ユグドラシル
俺はシフォンと鎧の女の人を連れて、連続テレポートを開始する。
黄金都市、ユグシルに到着した。
「おい、どうした? なにがあったんだ? 男前な兄ちゃんが、一番重症そうだな」
実は女性なのだが、今はそれはどうでもいいだろう。
「ちょっと、ドラゴンにやられて気を失っているんです」
「ドラゴン? とりあえず、子ども二人じゃ大変だろ。俺が保養所に連れてってやるよ」
門番の兄ちゃんが親切に申し出てくれた。
ありがたい。
それにしても、門番の兄ちゃんにドラゴンといったときに『?』という顔をされた。
どういうことだろう?
まぁ、今は保養所というところにいくほうが優先か。
保養所は、ちょっとした規模の病院くらいの大きさがあり、ベッドもあって助かった。
あとは任せて大丈夫だろう。
「じゃあ、俺は仕事に戻るから」
「ありがとうございました。……それじゃあ、シフォン、俺達はじいちゃんに報告にいくとするか」
「そうね。今回死人が出てもおかしくなかったわ。一言文句を言ってやらないと!」
シフォンも若干ご立腹だ。
俺達が、総合案内所に行くと、じいちゃんが待っていた。
「どうじゃった?」
「じいちゃんの言っていたような動物はいませんでしたよ。いたのは狂暴なドラゴンだけです」
「ドラゴン? 地竜のことかな。それだったらワシのいった通りではないか」
「へっ?」
あの竜は、この世界では地竜というのか。
ドラゴンとは言わないみたいだ。
この世界では、ドラゴンも動物に含まれているらしい。
翼のあるのが空竜、翼がなく森や山で暮らすのが地竜、海で暮らすのが海竜と言うそうだ。
強さには個体差があるが、普通の個体でも魔物や魔人を凌駕する強さだという。
とりあえず、生態系の頂点に君臨するのは間違いないだろう。
というか、そういうことなら尚更言っといてもらわないと困る。
俺達がいなかったら、全滅していたところだ。
だが、じいちゃんに悪びれた様子はない。
「それで、その地竜はどうした? ひょっとしてお前たち負けたのか?」
「何とか捕まえましたよ!」
「何? 捕まえた?」
俺は事の経緯を話す。
「ほほう、坊主、見かけによらず、なかなかやるのぉ」
見かけによらないは余計だ。
そういえば普通の魔導師は、樽二つ分くらいの亜空間作成が限界だった。周りに魔導師はシフォンしかいないし、すっかり忘れていた。
普通に言ったら不味かっただろうか?
「ちょっくら、ここに地竜を閉じ込めとる亜空間に続く入り口を作ってくれんか?」
「良いですが、何をするんです?」
「確認じゃよ」
俺が亜空間への入り口を作成する。
すると、じいちゃんが飛び込んだ。
って、マジで!
「ちょっと、恭介、どうするの!」
「どうするといったって」
こんな事態は想定外だ。
亜空間でドラゴン……こっちの言い方なら地竜か。そいつと二人っきりといったら自殺行為も良いとこだ。
そもそも、亜空間で人は生命活動ができるのかも疑問だ。
俺達があたふたしていると、じいちゃんが亜空間から出てきた。
「騒がしいの」
あんたのせいだよ!……と思った俺の心の叫びは間違ってはいないはずだ。
「今回の地竜、なかなかの大物じゃの。魔物に換算すると、下手すると魔獣クラスでも最高位じゃ」
確か、前にラルフさんから聞いた話では、魔物は弱い順に魔物→魔人→魔獣→魔王だったはずだ。
今回の地竜は魔獣クラスに匹敵するって、どんだけこのじいちゃんは俺達に無茶をさせたんだって話だ!
だが、そんな地竜と亜空間で会ってきて無事でいるということは、このじいちゃんも只者ではないのだろう。
よくみると、じいちゃんは手に光るものを持っていた。
「じいちゃん、それは?」
「地竜の鱗じゃよ。ワシの仕事にどうしても必要での」
「!」
今の間に剥ぎ取ってきたっていうのか!
本当に何者だ?
「というか、そんな強いなら初めから自分で狩りにいったら良かったじゃないですか!」
「そうしたいのは山々なんじゃが、ワシが近づくと地竜の奴が逃げ出すからの」
どうしよう。
冗談に聞こえない。
俺が冷や汗を流していると、じいちゃんが、戦利品の鱗の質を確認しつつ、俺に話しかけてきた。
「助かった。これでようやく仕事に戻れるわい。これだけ上質な鱗を手に入れさせてもらったし、その地竜を坊主が亜空間で飼っているってことは、これからのためにも良い関係を築いとったほうが良さそうじゃな。約束の小銀貨のほかにも礼をせんとな。坊主の持っている、勇者の核を見せてみい。ワシが直してやる」
えっ! 勇者の核? それってハルの残した宝玉のことだろうか?
何で俺がハルの残した宝玉を持っているのを知っているんだ?
しかも、治す?
「じいちゃんは一体何者なんだ?」
俺は今度こそ声に出して尋ねた。
もはや、敬語だとか気にしていられない。
「? そういえば自己紹介はまだじゃったな。……ワシは、ユグドラシル。黄金級の勇者、ユグドラシルじゃ」




