新しい一日の朝
微睡む世界。
俺は眠っていたようだ。
昨日は遅かったし、しょうがない。
まだバイトまで時間があるしもう少し寝るとしよう。
そして、寝返りを打つ。
手を伸ばすと、指先が何かに触れた。
これは何だろう?
うちにこんなものあったかと考えるが、ボーッとした頭ではわからない。
揉んでみると、それはかなり柔らかかった。
本当に柔らかい。
「!」
柔らかい……しかも、この丸み!
俺はある確信をもって目覚ます。
まさか、これはお約束の!!!
俺の手はゴムボールを握っていた。
何でやねん!!!
思わず、関西人バリに突っ込んでしまった。
ここは普通お約束ってものがあるはずだが、俺には適用されないようだ。
俺は隣を見る。
シフォンは毛布にくるまり、今も幸せそうな寝息を立てていた。
白に近い銀髪、今は閉じられているけどその瞳は青く、どこか北欧系を感じさせる美少女だ。歳は十五、六歳というところか?
本当に可愛い子だと思う。
見ていて飽きるということがない。
しかも、この俺の長年使い込んだ毛布の下は……裸のはず。
<夜這いか?>
「!!!」
背後から声をかけられ、俺はここ数年で一番の驚きを味わった。
心臓がキュッとなったじゃないか!
「ミリー、いるなら、いるといっといてくれっ!」
<何を言っている?俺様は、お前の体に居候させてもらっているのだから、ここにいるのは当たり前だろ>
「まぁ、そうだよな」
うちの魔王少女ミリー。
異世界で倒されたミリーの魂は、此方の世界にやって来たときに、仮死状態だった俺の体に入ることになった。精神体で動くことはできるが、普通の人間に見ることはできない。
と、まぁ少し話がそれた。
「なあ、ミリー。なんで、俺がシフォンを襲わなければいけないんだ?確かにシフォンは可愛いが、昨日殺しあいをした仲だぞ。……確かに、この毛布の下は裸で、スッゲ気になるが」
<あれを見ろ>
「ん?」
見ると、シフォンのくるまっている毛布に頭を突っ込んでいる少年が一人。
変態勇者ハルだ。
ハルは、外見は十歳の少年だが、その正体はハルバートって種類の戦斧に宿った意思から生まれた精神体で、生物ですらない。
それなのに、こいつは時々……いや、常時、生身の独身男の俺すら凌ぐスケベ心を発揮する。
《兄貴、ここに男たちの理想郷が存在しますよ》
俺の起床に気が付いたハルが満面の笑みで語りかけてきた。
少しだけ羨ましいと思ったのは内緒だ。
「ミリー、久し振りにイマジンハンドいっとくか?」
<まぁ、良かろう>
《あれ、兄貴どうしてそんな恐い顔しているんです?》
(イマジンハンドlevelMAX)
俺の拳が、ミリーの魔力によって紫の光に包まれる。俺の手にも激痛が走るが問題ない。
俺の嫉妬心はそれ以上なのだから!
《あの、俺、なんかしました?》
「気にするな。ただの俺の憂さ晴らしだ。あの氷の巨人とも一緒にやり合った仲じゃないか。勿論、付き合ってくれるよな?」
有言の圧力で迫る。
<よく言う。己のスケベ心をまぎらわせたいだけだろう>
「ミリー、煩い!」
《えっ!兄貴、それってどういう……ギャァァァァ!》
<男の嫉妬は顔に醜く出るぞ>
「ほっとけ、元々それなりの顔だ」
<全く、素直になれば良いものを>
魂の繋がりによって、俺の心情を読み取れるミリーは呆れ顔だ。
<本当に騒々しい朝だな>
こうして、今日も一日が始まった。




