村の戦いの決着
俺は今、うちの魔王少女ミリーに所縁のあるミリハイム村の外側にいた。
ミリハイム村の村人を拐い、残った村人を殺しに来た襲撃者の相手をするためだ。
ミリハイム村の周囲は城壁並みの壁で囲んであるし、唯一の入り口も岩の壁でふさいだ。
村の中は、当分大丈夫だろ!
これで、外の奴らとゆっくり遊べるというものだ。
俺は、適当な方向に向かい魔導を使う。
「ファイアレイブン!」
火の鳥の形をした魔導が、ゆっくりとした軌道を描きながら飛び、物陰に隠れた襲撃者たちの姿を炙り出す。
「どういうことだ? 火が襲ってきたぞ。あんな貧乏村に魔導師がいるのか!」
「アッチィィ」
「ダメだ! 村の回りが壁で囲まれてて、村の中は入れねぇ!」
様々な声が聞こえてくる。
良い具合に混乱してくれているようだ。
どうやら、俺のいる場所の近くに指揮している奴がいるのかもしれない。
わらわらと襲撃者たちが集まりだしてきている。
そろそろ、良い頃合いか?
「ファイアウォール!」
俺は篝火代わりに、背後に炎の壁を出現させてやる。
「ほら、これで少しは動きやすくなっただろ? お前ら、かかってこいよ♪」
炎に照らし出された俺の姿を見て、奴らは落ち着きを取り戻しつつあった。
今の俺は異世界に来て、十代半ばくらいに若返っている。
有り難いことに、舐めてくれているのだろう。
ナイフや鉈を持って、武装というにも烏滸がましい装備の者が三十人ほど。
これが、襲撃者の人数だ。
念のため、検索の魔法を使うと二人ほど、森に隠れているみたいだ。
問題ないだろ。
「ガキ、どんな手を使ったか知らんが、魔導師のふりをして、調子に乗っちゃいかんぞ。大人の怖さを知ることになるぞ」
俺の中身は26歳だ。
十分大人だという話だが、今はどうでも良いだろう。
「おっさんたち、ぐだぐだ言ってないで、俺が怖くないんなら、かかってくれば?」
「調子に乗るなといったろうがっ!」
俺の安い挑発で、数人が一度に襲って来てくれる。
しかし、フィジカルブーストで強化された俺の動体視力には、一人一人の動きが丁寧に映し出されている。
そのスピードも俺の相手をするには遅すぎだ。
俺の探しているのは、白金級の勇者ロンギヌスたちだ。あの化け物たちを相手しようと思っているのに、こんな一般人相手で躓いてはいられない。
俺は、一人のナイフの腹を払うと、相手の顔面を蹴ってみた。それだけで、男は声も出せずに昏倒する。
そのまま、他の二人の鉈や棍棒をステップでかわすと、二人の腹部にそれぞれ手を添える。
「ロックショット×2!」
俺の生み出した岩の塊が、嫌な音とともに男たちの腹にめり込んだ。
ありゃ、これじゃこいつ死ぬかな?
片方の男が血を吐いている。
俺は吐血している男に、回復の光を当ててやる。
すると、呻くように苦しんでいた男の顔が少し楽そうになった。
「楽になったとこ悪いんだけど、ロックショット!」
もう一発腹に岩を受けてもらう。
男はまた苦しみ出すが、手加減したし、この程度なら死ぬことはないだろう。
さて、次だ。
よく見ると、襲撃者の中には女性もチラホラいる。
どうやら、向こうの村の動ける奴ら、総出で襲撃に来てくれているのかもしれない。
不細工ではないが、目付きのキツい、高慢な感じの女が動き出す。
「死になさい!」
襲ってくるので、遠慮なくこっちも反撃に出させてもらう。
とはいえ、流石に女にそのまま手をあげるのは気が進まない。
……そうだ、あれを試してみるか。
「アイスプリズン!」
「な、何なの!」
女は凍結され、氷の塊に閉じ込められる。
凍気による武装解除効果は、うまく付与できなかったみたいで、残念ながら服はそのままだ。
シフォンのようにはいかないか。
まぁ、無力化出来たし良いとしよう。
「どうした? もう終わりか?」
俺の挑発にも動かない。
どうやら、今更ながら俺が魔導を使えるということを理解したみたいだ。
まだ、向こうは二十人以上の人数がいるというのにほとんど全員の顔が引きつっている。
……つまらない。
「ど、どうした、お前ら一斉にかかれ!」
髭を蓄えたおっさんが悲痛に叫ぶ。
アイツが、ここでの指揮をとっているのだろうか。
だが、指揮をとっているわりには髭のおっさんの声に誰も動かない。
そりゃ、そうだろ。周りにしたらお前が行けよという感じのはずだ。
しょうがない。
こっちから出向いてやるか。
「いくぞ♪」
俺は、テレポートで集団の中に突入する。
本当なら自殺行為ともとられかねない行動だが、相手は戦意を喪失しつつあり、実力も何てことない。飛び道具でもあれば別だろうが、それすらない。
念のため、俺に攻撃を加える相手を示すように検索の魔法も発動中。死角はない!
「竜巻、level2」
俺の生み出した突風に、何も抵抗できずに吹き飛ばされる襲撃者たち。
「ウインドレイブン×5」
風の魔導で生み出された鳥たちが、真空の刃となって、旋回しながら辺りのものを切り裂いていく。
中には、腕や足を切り飛ばされた者も出た。
多少、低めに旋回させたから、首を飛ばされ即死した奴はいないはずだ。
そのままでは死にそうな奴らには回復の光を当て止血だけはしてやる。
それじゃ、残りの奴らの相手に戻るか。
「く、くるなぁぁぁ!」
「助けてくれ! 俺はこんなことをするって元から気が進まなかったんだ!」
「お前、仲間で一番乗り気だったじゃないか!」
辺りは恐慌状態だ。
少しは気も晴れてきたが、まだ暴れ足りないし、魔導も試したりない。
もうちょっと付き合ってもらうとしよう。
おっと、その前に。
「アイスプリズン!」
逃げ出そうとした、髭の指揮官のおっさんを氷の塊に閉じ込める。
こいつにはあとで役に立ってもらわねば。
今度は、武装解除効果をうまく付与できたようで、氷の中のおっさんは全裸で俺に尻を向けている。
オエぇ! なんというものを見せるんだ!
このおっさんには、あとで俺に汚いものを見せた礼をしなければいけないな。
男たちには昏倒と回復を繰り返し、女たちのほうはアイスプリズンに閉じ込める。
俺は、その作業を繰り返す。
武装解除効果のコツも掴んだようで、女の人たちは全裸で氷のオブジェ状態だ。残念ながら、逃げ出そうとしたところを氷漬けにしたので、全員後ろ姿だ。
炎の明かりに照らし出され、腰の曲線が艶かしく浮かび上がる。
うちの変態勇者ハルが生きていたら大興奮間違いなしの光景だ。
さて、ボチボチ作業にも飽きてきたし、心は十分に折ることは出来ただろう。
よし、止めといくか♪
試してみたい魔導があった。
「ファイアジャイアント♪」
俺の求めに応じ、巨大な火柱が上がり、その中から巨人が出現する。
夜の闇、その中に出現した圧倒的な熱量を持つ巨人。
シフォンの氷の巨人より造形にも拘って、甲冑を身に付けた人型を目指してみた。
自分ではなかなか良いできだと思う。
わざわざ、なかに組み込まれないでも、俺の意思によって動かすことも出来るみたいだ。
でも、自動化出来なければ、使いどころは難しいかもしれない。
「なあ、お前ら。あれ、どう思う?」
巨人を茫然と見上げる奴らに視線を向けると、俺の動きに合わせ炎の巨人もその顔を奴らに向ける。
「「「……………」」」
せっかくの初披露だというのに、俺の問いかけに誰も答えてくれない。
というか答えられない。
もう、襲撃者たちに戦意のある者はいなかった。
呼んでくださった方いましたら、ありがとうございます。




