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俺と魔王と勇者と  作者: 逆さメガネ
異世界黄金都市ユグシル編
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ミリハイムの町の攻防

俺は、ユグドラシルじいちゃんの作った転移門をくぐると、亜空間に突入した。

この亜空間自体は俺が作成したもので、いろんな物を詰め込んでいる。

五メートルくらいの短いトンネルのようになった通路の外にはいろんな道具や食料品の他に、俺が捕まえた地竜もいた。

今は寝ているようで、こちらに気付いていない。

ちょっとした、アトラクションのようだが、今はそれを楽しんでいる暇はない。

だが、この五メートルくらいのトンネルをくぐったら、七百キロ以上離れているミリハイムの町に移動できるっていうのは凄く便利だ。

全部片付いたら、一度戻ってこいとユグドラシルじいちゃんにも言われていたし、その時にでも作成方法を聞いてみよう。

今は、ミリハイムの町とシフォンが最優先だ!



「ハル、出るぞ!」


《いつでも行けますよ♪》



俺は亜空間から出る。

そこは、俺がミリハイムの町に作った倉庫の前だった。



「雫、聞こえるか! 状況を教えてくれ」



俺は検索の魔法で、シフォンの居場所を調べつつ、この町の水源を司っている、魔物の少女に語りかけた。

この町にいる間は、念話も可能なはずだ。

雫の念話での返事はすぐにきた。



<……お兄ちゃん、お兄ちゃんなの! 雫のせいで、町の皆が、お姉ちゃんが!……>



雫が泣きじゃくりながら報告してきた。

要するに、魔物である雫の反応を見つけた白銀級の勇者がこの町にやって来たが、この町の住人たちは雫を守るために勇者に逆らった。

それで、住人たちがいたぶられているところに、シフォンが到着したようだ。

だが、雫の報告を聞く限り事態は深刻なようだ。

俺は走り出す。

少しいくと町の東側にある青龍門の辺りに人だかりができていた。

一番前にこのミリハイムの町の町長のレオナがいた。



「レオナ……シフォンは?」


「キョースケ! シフォンちゃんはあそこよ!」



レオナが指したところに、シフォンがいた。

いや、……横たわっていた。

その姿は痛々しいほどに傷つけられている。

脚が両方ともおかしな方向を向いているし、あんなに白かった肌が赤黒く染まっていた。

よく見ると、指も数本潰れていてないし、出血も尋常でない。

辛うじて動いているから死んではいないのだろう。

急いで駆け寄る。



「大丈夫か、シフォン!」


「…………」



返事はない。

俺が回復の光を当てると、シフォンが生気を取り戻す。

間に合ったか。

俺が安堵していると、ようやく、この場に町の人間じゃない奴がいることに気付く。



「あれあれ? あんた誰? 俺たち、今からこいつを切り刻んで楽しもうと思っていたのに」


「このガキ、私たちの打撃をさんざん食らっても、なかなか悲鳴もあげずに粘りやがってよ。私たち、どれだけき切り刻んだらこのガキが悲鳴をあげるか賭けをしてたんよ」


「…………」


《…………》



二十代と思われる男女が武器を構えて立っている。

俺は耳障りな言動を聞き流し、二人の様子を観察する。

俺の様子を察してか、ハルも無言だ。

男の方はゲームとかでもお馴染みの武器、モーニングスターを持っていて、女の方はサーベルの先に球形部の打撃部を付けた変わった武器を持っていた。

検索の魔法で調べると、シャシブルという打撃武器らしい。

だが、どうでも良かった。



「シフォン、大丈夫か?」


「…………恭介?」



俺が回復の光を当て続けたことで、シフォンが意識を取り戻す。

ついでに、折れている骨や、失った指ももとに戻しておく。

随時、治していっているが、よくこれだけやられて死ななかったものだ。

これだけの状況で激痛の中、発狂もせずにいられたのは、シフォンが独自で編み出した魔導、アイスメンタルのお陰かもしれない。



「お前、いくらアイスメンタルがあるからって、無茶しやがって……」


「アイスメンタルは使ってない。だって、死ぬ前には恭介が来てくれるって思ったし……。滅多にない恭介のカッコいい場面を見ても感情や精神を固定しちゃって感動できないのって勿体ないじゃない♪」



喋るのもしんどいくせに、軽口を叩くシフォン。

チクショウ! 

抱き締めたくなったじゃないか!



「レオナ、シフォンを頼む!」


「わかったわ」



レオナが数人の住人たちとともにシフォンに駆け寄る。



「おうおう、お前ら。俺らの許可も得ずに、勝手な真似をするんじゃねえよ!」



俺たちの行動に対し、苛立った使い手の男が動く。

勇者の初級奥義、闘気斬に似た技を放ってきた。



《兄貴、打撃系の勇者の奥義、闘気撃です》


「あっそ」



ハルの落ち着いた報告を、軽い返事で聞き流す。

俺は、手に持つ魔剣ハルクライムに無造作に魔力を込めると振るう。

それだけで、相手の初級奥義が掻き消えた。



「何っ!」



男は、その事実が信じられないというように驚いている。

確かに、俺の放った一撃は尋常じゃない威力だと思う。

だが、それもどうでもいい。

俺の興味はただ一つだ。



「大人しく待っていろよ。心配しなくてもお前らの相手はゆっくり、じっくりやってやるからよ」


「!……」



俺の静かな言葉に、二人の白銀級の勇者の使い手たちが押し黙る。

シフォンが運ばれていくと、住人たちにも避難するように声をかける。

住人たちは、俺の言葉に従い避難を開始した。

避難が完了するまで、そんなに時間はかからなかった。



「ふん、戦いに巻き込まれないように避難させるなんて、とんだ甘ちゃんだな」


「……?」



俺の言葉で動けなくなっている情けない奴が何か言っている。

戦いに巻き込まれないように?

どういうことだ?

ああ、あいつにはそう見えたわけか。

ちゃんと訂正しておいてやるか。



「あのさ、住人の中には子供たちもいただろう。あの子達に見せるわけにはいかないだろ。……お前たちを惨たらしくぶち殺す姿を」


「!!!」



良かった。

今度は正しいかたちでちゃんと伝わったようだ。

使い手たちの顔つきが変わった。

奴らも本気になったようだ。


さて、シフォンの仇をとらせてもらおうか。


倍? 十倍? 百倍? まだまだ甘い!

万倍返しだ!

って、どっかのドラマのパクリのようだが気にしない。

……ただ、億倍とか言えない俺は、あいつらの言うようにまだまだ甘ちゃんなのかもしれない。




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