ハル復活へ
俺は、依頼の本来の報酬である小銀貨を受け取ると、受付でギルド登録を済ませた。
これで今後は金の心配も減るはずだ。
時間ができたら、以来を受けたり、獲物を換金しにこよう。
こうして、用事を済ませた俺達は、ハルを直してくれるという、黄金級の勇者ユグドラシルと名乗ったじいちゃんに付いて移動を開始する。
どこにいくのだろうと思いながら付いていくと、黄金都市ユグシルから出て山の中腹へ向かった。
「てか、じいちゃん、移動早っ!」
じいちゃんは、テレポートしているわけでもないのに、俺達とグングン距離を開けていく。
普通の移動では付いていけずに、途中からテレポートを織り混ぜて追いかけていく。
向かった先には廃屋のような小屋があった。
まさか、ここじゃないよな? 俺の住んでたボロアパート、ツヅレ荘もビックリのボロさだぞ!
「ほれ、着いたぞ」
目的地は、まさかのここだった。
「汚い場所ね」
シフォンが、もっともな意見を言うが口に出したら駄目だろう。
もっとオブラートに包まないと。
ハルを直してもらえなくなったらどうするんだ!
俺が大人の対応というのを見せてやろう。
「もうちょい掃除をしたほうが良いんじゃないですか? こんなところにいたら頭までカビそうですよ」
「……お前ら、本気で勇者を打ち直してもらう気はあるんか?」
ユグドラシルじいちゃんはご不満そうだ。
失敬な!
あるからこうしてこんな場所まできたってんだ。
俺らがそんなやり取りをしている間に、小屋の入り口にまで到着。
「オジイ、お客さん?」
汚い小屋から十代前半の男の子が出てきた。
この子は何者だろう?
ここにいるということは、ユグドラシルじいちゃんの関係者に間違いないだろう。
「紹介しておこう。この子がワシの使い手のアグルじゃ。まだ若いがなかなか良い腕をしとるぞ」
この子が、黄金級の勇者ユグドラシルの使い手……白金級の勇者ロンギヌスの使い手のマリアと比べるとマトモそうだ。
使い手が変質者だらけでなくて良かった。
「よろしく、俺は小林恭介だ」
「アグルです。よろしく」
「この坊主たちが、地竜の鱗を捕ってきてくれたんじゃよ。その礼に、この坊主の持つ勇者の核を打ち直してやろうかと思って連れてきたんじゃ」
「それは、ありがとうございました。僕からもお礼を言わせてください。それで、早速あなたの持っている勇者の核を見せてもらっても良いですか?」
「ああ」
俺は、ポケットからハルの残した宝玉を取りだすとアグルに渡した。
アグルは宝玉を光に透かすように眺めている。
どうなんだろうか?
「綺麗な核ですね。もとは青銅級だったのかな? でも、純度の高い魔力に影響を受けて、だいぶ変質してますね」
それがアグルの感想だった。
変質してるっていうのはどういうことだろう?
ハルは本当に復活できるのだろうか?
俺の不安を他所に、ユグドラシルじいちゃんは自信満々だ。
「ほほ、アグルの目利きは確かじゃ」
「それで、どういった武器に打ち直しますか?」
アグルが妙なことを言ってきた。
どういった武器に打ち直す?
元の戦斧、ハルバートに戻すんじゃないのか?
「それって、俺がハルをどんな武器にしたいか選べるってことなのか?」
「はい」
はいって、無邪気な顔してとんでもないことを言っている自覚はあるのだろうか?
駄目だ。
驚きすぎて疑問系でしか喋れてない。
「まぁ、そういうことじゃ。元の武器に戻すのはもとより、アグルの腕なら聖剣や神剣、果ては魔剣なんてのも可能じゃ。好みがあれば、弓やナックル、ハンマーなんてのもいけるぞ。変わり種では銃やチェーンなんてのもありじゃな」
銃までありなのか!
「武器なら何でもありな感じだな」
「武器、大好きなんです」
アグルが、ジュルリと涎を垂らし危ない表情をしている。
やはり、このアグルも残念な子のようだ。
俺の使い手への偏見が少し深まった。
「それで、どうする?」
正直、元のハルバートでも良いし、銃ってのも棄てがたかった。
でも、せっかくこのファンタジーな世界にいるからには、やはり剣に憧れるって感じもする。
聖剣や神剣? 覗き大好き変態セクハラ勇者ハルのイメージではない。
やっぱり、魔剣ってのが一番しっくりくる。
うちの魔王少女ミリーの本名が魔王ミリーヒルクライム。確か、クライムって英語かなんかで発音するのは、スペルは違うが『検索』のほかに『罪』ってのもあったはずだ。
魔剣ハル……クライム。うん、魔剣ハルクライム。
思ったより良い名前じゃないだろうか。
覗きやセクハラなどの性犯罪しか連想できないが、うちの変態勇者にはピッタリだ。
「魔剣で頼みます」
俺は、頭を下げて頼んだ。
「それでは、こちらへどうぞ」
俺はアグルに案内されるまま、小屋の中へ入っていく。
小屋の中は思ったより酷くなく、工房のようになっていた。
というか、道具が何もないんだが、どうやって打ち直しというのだろう?
「道具とかはどうするんだ?」
「坊主、お前の前に最高の道具がいるではないか。ワシというな♪」
「へっ?……うおっ!」
ユグドラシルじいちゃんが光ったと思ったら、黄金に輝く木槌に姿を変えていた。これが黄金級の勇者ユグドラシルの本当の姿ということか。
アグルがその手に取ると、輝きは終息していく。
「それでは、今から作業に取りかかりますね。丸一日もあれば作業は終了しますが、キョースケさんにはここにいてもらいます」
「えっ、俺? そんな剣作りとか手伝ったことないけど、いいのか?」
「手伝いはいりません。ってか、邪魔です」
うおっ! 言い切られた。
「キョースケさんには魔力を込めるのをお願いしたいんです。製作段階からあなたの魔力を込めることで、どんな高出力の魔力でも、あなたの魔力に耐えられる剣になりますから」
「成る程、俺は魔力担当な訳か……了解」
こうして、俺達は作業に取りかかる。
待ってろよ、ハル。
ハルの復活までもう少しだ。




