魔導師少女シフォン
俺は、住み慣れた我が家、ツヅレ荘に戻って来ていた。
四畳半の狭い部屋。
今、俺から見た人口密度はかなり高い。
魔王少女ミリーや下僕勇者ハルは、精神体なので天井付近にいてもらっている。
俺と、もう一人は生身なのでそうはいかない。
俺の前には、テーブルを挟み、白に近い銀髪で青い瞳の少女が座っている。
睨まれているように見えるのは、俺の気のせいだろうか?
とりあえず、挨拶くらいは必要だよな。
「とりあえず、はじめましてで良いんだよな、俺たち?」
「私は、シフォン。魔王ミリーヒルクライム様の側近であっただけで、お前とは初対面だ」
うわ、なんて非友好的な奴。
「ミリーの側近ね…」
「魔王ミリーヒルクライム様を愛称で、しかも呼び捨てするとはどういうことだ!」
この魔導師少女シフォンは、外見と違ってかなり激昂しやすいタイプのようだ。
正直、かなり面倒だと思う。
そんな俺たちのやり取りを見かねて、ミリーがフォローを入れてくれる。
<まぁ、良いではないか。シフォン、お前もミリーと呼べば良いだろ?その呼び名も結構気に入っているのだ>
「そんな恐れ多い」
そんなことを言いながら、宙に漂っているミリーに平伏してしまっている。
魔導師だからか、シフォンにはミリーやハルの姿が見えて声も聞こえているようだ。
ミリーへの態度をみると、側近だったというのは間違いないらしい。
何せ、俺への態度と全然違う。
「そうか?俺は簡単にミリーって呼べたぞ」
「お前は黙っていろ!」
メッチャ睨まれた。
おっかない。
ミリーって愛称の名付け親が俺だとわかったら殺されそうな勢いだ。
「幼き頃、命を助けていただいた魔王ミリーヒルクライム様の復活のためなら、いつでもこの体を捧げる覚悟だったのに……勇者に破れ、魂が此方の世界に飛ばされてしまい、私は役に立たずでした」
シフォンと呼ばれた少女は、青い瞳に大粒の涙を浮かべ、今度は泣き出した。
なんて情緒不安定な奴なんだろう。
俺は対応に困り、ミリーの方を見る。
<森に捨てられていた赤ん坊のシフォンを助けたのは、ただの気まぐれで、別に滅んだ際のスペアの肉体にするという気はなかったんだがな>
まぁ、そうだろうな。
ミリーと体を共有して結構経つが、こいつがそんなに悪い奴でなさそうなのはわかってきていた。
確かにミリーの持つ能力は凶悪で、危険だが、性格はさっぱりとしていて嫌みもない。
良くも悪くも純粋なのだ。
だから、アニメも好んでいるのかもしれない。
「此方の世界に飛ばされて、よりにもよってこんな脆弱そうな奴と体を共有することになるなんて!」
失礼な!
言われるほど脆弱じゃないはずだ。
今までには、引っ越しとか炎天下のエアコンの取り付けなんて過酷なバイトも経験している。
「しかも、こんな今も私やミリーヒルクライム様の胸元を覗けないかと必死になって見下ろしている、たかだか青銅級の変態勇者までそばにいて、魂が繋がっているなんて。私は、それを赦してしまった自分が許せないのです!」
ハル、ボロくそだな。
<では、決闘でもしてみるか?>
ミリーが何か物騒なことを提案してきた。
俺には嫌な予感しかしない。
<つまりは、こいつがお前以上の奴だと証明できれば良いのだろう? それなら戦ってみるのが手っ取り早いのではないか?>
ニヤリと意味ありげに笑いながらミリ-がシフォンに話しかける。
「さすが、ミリーヒルクライム様! いいお考えです」
俺をチラ見しながら、シフォンが笑う。
だが、青い目の奥は暗いままだ。
「ちょっと待て、ミリー、アイツの眼を見てみろ。絶対にアイツ、俺を殺る気だぞ!」
「まさか。あなたを殺したら私がミリーヒルクライム様の魂の新しい肉体になれるなんて……そんな素敵なこと思ってるわけないじゃない」
「ほら、こいつ素敵って言いやがったぞ!」
さっきまで泣いていたはずの魔導師少女シフォンは、魔王の側近に相応しい冷たい微笑を称えていた。
いまいち動きの少ない話が続いてました。
バトルが苦手な平和主義だからってことにしときます!( ̄▽ ̄;)
読んでくれているかたありがとうございます。




