失敗だ。
白銀級というからには、もうちょっと粘ってもらわなくては。
そんなことを思っていると。
「くそがっ!」
「おお、生きてた。なかなか、やるじゃん♪」
炎の中から男が出てきた。
跳ね返された最初の魔導により、多少威力が相殺されていたからだろうか?
おや?
見ると、男の姿が少し変わっている。
武器を持っている方の手から肩にかけて、鎧のような物が出現している。
あれはなんだろう?
「おい、アドリア、お前も闘衣を纏っとけ! こいつ、ヤバイぞ!」
「了解、オリバー」
男に促され、女も同じように武器を持った手から肩にかけて、鎧のような物が出現している。
あいつら二人とも何をしたんだ?
《あれは、闘衣といって白銀級以上の勇者の使い手が使用できる防具です。魔導無効化とかの付加効果があったりするはずです》
ハルが解説してくれた。
「そんな便利そうな物があるんのか?」
《見ての通り、白銀級では体の一部を覆うのが精々ですけど、黄金級以上は全身を包むような闘衣を出現させることも可能になります》
ハルの説明をきき、俺の男心が疼く。
闘衣、カッコイイじゃん!
俺も出来たりするのだろうか?
そんなことを考えていると今度は使い手たちの方から仕掛けてきた。
「潰れろ」
「死ね!」
せっかく、二人いるんだからコンビネーションを活かせばいいのに、動きはてんでバラバラだ。
左右に分かれて仕掛けているだけ、まだマシか。
女の方の武器は、明らかに近距離専用。
「レーザーショット×5!」
光の魔導で牽制し、足止めだ。
一応、体も狙ってはみたが、闘衣で覆われている腕部分でガードされ、ダメージには至ってない。闘衣は地竜の鱗並みの防御力があるみたいだ。
まぁ、足止めは出来たしいいとしよう。
男の方の武器モーニングスターは、長い鎖に鉄球の付いた中距離武器。
俺は一気に懐に飛び込む!
「ロック…!」
「させるかよ!」
ロックショットを男の腹に叩き込もうとしたら、鎖を強引に掴むことで、鉄球の軌道を変えて懐にいる俺に対応してきた。
テレポートで回避する。
「うおっ! ハル。こいつ、ただのチンピラかと思ったら本当になかなかやるな」
《兄貴、あいつら、腐っても白銀級の使い手ですから》
オープン回線のハルの念話は、あいつらのちっぽけなプライドを傷付けるには十分だったようだ。
「舐めるなっ! 白銀級の勇者モーニングスターのモンスーンの使い手、鉄球のオリバーといったら冒険者の間では少しは有名なんだからな」
「全く知らん!」
「なんだと!」
俺は冒険者でもないので気にすることもないのに、オリバーは勝手に激昂して顔面が紅潮している。
「アタシは―」
「いや、お姉さん、言っとくけど、あんたのことも知らないからね!」
「!」
いや、お姉さん。なんであんたも口上くらい述べさせろみたいな屈辱に満ちた顔してんのさ。
これは遊びでなく、戦いなのだ。
だが、こうしていても、隙があまり見えないのはさすがだ!
「遊んでないでかかってくれば?」
俺の言葉に二人が動き出す。
さっきより連携を絡めて仕掛けてくるが、俺はそのすべてを弾き、かわし、捻り潰す。
「この……化け物め!」
失礼な!
そんな鬼の形相をしたお前らに言われたくない。
それに、お前らがシフォンにしたことを考えると十分に紳士的な対応だと思うぞ。
「おい、モンスーン。奥義いくぞ」
「マチルダ、アタシらも奥義だ!」
《兄貴、あいつらの共鳴率が跳ね上がってます。固有奥義が来るかもです! 注意して下さい》
オリバーとアドリアがそれぞれの勇者に語りかけ、奥義の構えをとる。
ハルが注意してくれたが、固有奥義?
何だろうか?
「聖球暴虐鎖!」
「破弾聖撃!」
オリバーのモーニングスターが縦横無尽に幾何学模様を描きながら、アドリアはシャシブルの先端を闘気で更に巨大化させながら、俺に襲いかかってきた。
二人とも自分の持つ勇者の特性にあった奥義を繰り出してきた。
成る程、これが固有奥義かぁ。
これを防いだら、あいつらのプライドはどうなるだろう……♪
楽しみだ。
「ロックタートル、levelMAX……玄武!」
「「!!!」」
俺の前に亀の甲羅をモチーフにした巨大な盾が出現する。
巨大な衝撃音のあと、盾は残り、奴らの奥義で起こったエネルギーは消滅した。
「そんな……」
アドリアが膝から崩れ落ちる。
オリバーのほうも辛うじて武器は持っているが呆然としている。
まさか、ほとんど魔導だけで圧倒されるとは思ってなかったんだろう。
さて、頃合いか。
俺は、手に持っていた魔剣ハルクライムを使ってみることにする。
「なあ、ハル。俺らも闘衣を試してみるぞ」
《でも兄貴、俺は青銅級で、闘衣は……》
「大丈夫。俺たちならできるさ。そうだ、これを食ってみろ。……ファイアレイブン、levelMAX……朱雀!」
《ちょっ、ちょっと、兄貴無茶ですって!》
巨大な火の鳥を目の前に、ハルが後込みしている。
まぁ、俺も他人事だから簡単に提案できるってのはある。
だが、それはハルには内緒だ!
俺はそんな気持ちを隠しつつ、自信ありげな表情を作って押しきる!
「できる!」
《……もし、出来なくても文句は受け付けませんからね!》
そんな前置きを残しつつ、魔剣が巨大な火の鳥を吸収し始める。
魔剣を通じて、何かが俺の表面を覆っていく。
(闘衣着装!)
瞬間的に、俺は赤と白を基調とした法衣のような衣装に身を包まれていた。紫の刀身だったはずが、今は燃えるような朱に染まっている。
《で、出来ました!…出来ちゃいましたよ♪ しかも、全身って、えっ、俺って黄金級? いつのまに?》
「な、できるっていっただろ」
そうは言ったが、闘衣化出来たことに俺もビックリだ。
いや~、言ってみるもんだ♪
じゃあ、次は固有奥義だな。
「ハル、俺らの共鳴率は?」
《シフォンの姉御の無惨な姿を見て、88%ってところですね。固有奥義を使いたいなら、90%以上で可能です!》
あと2%ってところか。
俺は、アドリアを見る。
今は呆然として腰砕けになっているが、かなり筋肉質であるが、こうしてみたら普通にお姉さんに見えなくもない。
今なら、隙だらけだし、ただの魔導でもいけそうだ。
「ウインドレイブン」
「キャっ」
風の魔導で、アドリアの腰辺りの服を切り刻みチラリズム度をあげてみた。
服の切れ目から、黒い下着がチラチラ見える♪
なかなかいい反応をしてくれたおかげで、よりイメージが膨らむ。
夜はあられもない姿で、あの男とイチャイチャしているのだろうか。
実にけしからん♪
…………♪♪♪
これでどうだろう?
《兄貴、俺らの共鳴率、90%を越えました!》
あまり認めたくはないが、エロは俺とハルの共鳴率上昇に有効だ。
《兄貴、固有奥義を使いますが、俺も生まれ変わって初めて使うんで加減がわかりません。最初の一撃は殺してもいい相手に使ってくださいね!》
「なら、ちょうど良かった」
俺たちの会話を聞き、二人の顔が青ざめる。
そのままでも全然敵わなかった相手が、全身闘衣化して、固有奥義まで放とうとしているのだ。
死を予感したのだろう。
《兄貴、技の名前は聖魔装破斬です》
「聖魔装破斬……俺の男心が疼く名前だな♪」
聖属性とか魔属性とかあるのかわからんが、全部まとめてぶった切る。……もし、片仮名で名前を付けるとしたらオールスラッシュ、またはオールクラッシュというところだろう。うん、気に入った!
「ハルいくぞ!」
《はい♪》
「聖魔装破斬!」
「「!」」
剣から迸るエネルギーが二人を有無を言わさず飲み込んでいく。
それは、あの日に見た、白金級の勇者の使い手の奥義にも匹敵しそうだ。
白銀級に防げる技じゃないだろう。
ついに俺も手を染めた……?
俺が、はじめて人を殺した干渉に浸っていると、エネルギーの通ったあとに二つの人影を発見する。
あれは……。
オリバーとアドリアの二人だ。
二人も何で自分達が生きているのかわかっていないようだ。
そして、自分達の姿を見て更に驚いている。
二人は全裸だった。
普通の服の部分はもちろん、闘衣も、二人の武器だった白銀級の勇者すらも見当たらない。
俺たちの固有奥義は二人の命ではなく、勇者を含めたすべての装備を奪ったようだ。
その事実に何処かホットしている俺がいた。
やっぱり、人を殺すのは後味が悪すぎるし、そんなことをしたら、うちの魔王少女ミリ―に顔向けが出来なくなりそうだしな。
「流石は、うちの変態勇者。お前のおかげで、俺はやり過ぎないですんだみたいだな。ありがとな」
俺が、せっかく照れ隠しに軽口も交えて礼を言っているのに、当のハルはアドリアの裸体に夢中になっている。
《いいっすよ、お姉さん。その戸惑いの表情と、その鍛えられた無駄のない裸体とのギャップがサイコ―っす♪》
俺たちには、こっちのほうが断然合っていると思った♪
読んでいてくれた方いましたらありがとうございます。




