町長候補
俺は一度、検索の魔法を終了すると急いで村に戻る。
家に帰ると、シフォンが迎えてくれた。
「恭介、そんなに慌ててどうしたの?」
「俺たち、ミリーを助けに行く前にやらなきゃいけないことができたぞ!」
「ん?」
シフォンに事の詳細、ハルの復活の可能性があることを話す。
セクハラを受け続けていたシフォンは嫌がるかと思いきや、意外なほど喜んでくれた。
実は仲が良かったとか?
「それはいい情報ね。だって、あの変態勇者を私の手で殺すことが出来るチャンスってわけだしね♪」
ハル、復活した日が命日になるかもしれないぞ。
まぁ、そのときは自業自得だな。
俺たちは、すぐにでも行こうと思ったが、どのくらいの日数がかかるかはわからない。
とりあえず、ラルフさんの家に挨拶に行くことにした。
家に行くと、ラルフさんの奥さんが優しく迎え入れてくれた。
ラルフさんとリチャードは、まだ飲み疲れているようだ。
リビングに当たる場所でぐったりしている。
「おお、キョースケ、いきなり来て、どうしたっうえぇぇ!」
ラルフさん、あなたの方こそ、どうした!…って感じになってますが?
二日酔いだな。
いいご身分だ。
というか、村長格の人間がこんなで、この村の今後は大丈夫なんだろうか?
リチャードにしても、自分の村が作物の不作やらで追い込まれたときに、ミリハイム村を襲った前科がある。
このままじゃ、せっかく発展しそうなこの村のためにならないような気がする。
そう思っていたときに、バンって、いきなりドアが開く。
ドアの向こうに女の子が見えた。
女の子といっても、今の俺よりは年上だろう。
十八歳くらいだろうか?
ミリハイム村の元の住民じゃないってことは、リチャードたちの村から来た住民だろう。
「あっ! あんた、この村の家とか城壁とかを造った人よね。あんたもいるんなら、ちょうどいいわ」
俺を見つけると、近寄ってきた。
言動そのままに気の強そうな目。
近くで見ると、結構可愛い。
まさか、こんな凄い街並みを造った俺に惚れた……ってことはないよな。
せいぜい、自分達をこの村に受け入れてくれて感謝してるってことか。
まぁ、感謝されて悪い気はしない。
さあ、感謝の言葉をどうぞ。
「あんた、バカじゃない?」
「へ?」
浴びせかけられたのは罵声だった。
どういうことだ?
「この家々を造ったのは、あんたなんでしょ? どういうつもり?」
「何が?」
「はあ、あんた、バカ? こんだけいっているのに、わからないっていうの?」
わからない。
だって、俺、罵倒されているだけだし。
「例えば、あそこに住んでるお婆さん。足が悪いんでしょ? 二階建てにしてどうすんの? 意味ないでしょ」
「成る程、確かに平屋のほうが生活しやすそうだな」
いっそのこと、バリアフリーにしてもいいかもしれない。
「でも、よく気が付いたな? あの婆ちゃん元々、ミリハイム村の人だろ?」
「当然よ! お世話になってんのはこっちなんだから他の人に迷惑をかけないように、注意をするのは勿論、お年寄りの様子を気にするのも」
「お前、名前は?」
「リチャードの娘のレオナよ」
リチャードの娘!
レオナは意外に可愛く聡明そうだ。
言ってることも、まともだし。
あのアホ親父、リチャードの娘とは到底思えない。
「なあ、レオナ。お前、この村……いや、ボチボチ正式に町といった方がいいかもしれないな。レオナ、このミリハイムの町の町長をしてみないか?」
「いいの?」
「いいかどうかは聞いてみないとわからないが、あの人たちよりはマシそうだしな」
俺がクイッと親指で後ろを指す。
そこでは、今もラルフさんたちがオエオエと、二日酔いで苦しんでいる。
「えっとね、他にも変えて欲しいところがあるし、宿屋もほしいし、店とかをやりたがっている人とかもいるし――」
次々と町の改造プランを捲し立てるレオナ。
それは、実際に聞いたり見たりした町の人たちの意見なのだろう。
俺はとりあえず、住居を造ったが、実際に住んでみて、色々変更した方がいい部分や追加した方がいい施設も出てきたのかもしれない。
「わかった、わかった。あとでゆっくり話を聞くから」
とりあえず、ラルフさんたちに旅立ちの挨拶をしたあとに、レオナを俺たちの家に案内することにした。




