依頼
俺とシフォンは、黄金都市ユグシルを散策したあと、門のところで謎のじいちゃんを待った。
「おお、お前達、ちゃんと来てくれたようだの」
「じいちゃん!」
昼間と変わらぬ風貌でじいちゃんが登場。
気配もなく、突然現れた感じだ。
「さっそく、依頼の内容についての話をしてもいいかの?」
「構いませんよ」
「結構。ワシの依頼というのは、このユグシルをでて、山脈にいく途中にある森で、ある動物の捕獲又は討伐をしてほしいということなのじゃ。いつもは山の中腹から山頂にかけておるのじゃが、森まで降りてきたみたいでの」
動物の捕獲又は討伐か。
簡単そうな仕事でよかった。
俺は2つ返事で了承することにした。
「任せてください」
「おお、本当か? いや、助かる。仕事に必要な材料も採れるし、良かったわい♪ 一応、念のために他にも何人かに声をかけとるから、必要そうなら皆で挑むとよいぞ。一目見れば、そいつがターゲットだとわかるはずじゃ」
たかが動物相手にすごい念の入れようだ。
それだけ、仕事に必要な物なのだろ。
だが、魔導や剣もあり、人間の優位性の高いこの世界。たかが動物にそう遅れをとる人間も多いとは思えない。
ひょっとしたら、早い者勝ちってことになりかねない。
そう思い、俺たちは翌日、朝早くに町を出りことにした。
「うう~、眠い……」
「ほら、シフォンいくぞ!」
寝ぼけているシフォンを連れて、連続テレポートを開始する。
少し探りを入れたが、テレポートはこの世界でも一般的ではないらしい。
これで俺たちが一番乗りのはずだ。
場所は簡単に判明。
もうすでに他の奴が狩りを始めているようで、大きな戦闘音が響いていたのだ。
「俺らが一番乗りだと思ってたのにな」
「まだ戦っているなら、私たちにもチャンスはあるはずよ♪」
「そうだな」
俺はテレポートを続ける。
そして、さっき音がした場所に到着。
……どういうことだ?
人が倒れている。
鎧や肩当てで武装した数人が、息も絶え絶えに横たわっていた。
とりあえず、回復の光を当てて様子を聞いてみることにする。
「大丈夫ですか? 何があったんですか?」
「奴に気を付けろ」
それだけ言って、鎧をきたおじさんは気を失った。
息はしているし、回復の光も当てたから命は大丈夫だろう。
少し遠くで、また戦闘音がした。
「シフォン、いくぞ」
「了解」
俺はフィジカルブーストを最大稼働にして走り出した。
「マジか!」
走りついた先で俺が見たのは、一匹の巨大なドラゴンだった。
巨大な狼のような体躯をびっしり覆う鱗。
今、ドラゴンは数人の冒険者のパーティーを追い回している。
冒険者の一人が魔導を使えるようで、火の魔導を放つ。ファイアショットのようだ。
効くのだろうか?
ゲームとかでは、よくドラゴンには火が効かないようなイメージがある。
俺の予想は当り、ドラゴンは全く気にする様子もなく突進して、その場にいた全員を弾き飛ばした。
ほとんどの奴が着地際に受け身をとれていたが、一人受け身を取り損ねて地面に叩きつけられた奴がいた。
ドラゴンもそれに気づく。
「恭介、あそこ!」
「わかってる! レーザーショット!」
俺が光の魔導で、ドラゴンを攻撃してみるが、貫通どころか傷もついてないようだ。
だが、それも想定内。
俺はレーザーの照準をそのままドラゴンの顔に移動。
狙いは眼だ!
「ほい、命中!」
ガォォァアアァ
初めてドラゴンが怯んだ。
けど、ほとんどダメージにはなっていない。
メッチャ、こっちを睨んでいるし……。
怒らせただけだったりして?
ドラゴンは四つん這いの状態で、俺ににじり寄ってくる。
その背中には翼がなく、まるで角のある狼のような動きだ。
「ここは俺に任せて、シフォンはあいつらのフォローにまわってくれ!」
「大丈夫なの?」
「死なない程度に頑張るさ。ダメそうなら逃げる!」
格好とか気にしていられない。
命のほうが大事だ。
俺の言葉をきき、シフォンが倒れている奴に駆け寄り、アイスドールで担ぎ上げると避難を開始する。
さて、あとはこのデカ物をどうするかというだけだ……これが一番の大問題だがな!
ドラゴンは、今は四つん這いの状態だが、それでもトラックくらいの大きさはある。
「いくぞ、ファイアレイブン!」
とりあえず、様子見の火の魔導を放ってみる。さっきの奴らとのやり取りを見てても多分効かないと思うけど。
ガァァァ
やはり、固い鱗に阻まれ、全然ダメージにはなっていない。
他のレイブンシリーズも試してみる。
「ロックレイブン!……ウインドレイブン!……アクアレイブン!」
すべてのレイブンがドラゴンの固い鱗に弾かれる。
まるで、高位の勇者を相手に戦っている気分だ。
まるで、高位の勇者……と?
「これって、いい練習になるんじゃないか?……」
俺はドラゴンに対峙する。
こっちは、これから神話の世界からいたような白金級の勇者を相手にしようというのだ。
デカイだけの蜥蜴に負けているわけにはいかない!
俺の新しい魔導の練習台になってもらおう。
ドラゴンは、俺にも突進攻撃を仕掛けてくるが、フィジカルブーストで強化された動体視力には、ハッキリとその姿を捉えている。
短くテレポートし、回避する。
そんじゃ、まずは一発いきますか。
「ファイアレイブン、levelMAX……朱雀!」
ドラゴンと大きさ的には遜色ない火の鳥が、飛翔する。
避けきれずに、命中する。
絶叫とともにドラゴンが炎に包まれた。
苦しくもがくが、全然致命傷ではない。
せいぜい動きを止めたくらいだ。
なら、次だ。
「アクアドラゴン、levelMAX……青龍!」
巨大な水の龍のうねりが、ドラゴンを飲み込み、ドラゴンの巨体を木々に叩きつけていく。
ドラゴンは、少しダメージを受けてくれたようだ。
怒りに任せ、あさっての方向に咆哮を撃ちまくっている。
その一つ一つが家の二、三軒は楽に吹き飛ばせそうな一撃だ。
ドラゴンは少し落ち着きを取り戻すと、こちらを向き、咆哮の準備をする。
ドラゴンの咆哮から逃げたい衝動を抑え、次の魔導を試す。
「ロックタートル、levelMAX……玄武!」
俺とドラゴンの間に巨大な亀の甲羅が盾のように出現。ドラゴンの咆哮を防いでしまった。
「よし、いける! けど、怖ぇぇ」
勇者を相手にするなら、奴らの奥義を防ぐ手段が必要になるはずだ。
マリアとロンギヌスの奥義『神の刺突』。
あれを防げるかはわからない。
でも、ただ負ける気はない!
ドラゴンの咆哮を防げたのは、少し自信になった。
「これでどうだ! ウインドタイガー、levelMAX……白虎!」
巨大な大気の塊が、振動とともにドラゴンに叩き込まれる。
ドラゴンが、大きめの絶叫とともに地面にめり込んだ。
まだ息はあるが、すぐに動ける感じではない。
俺が使える魔導じゃ、止めにはいたらないか。
どうする。
「そうだ、あれをやってみるか」
俺は空間魔法で、ドラゴンの後方に亜空間とその入り口を作成。
「お前はここに入っとけ! ウインドタイガー、levelMAX……白虎!」
もう一発、白虎を叩き込み、ドラゴンを亜空間にブチ込んだ。
「どうだ?…………」
辺りが静かになる。
終わった。
ドラゴン、捕獲完了だ。
動物を狩りに来て、ドラゴンを捕獲するってどうなんだろうか?
とりあえず、死人が出なくて良かった……ということにしておく。
ところで、じいさんの言っていたターゲットってどうなったんだろうか?
そんな疑問が残った。




