新たな訪問者
俺は出掛ける当日、結局いつもの服を着ていた。
しっかりとイメージ出来たのが、これだけだったからだ。でも、美樹ちゃんは気にしていないようだ。
「今日は、お世話になっている小林さんに美味しいケーキを食べて欲しくって」
今日、俺は美樹ちゃんと2人でケーキバイキングに来ていた。
テーブルには、同じ弁当屋でバイトする美樹ちゃんのおすすめケーキが並べられている。
俺の向かいに座る美樹ちゃんは、バイトの時と同じ、いやそれ以上の笑顔で癒される。
「さぁ、どうぞ」
<美味い!>
「確かに美味い」
本当に美味しいケーキだった。
周囲は、女友達やデートの客がほとんど。
うちの魔王少女ミリーや勇者ハルは精神体のため普通の奴には見えていない。
他所から見たら、ひょっとしたら俺たちもデートに見えただろうか?
いや、俺と美樹ちゃんでそれはないな。
<あれも食ってみたい!>
《姉御、あっちの赤いヤツなんかも旨そうですよ!》
<ほんとだな。あれも食いたい!>
はいはい。
俺と体を共有し、味覚も共有しているうちの魔王少女ミリーも喜んでくれているようだ。
ミリーやハルは精神体であり、声が聞こえないことを良いことに騒ぎまくっている。
明日から、しばらくうちの食卓が貧しくなるかもしれないが、みんなが喜んでくれたなら良かった。
「一度、ちゃんと小林さんにはお礼しなきゃって思ってたんですよね。ほら、夜に倒れていた私を助けてくれたことがあったでしょ?他にも突然休んだりして迷惑をかけたこともあったし」
前にハルに操られていたときのことか。
ハルを見ると、ばつが悪そうに隠れている。
「気にしなくて良いのに」
原因は俺たちで、元凶はハルなのだから。
「ありがとうございます」
満面の笑みで答える美樹ちゃん。
それなりに良い雰囲気だ。
俺の好感度も上がったんじゃないだろうか?
美樹ちゃんの中で、好感の持てるオッチャンランキング上位入賞できるかもしれない。
「おいしかったですか?」
<満足だ!>
俺より先にミリーが答えるが、その声は美樹ちゃんには届かない。
だが、ミリーの答えに依存はない。
「勿論!」
「良かった」
さて、美樹ちゃんの時間をこれ以上使わせるのも悪いしな。そろそろ帰るとするか。
「そろそろ、出ようか」
「はい、今日はありがとうございました。また付き合ってくださいね」
「ああ、良いよ」
うちの一週間分の食費相当の代金を支払い店を出ようとする。
「あの、小林さんて彼女とかいたりするんですか?」
美樹ちゃんがそんなことを聞いてきた。
さすが、年頃の女の子。
こんなオッチャンの恋愛事情まで気になるとは。
俺は、勿論いるはずないだろうと答えようとしたが、それはできなかった。
「やっと見つけた…………ずっと探してたんですよ」
「へっ!」
店を出たとこで、いきなり他の女の子に声をかけられたのだ。
そのままその子は俺の胸に飛び込んでくる。
隣にいる美樹ちゃんも突然のことに驚いているようだ。
勿論、俺も驚いている。
「小林さんの知り合いなんですか?」
「いや……」
「あんた誰?」
女の子が、美樹ちゃんを睨みながら問いかける。
というか、早く俺の胸から離れてほしい。
美樹ちゃんの笑顔に、いつもの温かさがない気がする。
まぁ、それは気のせいだろ。
「私は小林さんの職場の同僚で、小野寺美樹といいます」
「ふーん」
品定めされるような視線を向けられているが、美樹ちゃんは俺の知り合いと思っているようで、丁寧に対応してくれている。
有り難いが、1つ問題があった。
それは、俺自身に全く心当たりの人物がいないということだ。
「それで、あなたは誰なの?」
「へっ?」
それを俺に抱きつきながら、俺に向かって聞いてくるのか。
そういう君こそ誰?というのが、俺の感想だ。
少し変わったポンチョのような服を上から着た、十代半ばとおぼしき少女。
白髪に近い銀髪で、ブルーの瞳。
顔は間違いなく美少女と言っていいだろう。
こんな子、一回会ったら絶対に忘れられないはずだ。
まるで、魔法使いのような格好をしているが、今はハロウィンでもなければ、コミケの時期でもない。
……魔法使いって、まさか。
嫌な予感がする。
<シフォン!>
さっきまでケーキの余韻に浸っていたミリーが叫んだ。
(ミリー知っているのか?)
<俺様の側近だった魔導師だ>
(…………ああ、やっぱりな)
こうして、俺の周りのファンタジー世界は広がりをみせた。
北欧系の美少女をイメージしたシフォン登場です。
ようやく、主人公以外に生身の肉体を持つキャラクターを作って見ました。
次回の投稿も急いでいけるようにしてみたいです。




