デート前夜
住み慣れたオンボロアパートの我が家、ツヅレ荘。
その自室にて、完璧な土下座する男が1人。
俺だ!
相手は、うちの魔王少女ミリー様。
ミリーは寝そべりながら、昨日ハルに録画させていたアニメに夢中になっている。
一方、ハルは自分の本体である戦斧をせっせと少年の姿で手入れ中だ。ミリーの足下側に座り、チラチラとミリーの方をたまに見るのは、チラリズムの求道者だからだろう。
少し羨ましくもあるが、今はそれどころではなかった。
「ミリー様、どうか俺にドレスメイクを伝授してくださいませ!」
俺は頭を床に擦り付ける。
<いきなり下手に出てきて、何事かと思ったらそんなことか……>
「俺にとっては重要なことなんです、頼みます!」
<明日、あの女と出掛けるからであろう?>
「はい、その通りでございます、ミリー様!」
<お前は都合の良いときだけ、俺様を様付けするな>
ミリーのいうあの女とは、バイト仲間の美樹ちゃんのことだ。
何でも美味しいケーキ屋、cafeだったか?
ともかく、おすすめがあるんで、そこに行こうと誘われたのだが、正直、明日着ていく服でパッとしたものがなかった。そこで思い付いたのが、ミリーが使っていた魔法、ドレスメイクである。
ミリーは、ドレスメイクにて自身の服を自由に変えることができた。
今はお気に入りのゴシックドレスから、少女アニメの影響でミニスカートのパンクロックスタイルになっている。スラッとした美脚が魅惑的だ。
ミリーは美少女の外見なのに性別がないため、意識せずに動くことが多い。
ほら、今足を動かした時だってミリーの足下側にいるハルからは、殆どミリーの下着が丸見えなはずだ。
その証拠に、ハルの手が止まってダークブラウンの瞳が釘付けになっている。
よし、後でハルのことはチクっておこう。
<俺様は、別にいつもの格好でもいいと思うのだがな。まぁいい、ケーキも食えることだしな。他の竜巻等と同じで念じるだけで使えるぞ>
「マジですか!」
なんだ、土下座して損した。
そう思ったのはミリーには内緒だ。
<ただし、魔力は俺様のがあるとはいえ、服を造り出すには明確なイメージが必要になるぞ>
成る程、イメージか。
妄想なら多少自信がある。
さっそく、使ってみるとしよう。
とりあえず、俺のイメージする最高の正装で試してみる。やっぱり、タキシードとかだろうか?……それにしても、さっきハルにはどんな光景が見えていたんだろう?
少し雑念が入ってしまったが、まぁいいか。
(ドレスメイク!)
俺はいつものジーンズ姿から、タキシード姿になっていた。
「本当に一瞬で着替えられるんだなって…………!」
自分の姿を上の方から順に確認していた俺の視線が、ある一ヵ所で止まる。
「これはどういうことだ?」
そのまま、どこぞの政治家のパーティーに出席しても許されそうな華美すぎるその外見に1つ変なところがあったのだ。
タキシードに、けっこう大きな穴が開いている。
どこに穴が開いているかというと、ズボンの前面の股の辺り。
ドレスメイクは下着も含め、俺の着ているものすべてに影響するようだ。俺は下着を全く考えていなかったため、今タキシードの下にはノーパンだ。
おかげで最高の正装に身を包まれながら、俺の大事なところが、ポロんと顔を出していた。
(((…………)))
無言になる俺たち。
「なあ、ミリーにハル、俺のこの格好どう思う?」
<ただのド変態だな>
《同じくそう思うっす》
二人の蔑む目が痛々しい。
「やっぱり、そうか」
俺もそう思っていたところだ。
こんなんじゃ、外にすらいけない。
早く着替えなければ!
「そういえば、元に戻るにはどうしたらいいんだ?」
<?……元の服になど戻れんぞ。前の服は新しい服に置換して消滅しているからな>
「何っ!」
あのジーンズ気に入っていたのに!
服が上下一式と下着までも紛失なんて、うちの家計が崩壊しかねない。
<慌てるな、前の服のデザインをイメージしてドレスメイクを使えばよいではないか>
ミリーがため息混じりに解決法を教えてくれた。
成る程、そういうことか。
俺としたことが焦ったぜ。あの服たちは長い間着たおしていたからな。イメージもしやすいはず。
俺は目を閉じ集中する。
(ドレスメイク!)
俺は、さっきまで着ていたジーンズ姿にほとんど戻っていた。
ただひとつ違ったのは、股間部分に大きな穴が開いているということだけだった。
相変わらずの乱文失礼しましました。
いつもの三人の感じで書いてみましたが、気持ち悪いと思ったかたがいたらスミマセン。
もう少ししたら、新しい登場人物を出したいと思います。
読んでくれたかたありがとうございました。




