勇者のランク
夜の街を屋根づたいに連続テレポートすることによって、俺はかなり短い時間で我が家に戻ってきていた。
うちの魔王少女ミリーは深夜アニメを見るため、TVの前を陣取って万全の体勢で寝そべっている。
一応、録画もしているが生には生の良さもあるらしい。
だが、寝そべりながらも宙に浮きTV画面の前にいるので正直、邪魔で仕方がない。
そんなミリーを余所に、一人煩い奴がいた。
《兄貴、俺たちかなり強いっすよ! 俺、今まで十人くらいの奴らと組んだことがありましたけど!あんな威力初めて出せました!姉御の魔力を使わせて貰うだけであんなことになるなんて!》
ハルが、いつものダークブラウンの髪に茶色の瞳の少年の姿になって、大興奮している。
未だに瞳は爛々としているところをみると、当分はこのテンションは続きそうだ。
ハルが、精神体でなければ近所迷惑になっていたところだ。
《俺たち、頑張ったら黄金級も夢じゃないかもですよ♪》
「黄金級?……そういえば、闘気斬を使った時に白銀級とか言っていたとな?」
《あれ?いっていませんでしたっけ?》
後でハルに聞いたら、勇者にもランクがあるらしい。
一番下が、今現在のハルがランクされている青銅級、その上に白銀級、さらにその上に黄金級、そして最上級の白金級。
より多くの魔物を倒しても、到達できるのは青銅級までで、そこから上に上がるには力のある魔物、つまりは魔王たちを狩らねばならないらしい。
確かに、現役の魔王時代ならともかく、今もTVの前を陣取って寛ぎモード全開のうちの魔王様とかが相手なら、勝てなくないかもしれない。
「ん?でも、黄金級?そこは、どうせ目指すんなら最上級の白金級じゃないのか?」
《それは無理っす!》
「えらく、ハッキリと否定するな?」
調子に乗りやすいハルならば、俺たち最強位は簡単に言ってのけると思ったんだが。
《白金級は本当に選ばれた者達だけの階級です。こっちの世界でも物語とかのモチーフになったりしてる者もあったりしますよ》
俺でも知っていたりするのもいるんだろうか?
「例えば、どんな奴がいるんだ?」
《エクスカリバー様とか知りません?》
「知ってるぞ」
いきなり有名どころの登場だ。
俺も愛用していたことがある程の優秀な武器だ。
勿論、ゲームの中の話だがな。
しかし、俺たちのことを兄貴や姉御とか呼ぶハルが自然に様付けで呼ぶとは、本当にすごい奴なのかもしれない。
《エクスカリバー様も絶対強者の一人です。白金級の人たちは神話の時代から存在していて元の世界だけでなく、いろんな世界の力ある奴等を斬りまくってますからね。追いつくのは無理なんですよ》
<そいつなら俺様も知っているぞ>
ここで、ミリーも俺たちの話に参戦。
だが、視線は相変わらず画面に向いたままだ。
《ミリーの姉御!エクスカリバー様をご存知だったんですか!》
「どんな奴だったんだ?」
俺たちは興味津々で問い返す。
<氷のような眼をした女に遣われる、いけすかない奴だった。何せ、俺様の肉体を滅ぼした奴だからな>
《姉御を殺ったのは、エクスカリバー様だったんですか!まさか、使い手が現れていたなんて……》
ハルも驚愕しているようだが、俺としても驚きだ。
まさか、魔王時代のミリーを倒したのがエクスカリバーと、その使い手だっただなんて。
ひょっとして、ミリーと魂を共有している俺は討伐対象になるんだろうか?
ミリーをわざわざ異世界から追ってきたハルもいるくらいだし、その可能性は非常に高い。
ゲームでは世界中を隈無く探し、困難なクエストまでクリアして手に入れた最強の相棒でもある武器だったが、狙われるのが自分の命となったら話は別だ。
「エクスカリバーと白金級か……」
エクスカリバーと白金級、もし異世界に行くことがあっても、こいつらとは出会わないことを願いたい。
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