新町長
ハルの復活の可能性があることが判明してから二日後。
俺は午前中に、ミリハイムの町の住人達に池のある広場に集まってもらっていた。
この町の町長を決めるためだ。
もう、住人達みんなには町長を決めるための集まりをすることは事前に連絡してあったので、自然と集合してくれている。
「みなさん、今日は集まってくれてありがとうございます。今日はこのミリハイムの町の新しい町長を決めたいと思います。では、さっそく候補者のかたどうぞ」
俺の辿々しい司会のなか、候補者が入場。
第一候補者は、ミリハイム村で元々村長だったラルフさん。
俺が造った新しい街並みの美しさに感激、さらに村の窮地まで救ってくれた俺への感謝の宴会で飲み過ぎ、おつまみ確保のため村の備蓄食糧にまで手を出してしまった穀潰し。
第二候補者、リチャード。
自分が村長を務めていた村の存亡の危機を救うために、ミリハイム村の子どもや娘を変態貴族に売り飛ばそうした極悪人。
第三候補者、レオナ。
上記、二人のおっさんのような前科もなく、リチャードの娘として生を受けるが、奇跡的に可愛く育ち、自分達の立場を理解した上で、行動に移すだけの決断力もある聡明な十八歳の女の子。
…………以上が、俺主観が籠った紹介だ。
文句があっても受け付けん!
だが、いろいろ事情もわかっている住人達にとって、今更説明は要らないだろう。
「じゃあ、これから決を取ります」
俺の言葉に住人達は、静かに待つ。
「レオナがいいと思う人ぉー?」
「「えっ?」」
ラルフさんとリチャードが、何でレオナから聞くんだという感じで顔を見合わせている。
えっ? 何で第三候補から聞くのかって?
だって、ほらめんどくさいじゃん!
見渡す限りの住人達が、レオナを承認している。
これは、レオナで決まりだろ。
レオナは一歩前に出て挨拶をする。
「私が新しい町長になったレオナです」
通りのいい、聞きやすい声色だ。
「私は、ご存じの通りこの町の出身じゃありません。でもこの町が好きです。…………この町は、今はこれだけの住人しかいないし、こんな辺境にあるから生活するのも大変なことも多いかもしれないけど、可能性だけなら王都や神都、聖都にだって負けないと思ってます。この町をより良くしていくために、みなさんの力を貸して下さい。お願いします」
レオナの言葉が終わる。
「…………」
いい演説だった。
思わず、この子になら町を任せても大丈夫だという想いを抱かせるには充分だ。
住民達もそう感じてくれていたらいいけど。
……顔を見ていたら大丈夫そうだ。
この良い空気の中なら、あいつの紹介も行けるんじゃないか?
「ここで、みなさんに新しい住民の紹介があります。いいですか?」
「いいけど、誰のこと?」
「出てこい、雫」
<……呼んだ? お兄ちゃん?……>
「魔物の雫です。今日からこの池に住んでもらおうと思ってます」
池の水面に直立し、ペコリと挨拶する姿は今日も愛くるしい。
そんな雫に対し、村人の反応は。
「魔物だーーーー!!!」
雫の存在を事前に知っていたラルフさん以外、阿鼻叫喚の地獄絵図だった。
やっぱこうなったか……。




