村での戦い
俺は、ミリハイム村にて襲撃された際の準備に取りかかる。
もし、奴らが襲ってくるとしたら夜の闇に紛れてだろう。
まぁ、拐われた子供や娘たちは、シフォンも一緒にいることだし、多分大丈夫だろう。
「さてと、あいつらが攻めてくる前に、この村には大規模な工事が必要だな」
ミリハイム村は深い森の開けた場所にあり、周囲は木の柵で囲まれているだけだ。いくら十五戸程度の小さな村といっても、全方位から攻めてこられたら、さすがに俺一人では対応が困難だろう。
そこで、対策を立てる。
「まずは、村を囲むように壁を作ってみるか」
俺は、地の魔法で村を取り囲むように土を大量に生み出す。今度はそれを地の魔導で、壁……イチイチ壊されたらめんどくさいので、城壁のように分厚くして固める。
結果、村を取り囲むように三メートル程度の城壁が出来た。
出入り口は、一ヵ所だけ。
そこに俺が陣取って奴らを相手にする作戦である。
だが、城壁を越えてくる奴もいないとは限らない。
そこで、村の中央に八メートルくらいの土の矢倉を作った。
外階段で天辺まで上れる仕様だ。
そこに村人に待機してもらい、何か動きがあれば知らせてもらってもいいし、猟師には弓矢で威嚇するように頼めばいい。
地の魔法や魔導メッチャ便利!
これだけの大掛かりな準備が、一時間もかからずに終わってしまった。
作業を見ていたラルフさんや村の人たちも呆気にとられている。
「キョースケ、お前はいったい?」
もう、ここまで見せたのなら隠していてもしょうがないだろう。
人間の魔法使いや魔導師には魔力容量の問題で、こんなことは不可能だ。
「今まで黙っててすみませんでした。俺は魔王ミリーヒルクライムの所縁のものです。今はミリーの魂を奪った勇者ロンギヌスとその使い手マリアを探して旅をしていたんです」
「そうだったのか……」
ラルフさんが難しい顔をしている。
そりゃ、そうだろ。
いくら、この村が出来るきっかけを作った奴とはいえ、魔王の関係者なんかと一緒に戦えるか!って言われてもしょうがない。
そのときは、一人でこの村の問題を片付けて、そのあとシフォンとともに去るだけだ。
「おい、キョースケ、そんなことは先に言っといてもらわんと困るだろ!」
「はい、わかってます。村の安全が確認できたらすぐに出て…」
「キョースケ、何いっているんだ?」
「? ミリハイム村から早く出ていけっているんじゃ?」
「お前はアホか! 魔王ミリーヒルクライム様の所縁の者を何のもてなしもせずに村から送り出したとなれば、末代までの恥だ!って言っているんだ。キョースケ、覚悟しておけ。この件が片付いたあとは、宴会だ。あの偽勇者にしたもてなしなど比べ物にならんくらいの馳走を出してやる!」
「俺らの秘蔵の酒も出してやるから覚悟しとけよ♪」
「そうだぞ。村を出て行く前に、うちの母ちゃんの飯も食ってってくれないとな♪」
ラルフさんや他の村人もニカッと笑う。
やばい、ちょっと感動した。
俺の目頭が熱くなる。
「ありがとうございます。それじゃ、ここは俺に任せてもらいます。周囲の警戒はよろしくお願いします」
「ああ、わかった」
こうして、ラルフさんたちは村の中に入って行った。
その夜、闇夜に紛れてミリハイム村の人間を殺しにやって来る。
「さて、そろそろか」
俺は、検索の魔法を使用。
検索内容はミリハイム村の人間を殺しに来た人間すべて。
俺の問いに応じ、いつものピコーンという音とともに光の道が表示される。
距離に応じ、道の太さに差があるようだ。
近ければ太く、遠ければ細いという感じだ。
本当に便利である。
フィジカルブーストは発動中。
いつでも来いという感じだが、待っててやる必要もない。
こちらから攻めてみる。
あくまでも、村の入り口の防衛に影響がない程度に。
「よっ♪」
俺は短く声をかけると、一番近くに潜んでいた男を音もなく昏倒させる。
実に不細工な腕だけが自慢といった感じの男だ。
フィジカルブーストで強化された俺の腕力は十分に通用するようだ。
持ち物をチェックすると、笛のような物を持っている。これで偵察に来たこいつが合図を送り、同時に攻め込む予定のようだ。
それならと、俺は風の魔法で笛を鳴らす。
この不細工なおっさんと間接キスなんて、死んでもごめんだ!
それが開戦の合図になった。
数十人に及ぶ人間が一斉に動き出す。
さて、頑張ってみるか。
「おーい、こっちだ♪」
声に気付き、俺の姿を見かけると俺に向かって数人が殺到してきた。
俺は、上に向かいテレポートする。
下を見ると、闇夜で俺の姿が消えたことに気付かない奴らは、ちょうど良い感じで集まってきている。
「竜巻、level2」
俺の生み出した六メートルクラスの突風に吹き飛ばされ、叩きつけられ、何人かが昏倒する。
そうしている間に、ミリハイム村が壁で囲まれていることに気付いた他の奴らも集まってきた。
「さあ、お楽しみはここからだ。ロックウォール」
入り口に向かい、地の魔導を使う。
入り口は岩の壁で塞がれた。
これで心置きなく戦えるってもんだ。
考えてみれば、白金級の勇者ロンギヌスとその使い手マリアにやられてから、俺はずっとそれを引きずっていた。
うさを晴らすのに、一番良い方法は昔からこれだと決まっている。
それは八つ当たりだ。
さて、今だけは相手がただの人間だということを忘れて存分に暴れてみるとしよう♪




