新ミリハイム村の住人たち
俺は、魔物の女の子、雫を連れてミリハイム村に行こうと思ったのだが、1つ問題があった。
雫が、この泉から離れられないと言うのだ。
見た目は、ほとんど人間に近い雫だが、所々にあるヒレや鱗から考えると、やはり水棲系の魔物なのだろう。
少し困った。
ここから、ミリハイム村までは直線距離で2キロほど……やるしかないか。
俺は強行手段にうって出る。
それは治水工事だ。
この泉から、ミリハイム村まで治水工事をして繋ぐ。そのままミリハイム村の中心に大きな池を造っても良いと思う。
ラルフさんにも事情を話して許可を貰わないといけないな。
雫は無害で、池を村に造ることで、農作物の水やりが少しでも楽になれば良いじゃないですかという感じで説得してみよう。
ただし、いくら直線距離で2キロほどといっても、そこは平地ではない深い森の中。
治水工事は大変そうだ。
楽な作業じゃないだろう、そう思っていた。
しかし、俺が地の魔導で地面に干渉すると、驚くほど簡単に水路が出来上がっていく。
手も汚れることもないし、メッチャ便利!
むしろ、魔力で土や岩を生み出さなくていい分、楽なくらいだ。
この調子でいけば、昼過ぎくらいにはミリハイム村の近くにまで水路を伸ばせるだろう。
村に池を造るのは、勝手にして怒られても嫌なので、ラルフさんに話をしてからにすることにする。
あとは、魔物である雫がミリハイム村の人たちに受け入れられるかってことだが……。
<……どうしたの? お兄ちゃん>
俺の作業を水面から見ていた雫が、可愛く小首を傾げる。
こんな純真無垢そうな子にお兄ちゃんって呼ばれる日がくるなんて!
ロリ属性のない俺でもギュって抱きしめたいくらい可愛いと思う。
雫は、こんなに可愛いのだ、大丈夫だろ!
可愛いは正義だ!
俺は鼻唄混じりに、水路の整備を続けた。
予定通り、昼近くまでなると、ミリハイム村の近くまで水路を伸ばすことができた。
木々の向こうに村を囲む城壁が見えてきた。
「ようやく、村が見えてきたな。そろそろ、ラルフさんところにいくか」
俺は、ミリハイム村を囲む城壁の門の前までテレポートで移動する。
こうして、改めて見ると、この規模の村には不釣り合いなくらい立派な城壁だ。
昨日の戦いでも傷らしい傷もなく、立派に役割を果たしてくれた。
我ながら良い仕事をしたと、自画自賛したくなる。
「おっと、見とれてるい場合じゃないな」
俺は、門をくぐり抜け、ラルフさんの家に向かった。
ラルフさんは丁度家の外にいて、俺の姿を見つけると、駆け寄ってきてくれた。
ひょっとしたら、俺を心配して待っていてくれたのかもしれない。
「キョースケ、大丈夫だったか!」
「ええ、拐われていた皆も無事ですよ。シフォンとともに、こっちに向かっているところです」
「そうか、無事なら良かった。キョースケ、お前も怪我とかはないのか? 遠くのほうで大きな地面の揺れを感じたからな、皆で心配してたんだ」
あっ、その揺れって俺が使った地震level3のことだろうな……こっちまで少し揺れていたのか。
予想以上に凄まじい威力と規模だ。
今後、使い所は要注意だな。
「まぁ、何て言うか、その揺れって、俺のせいなんですよね。調子に乗って、リチャードの村を壊滅させちゃいましたから……今はあの村に残っているのは瓦礫や残骸だけで、家の一軒も残っていません」
「はっ! 壊滅……あの規模の村を壊滅させたのか。百人以上の村人がいたはずだが」
「村の人たちは無事ですよ。あのリチャードってのも少し痛い目にあってもらったんで、もう悪さをしようって気はないはずです。ただ、監視と労働力の確保をかねて、あいつらもミリハイム村に置いてほしいんですがどうでしょうか?」
「うちの村人が何て言うか……まぁ、村の子どもや娘たちを救ったお前の頼みだ。他の村人が何か言ってきたら説得してやるさ。だが、住む家や食い扶持はどうする? 空き家はせいぜい数軒だし、食料も採取や狩りだけでは足らんかもしれんぞ。元々うちの村は自分らの食う分の作物しか作ってないからな」
ミリハイム村の元々の住民は五十人に満たない。そこにリチャードたち百数十人を受け入れるのだから、準備が足りないと言われても仕方ないだろう。
だが、俺にも考えがある。
「まず、住む家ですが、ミリハイム村のすべての家を建て替え、戸数を増やします。そして、村の中央に池を作り、水源とします。さらに城壁のさらに外側に城壁を作り、村の規模を拡大して、その中に畑を作り作物を育てます。それらの工事は俺が魔導で下準備はしますし、取れた作物は俺が空間魔法で倉庫を作るんで、その中に入れておけば腐ることなく新鮮なまま保存できますよ」
「つまりは、キョースケ、お前の魔導頼みの方法な訳だが、お前は大丈夫なのか?」
普通の魔導師の魔力では、こんなことは無理だからだろう。ラルフさんが心配して聞いてくるが、俺がミリーから受け継いだ魔力は莫大だ。
未だに、底が見えない。
「任せてください。……そして、ついでといってはなんですが、もう一人受け入れてもらいたい奴がいるんです」
「こうなれば、誰が来ても一緒だろ。連れて来ればいい!」
半ば、諦めたようにラルフさんが言う。
よし、ラルフさんの許可はもらった。
あとは雫を紹介するだけだ。
俺はラルフさんを連れて、雫の元に行く。
「こいつが俺の紹介したい奴です♪」
俺の言葉をきき、雫はキョトンとしているし、ラルフさんは慌てている。
「えっ? キョースケ、こいつは魔物じゃないか!」
「そうですよ、何か問題でも?」
俺が平然と肯定するのを聞いて、ラルフさんは、さらに驚いたようだ。
「魔物は人間に危害を及ぼすんだぞ!」
「俺は、今のところそういった類いの魔物には会ったことがないですが、そういう奴もいるのかもしれませんね。でも、この子が危険そうに見えますか?」
「うっ! そう言われると確かに無害そうに見えなくもないな。というか……可愛い……」
雫のクリクリお目めのパチクリ攻撃は、確実にラルフさんに効いている。
顔が、キューンって感じになっている。
ここで、もう一押し。
「人間を助ける魔王がいるんですから、魔物と共存する人間がいてもおかしくはないですよね、ラルフさん? しかも、この子が生まれたのは、うちの魔王ミリーヒルクライムの魔力溜まりって話ですし」
「う~む、そうなのか……」
ミリハイム村を作った人たちが、うちの魔王少女ミリーに助けられたという事実を全面に押しだし、説得を試みる。
「わかった、この子もうちの村に住むことを許可しよう!」
ラルフさんは、かなり悩んだようだが、了承してくれた。
かなり、自棄っぱちっぽかったが、ラルフさんは信用できる人だ。
一度口に出した言葉を引っ込めるということは、きっとしないだろう。
自分達を殺そうとした奴らや、魔物の女の子まで受け入れるなんて、ラルフさんはなんて心が広い人なんだ。
かなり押し付けがましくお願いしてしまった自分の仕業は置いといて、これらのことはラルフさんの人徳のなせる技だと強引に片付けておく。
けっして、俺は脅したわけではないしな。
「でも、本当にこの魔物の子は可愛いな」
ラルフさんは、もうすでに雫の魅力にデレデレだ。
というか、このおっさんデレ過ぎだろ!
まぁ、この様子なら大丈夫だろ。
さて、新しいミリハイム村の住人を受け入れるための準備をボチボチ始めなければならない。
忙しくなりそうだ♪
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