魔法と魔導
俺たちは毎度お馴染みの海岸に来ていた。
シフォンが周囲に結界を張ってくれている。
準備は大丈夫。
先ずは、いつもの能力を一通り確認。
テレポート、60メートル
フィジカルブースト、100メートル5秒
また少し能力の性能がupしているようだ。
そして、今日の本題だ。
俺が能力を確認している間、主であり育ての親であった魔王少女ミリーと楽しそうに会話していた、魔導師の少女シフォンに近寄る。
「シフォン、頼む。俺に魔法を教えてくれ!」
明らかに年下のシフォンに頭を下げる。
相手が年下だろうとモノを頼む立場なのだから、これくらいは当然だろう。
シフォンと戦いのあと、俺は密かに試してみたのだが、シフォンの使っていた魔導が発動することはなかった。
想像してみてくれ。
夜の海岸で、海に向かって何も起こらないのにアイスショットとか叫んでいる成人男性。
その痛い姿を誰かに見られたら死ねる自信がある!
ということで、同じ愚行を繰り返さないために、魔導を使えるシフォンに教えを請おうとしていたのだ。因みに、ミリーは魔導は使えないらしい。
そんな期待に満ちた俺のお願いに対し、
「絶対いや!」
シフォンは、俺の誠意を砕きやがった。
「そもそも、魔法と魔導の違いもわかっていないような奴にモノを教えるのも嫌!」
成る程、それなら魔法と魔導の違いを聞いてみよう。
シフォンは当然教えてくれそうにないので、頼れるうちの魔王少女ミリーに聞いてみる。
「ミリー様、哀れな私めに御教授くださいませ」
<お前、本当に都合のいいときだけ俺様にへり下るな。……まぁいい、教えてやる。こちらの世界でアニメを観ていると、魔法も魔導も様々な解釈があるようだが俺様たちの世界のモノとは少し違うな。俺様たちの世界では、魔法は自然物や自然現象を発生させるだけのもので、魔法に、意図的に攻撃や防御に使う為の命令式を組み込んだモノが魔導だ>
「そうなのか」
<生活に役立つし、魔力も持っている人間も多いので簡単な魔法を使えるものは結構いるが、魔導となると話は別だ。初級のショット系の術式を組み込むだけでも熟練の技術や才能がいるのだ>
成る程、生活で火や水を出すだけでも異世界での生活は大助かりだろう。
でも、シフォンは技術や才能がいると言った魔導をいとも簡単そうに操っていた。
ちらってシフォンの方を見る。
「何よ!」
「いや、別に」
青い瞳を細めて俺を睨んでくる。
フンっ!て感じだ。
こんな態度をとっているが、こいつは間違いなく天才なのだろう。
ミリーに聞いたところ、シフォンの操る氷の魔導は、水の魔導と熱量変化の魔導の合わせた合成魔導ということだ。
「天才っているもんだなって思ってさ」
「天才って私のこと?」
お前以外誰がいるんだと思うが、口には出さない。だが、褒められるのは嫌じゃないらしい。耳がピクピクしてこっちの答えを待っているようだ。
それならば、
「お前以外天才がいるもんか!俺が師匠と呼べる奴はお前しかいないぞ!この間も、お前の魔導で俺は殺される一歩手前だったしな」
「そ、そう♪」
普通に考えたら、自分を殺そうとした相手を師匠と呼びたがる人間はそうはいないと思うんだが、そんなことは考えないらしい。
シフォンはメチャクチャ喜んでいるが、その喜びを我慢しているのが伝わってくる。
もう一押し。
「あんなに綺麗で優雅な氷の魔導見たことないぞ!」
まぁ、魔導自体見たのは初めてだったんだけどな……っていうのは、わざわざ言わなくてもいいだろう。
そして、止めの一撃。
<シフォン、俺様からも頼む。教えてやってくれ>
主であり、育ての親であるミリーの頼み。
シフォンに断れるはずはなかった。
「わかりました」
シフォンが了承してくれる。
こうして、俺に魔導の師匠が誕生した。




