ハルの能力検証その②
いつもの海岸で俺はハルの本体である戦斧を構えていた。
全長は、2メートルほどというところか。
夜にこんなゴツイ凶器を持っているところなんて目撃されたら通報され、えらいことである。
俺たちの頭上に浮いているミリーには、観戦しながらも周囲の監視も依頼してある。
ハルは人の姿の精神体から球体に戻り、本体の戦斧に憑依していた。
《兄貴、先ずは軽く振ってみましょうか》
「わかった」
ハルに言われた通り軽く振ると、シュッと風を切る音が聞こえた。
見た目は、けっこうゴツく見えるが本当に軽い。
現代日本では見たことないが、いったい素材は何なのだろうか?
勇者というからには、オルハリコンやヒヒイロガネ!……って、まさか、ハルがそんな上等なわけないか。
良くてミスリルってところだろう。
こんなことを考えているとハルが知ったら、憤慨するかもしれないな。
でも、大丈夫だろ。しょせんハルだし。
案の定、ハルは気づいてもいないようだ。
《成る程、俺と兄貴の魂が繋がっているからとはいえ、なかなか筋がいいですよ。共鳴率は70%を少し越えたってところです》
「共鳴率?」
《勇者となった武器と、その使い手の相性の値です。これがある一定以上高くないと、俺たちは奥義が出せないんですよ》
奥義だと!
なんとも心踊る響きだ。
「俺とハルで奥義は撃てるのか?」
《70%は越えてでますからね。初級の奥義でいいんなら撃てますよ》
「是非とも撃ってみたい!」
《じゃあ、海に向かって俺を真っ直ぐに降り下ろしてみてください。技の名前は、闘気斬です。本当は名前を叫ぶ必要があるんですが、俺と兄貴は繋がっているんで、念じるだけでもOKです。名前の通りに使い手の魔力を闘気に変えて斬る技で、威力は大木を真っ二つにする程度です。名前が嫌なら変更も出来ますよ》
「わかった。ということでミリー、お前の魔力を俺を通してハルに流してもらってもいいか?」
<いいぞ、俺様も興味があるからな>
ミリーの快諾もあり、俺は戦斧を上段に構えた。
「いくぞ」
俺は、ハルに言われた通りに、戦斧を海に向かって真っ直ぐに降り下ろす。
それと同時に、
(闘気斬)
と、念じる。
すると、俺の斬撃の軌道に沿って、淡く蒼い光の刃が迸った。
光の刃と夜の暗さが相俟って、辺りはかなり明るい状態になっている。
勢いよく上がる波しぶき。
その爆音と量は尋常じゃなかった。
光の刃の残糸のおかげで、今しがた自分の仕出かした奥義が引き起こした光景も鮮明に見ることができた。
「へっ?」
《へっ?》
目の前の海が、数十メートル先まで割れて海底まで見えてる。
そのあまりの威力に、俺もハルも驚きのあまりにポカーンって感じだ。
全然、大木を真っ二つ程度の威力じゃない。
《この威力って、白銀級の勇者の奥義も軽く越えるんじゃ…》
<ほほう、俺様の魔力を使えば、竜巻level1程度の魔力量でもこのくらいの威力になるのか>
ハルが譫言のように呟いている中、ミリーは満足そうに納得している。
そうか、勇者となった武器は元々弱い魔力しか持たない人間が強い魔力を持った相手と戦うためのもの。
そこに魔王の魔力なんか使用したら……こんな威力になっても当然ということか。
俺も納得だ。
「それにしても、あの音と光ってヤバイだろ?」
<おいっ!誰かが、怪しい光に気が付いて通報したのかもしれない。警察の連中がやって来るぞ>
俺の心配は当たり、ミリーの警告通りに遠くでサイレンの音が聞こえる。
「急いで離脱するぞ!」
俺は、久々に全力の連続テレポートを使用することになった。




