おしおき
俺は、ミリハイム村を襲った襲撃者たちからの防衛戦(?)を終了する。
結果的に、最後に使用した火の魔導で生み出した巨人は、ものの十数秒で消えてしまった。
うちの魔王少女ミリーから受け継いだ魔力埋蔵量は莫大だが、今の俺が運用できる魔力の一回使用量がそのくらいだということだろう。
まぁ、十分な威嚇になったし良いとしよう。
襲撃者たちは腰砕け状態だ。
「俺たちのこと、こ、殺すのか?」
ほとんど全員が完全に怯えた眼で、俺を見ている。
心優しい俺に対して失礼な。
「う~ん、まぁ何人かは死んでもしょうがないかと最初は思ったけど、どうしようかと思ってる」
正直、色んな魔導も試せたし、十分に暴れることができて気は済んだし、命までとる気はなかった。
だが、それを言ったら、こいつらが調子に乗るとも限らない。
「おい、そこの髭!」
俺に呼びつけられ、全裸で氷漬けのおっさんの顔が明らかに引きつっていく。
生殺与奪の権利を奪われた上で、最初に指名されたのだ。
そりゃ、心穏やかじゃいられないだろう。
「俺……いえ、私めに…何のご用でしょうか?」
おっさんは、最初の頃の俺への罵倒が信じられないくらいの低姿勢だ。
「お前、名前は?」
「……ロナードです」
「ふーん、ロナードね。良い名前じゃん。よし、ロナード。お前は夜が明けたら、俺と一緒にお前らの村までいくぞ」
「何で、俺たちの村のことを!?」
ロナードは、自分達の村のことを話題に出され驚いているようだが、わざわざネタばらしをしてやる必要もない。
情報がない時、人は更なる恐怖を生むし、黙っといてみよう♪
「そんなことはどうでもいい。俺と一緒にお前の村まで行って、この村から拐った子供や娘たちを返してもらう」
「……そこまで、わかっているのですか」
ロナードは観念したように項垂れている。
「拐った子供や娘たちが無事なら、お前たちの命も保証しよう。ただ、無事って意味はわかるよな? 命は当然ながら、貞操や体も無事でなければ、こうなるぞ」
やはり、言葉だけでは少し弱いだろうと思い、ここは一発、魔導を披露することにする。
炎の巨人に引き続き、試してみたい魔導、パート②
それは光の魔導だ!
流石に、他のレイブンシリーズみたいに鳥の形にすることは出来ないようだ。
魔力で光を生み出すことは出来るが、俺のイメージ力では鳥の形をした光というものが想像できないからだろう。
仕方ないので、近くの木にレーザーポインターのように撃ってみる。
無音で短く、光の筋が走った。
「!」
「……へっ!」
光を生じさせて、それを集束させたレーザーは、大人の腰回り以上はある木を意図も簡単に貫通する。
俺としては、幹に焦げ目を少しつけるだけのつもりだったんだが…………光の射線上に、誰もいなくて本当に良かった。
ビビらすつもりが、あまりの威力に俺のほうもビビってしまった。
結果的に俺もビビったが、相手をビビらす効果のほうも絶大だったようだ。
「い、命だけは助けてください」
自分たちのしようとしたことを棚に上げ、涙ながらに訴えてくる。
だが、全裸で氷漬けのおっさんの涙なんて、気持ちの良いものではない。
みっともないだけだろう。
……というか、拐われたみんなが無事なら、命は保証するって言っているのだ。
少しは俺の言葉を信用して、悪魔を見るような目で俺を見ないでほしいものだ。
向こうには、シフォンもいるし、滅多なことにはならないはずだ。
しかし、北欧系の大人しそうな外見に騙されて、シフォンにちょっかい出したりする馬鹿がいたないかが心配だ。
ロナードたちには、今晩はとりあえず、俺が地の魔導で作った小屋に全員入っててもらうことにする。
ラルフさんたちへの謝罪と対応については、またあとでで良いだろう。
翌朝、俺はロナードを連れて連続テレポートでロナードたちの村へと移動する。
ロナードには、布を巻いてもらっている。
流石に着せる服はないが、最早、おっさんの裸は見たくない。
俺たちは十分も立たずにロナードたちの村の近くに到着する。
俺たちが行くと、村のほうから悲鳴が上がる。
俺の予想通り、野太い男たちの悲鳴が……。
行くと、そこではシフォンの氷の魔導アイスドールが、大暴れしていた。
「どうしたんだ、シフォンは?」
俺は近くにいた、ミリハイム村から拐われた娘の一人、ピノに声をかけた。
他の子達もいるし、今のところ、見た目的には元気そうだ。
「シフォンさん、あたしが男たちの言うことを聞かず、男たちに殴られそうになったんで、男たちに対して怒ったの。そしたら、いきなり氷の化け物が現れて」
ちょっと混乱しているようだが、大体事態はわかった。
拐った娘の中で、かなり上物のピノを品評会と称して裸にむこうとしたところ抵抗に合い、シフォンの逆鱗に触れ、この有り様らしい。
シフォンも俺と同様、今までストレスを溜め込んでたのかもしれない。
好きにさせてやるか。
「アイスショット×5!……からの、アイスジャイアント」
「あ~あ、シフォンの奴、本気だな」
シフォンの求めに、氷の巨人が顕現する。
以前俺と戦った時のよりは二回りほど小さいが、ただの村人たちがどうのこうのできる相手ではない。
こりゃ、この村、今日で終わりだな。
そこから暫くして、漸くシフォンのストレスも発散できたみたいだ。
「恭介、遅いじゃない!」
俺の姿を見つけて、シフォンは文句を言っているが、その顔は晴れ晴れとしている。
とても誘拐された奴の顔じゃないな。
「気は少しは済んだか?」
「まぁ、少しはね」
村の七割方の家々を破壊した、シフォンの言葉にロナードは驚愕している。
今更ながらにミリハイム村に手を出した事を後悔しているようだ。
もう遅いけどな。
半壊した家屋の物陰から、ここの村の人間とおぼしき人たちが出てくる。
「いったい、何が起こったんだ?」
前に見た、村長らしき人物が出てくるが、全然状況を飲み込めていない。
「まぁ、簡単にいうと、お前らの悪事は失敗だったってことだろうな」
「なんだと! おい、ロナードどういうことだ!」
「こちらのお方の言う通りです。リチャード様」
成る程、この村の村長はリチャードと言うのか。
リチャードは、せっかくロナードが説明してくれているのにも関わらず、納得がいっていないようだ。
顔を赤くして怒っている。
「ランド!」
「ここに!」
リチャードの呼び掛けに、村人の中から偽者の勇者の使い手ランドが、鎌を手に出てくる。
「あいつらをまとめて始末してしまえ!」
それはいくらなんでも無理だろ。
この場には俺とシフォンがいて、ランドは
偽者の使い手。
話にならないはずだ。
だが、そんなことを全く思っていないのか、ランドは悠然と俺たちに迫ってくる。
「リチャード様の命令だ。死んでもらう」
鎌をかざし、俺たちに対してそんなことを言うってことは、ランド、こいつも馬鹿の一人なのだろう。
いや、こう見えて実は強いとか?
俺は試しに、地の魔導を放ってみる。
「……ロックショット」
ランドの鎌を弾くだけのつもりで放った岩の塊は、鎌を弾くことなく、鎌の刃をへし折ってしまった。
「俺のデスサイズが……」
「へっ?」
ランドが、自分の持っていた少しだけ大振りなだけのただの鎌の無惨な姿を見て愕然とする。
本当にデスサイズって呼んでいたのか……。
名前を付けるくらい愛用していたのだろうが、……デスサイズだなんて、名前負けも良いところだろ。
「で、俺たちをどうするって?」
「ヒィィィ!」
俺の顔を見るなり、悲鳴を上げるランド。
完全に戦意喪失である。
だが、リチャードは、まだ逆転の一手がないか模索しているようだ。
村を半壊にまで追い込まれて状況を飲み込めていないとは本当に救いようがないな。
ああ、めんどくさい!
今まで使ってこなかった、うちの魔王少女ミリーから受け継いだ能力を使う。
この百人規模の村なら、噴火や津波は大袈裟だろ?
今回は地震でいく、levelは……3くらいか?
「お前ら、今すぐ何かに掴まっとけよ! 俺もどうなるかわからんからな!」
(地震、level3)
地響きと共に、凄い揺れに襲われる。
氷の巨人の暴挙にも持ちこたえた、残った家屋がすべて倒壊する。
勿論、リチャードの家もだ。
「わ、ワシの家が……!」
崩れ行く家をみて、ようやく現実を見たらしい。
だが、油断は禁物だ。
俺は、へたりこむリチャードの足に向かい光の魔導を放つ。
レーザーは簡単にリチャードの足を貫通する。鉛筆の芯ほどの穴が開くが、リチャードがそれに気付いたのは少し経ってからだった。
「ぎゃぁぁ!」
「うるさい」
俺は、リチャードの足にもう一個穴を開ける。
リチャードは涙を流しながらも、激痛を必死で堪えて俺を見てくる。
よしよし、ようやく話ができそうだ。
俺は、回復の光でリチャードの足を治してやる。
痛みが引くと、リチャードは少しだけ楽になった顔をするが、先程までの威勢はどこにもなかった。
「俺の言いたいことは唯一つだ。俺の言うことを聞かないと、家の次は、お前の命を貰うことになるぞ♪」
「……わかりました。あなた様に従います」
リチャードは俺に頭を下げる。
こうして、ミリハイム村の問題は一つ片付いた。
読んでくださった方いましたらありがとうございます。
至らないところも多いですが、ご意見等ありましたら、よろしくお願いいたします。




