『鬼畜眼鏡の恐怖』 ザ・ディーコン
※2026/9/22 編集ミスで文章が一部重複しておりましたので
修正しました。
自宅でいつになく緊張している小町ちゃん。
どうやらおっちゃんが異世界の友人を連れて来るようです。
小町ちゃんの前に現れた第二の異世界人とは一体どの様な人物か…!?
風雲急を告げる第31話、スタートです!
ぶるぁあああ! む…武者震いがするのうっ!!
土曜日の午後、部屋の中で押し入れを前にして、鼻息も荒く仁王立ちで
『お客様』の来訪を待ち構える私は飲酒盃小町。
黙ってればクールビューティで通る妙齢の美人OLよぉ。
(『コミュ障の内弁慶』ですってぇ? うん、その通り…。)
だって、いきなり知らない人と話すなんて、そんなおっかない事出来る訳
ないじゃない!
私は陰キャも陰キャ。
闇に生まれ、闇に忍び、闇できりきり舞いする日陰者もいいとこよぉ!
で、何故『お客様』を待つのに押し入れの前なのか。
どんな奇跡か超常現象が起こったのかは知らないが、ある日私ん家の
押し入れは異世界…それもドワーフの棲む洞窟と繋がった。
洞窟に棲んでいたドワーフのおっちゃん、その名を『ヴァイン・ファス』と言う。
そりゃ最初はお互いびっくりしたんだけど、どちらもお酒が好きって事で、
意気投合した私達は今や飲み友達。
事あるごとに私の家で、お酒と食事を介した異文化交流…平たくいえば
宅飲みを愉しむ仲になったのである。
なったのだけど、今日はおっちゃん、向こうの友達を連れて来ると言う。
おっちゃんはこっちのウイスキーをいたく気に入って、あちらでも
作れないものかと四苦八苦しているそうなのだが、最近は特に技術的な面で
色々と行き詰っているとの事。
そこで問題を解決する為に、向こうでも知恵者で通っている友人を
連れて来たい、という話になった。
ちなみにその友人、ドワーフではなく人間、それも若い男性らしい。
仕事以外で若い男と小洒落た会話なんぞ、私に出来ると思うてか!?
私がバリバリに緊張しているのは、つまりそう言う訳なのである。
仁王立ちに腕組みして押し入れの奥に続く洞窟を見据えていると、
更に奥でゆらりと人影が動いた。
影は…二つ。
ずんぐりした小さいのはおっちゃんだけど、細くてひょろっとした影がもう一つ。
二つの影はゆっくりとこちらに近づいて、私の前で止まった。
「おう嬢ちゃん、来たぞい、待たせちまったかの?」
これは勿論おっちゃん。
と、もう一人が片手を腰に、もう一方の手を胸に当て丁寧にお辞儀する。
「初めまして、お嬢さん。」
細身で長身、茶色い長めの髪をオールバックにして、無造作に束ねた
ポニーテール。
色白で、割とハンサム…噂に聞いたエルフかと思ったけど、耳は尖ってない。
「私はカリーチェ・サークロと申します。
こちらのドワーフ、ヴァインの友人で…」
良く通るテノールで男性は告げる。
「『錬金術師』を生業にしております…どうぞ、お見知りおきを。」
・・・
「わ、私は飲酒盃小町、商社…そちらで言うところの商会勤めで、そこそこの
部署の頭って言えばいいのかしらぁ?」
と挨拶したら、カリーチェ氏がすっごい形相でこっちを睨んでる!
な、何? 私、この人怒らせるような事した!?
カリーチェ氏は眉間に物凄い縦皺を寄せて、首を捻りながら
グイ~っと私の顔を覗き込む。
近い、近いよ! ヤンキー用語で言う『メンチ切る』って奴!?
「小町嬢というのですね、美しいお嬢さん。」
それになかなか聡明でもいらっしゃる様だ、どうぞよろしく、と氏は
近づけた顔を離した。
「よ、夜露死苦ぅ!」
おっかなびっくり挨拶を返す私。
物珍し気に周囲を見渡す氏は終始しかめっ面、何か気になる物がある都度、
眉間に皺が寄る。
「ふむ…王侯貴族どころか大魔法使いでもこれ程の文物に囲まれた暮らしが
出来るかどうか、少し見回すだけでもこちらは正に知識の宝庫ですねぇ。」
言いながら、ギリィと音がしそうな表情で微笑んだ。
怖い、怖いよ、この人!
「…早速ですが、ヴァインの奴が詰まっているという、ガラス瓶の製造について
資料をお見せ頂きたいのですが?」
「は、はいぃ~、只今ぁ~!」
私はそそくさとそれらしいサイトを検索して、氏にタブレットを渡した。
氏はタブレットを受け取ると食い入る様に画面を見つめ…ん?
すっごい顔近づけてる。
徐にポケットから丸いガラスの塊を取り出して画面を撫でる様に読み始める。
あの塊はリーディングストーンっていう、本や新聞を読む為の虫眼鏡ね。
そっか、怒ってる訳じゃない、多分この人は…
「あ、あの、良かったらこれ、使って見て頂けませんかぁ?」
私は引き出しからある物を取り出し、おずおずと氏に切り出す。
「何です、これは? リーディングストーンにしてはごちゃごちゃとして、
些か使い辛そうに思えますが…」
訝しむカリーチェ氏。
「あ~、いえ、リーディングストーンで画面を撫でてると傷が付きそうですしぃ?
後、それはこうやって使うんですよぉ?」
言いながら自分の眼鏡を掛けて見せる。
私が氏に渡したのは処分してなかったお古の眼鏡。
「成程、文字の上ではなく自分の顔に付ける、ですか…どれどれ…おぉ?」
「付けると良く見えますかぁ?」
「えぇ、えぇ! まだいくらかぼやけますが、そのまま見るよりは余程!」
あぁ、やっぱり。
この人、近眼なんだ、しかも私よりかなり度がきついみたい。
それで眼鏡がないとなれば、あんなしかめっ面にもなるわよねぇ。
私は裸眼でもギリ運転とかに支障はないけど、少し度が進んだので念の為
最近眼鏡を新調していた。
まだお古を処分してなかったのが幸いだったわ。
そこまで分かれば話は早い。
「技術相談は一旦中止!
おっちゃん、この人連れて出かけるわよぉ!」
あ、スマホ忘れずに持つのよぉ!と声を掛け、出かける用意を始める。
「ほいきた! どこ行くんじゃの?」
「ちょっと歩くけど、そう遠くないわぁ、スーパーの向こうくらいまでぇ。」
「え? あの、ちょっと?」
カリーチェ氏は右も左も分からぬ様子で目をパチクリ。
…なぁんだ、そういう顔も出来るんじゃなぁい。
・・・
いつものスーパーを通り過ぎ、国道を川崎方面へ向かって少し歩くと
目的のお店が見えてきた。
「ちょいと歩いたのう、目的地はあの店かい?」
「えぇ、そうよぉ。」
私達がやって来たのは街の眼鏡屋さん。
その名も『眼鏡牧場』よぉ!
「…いらっしゃいませ、お好きなフレームを眺めてお待ち下さい。」
店員さんは私達三人を見て一瞬無言になったものの、動じる事無く声を掛ける。
私はともかくも、二人は外国人、と言うか、実は異世界人。
それも一人はずんぐりむっくりで髭面の中年男、もう一人は
何やら見た事もない民族衣装みたいなのを着た若い男、と来たもんだ。
なかなか妙な取り合わせ、ではある。
「こちら外国からのお客様なんですけど、若い男性の方が移動中に眼鏡を
紛失してしまいましてぇ…」
そりゃもう、電車の窓からすぽ~んと、と私が歩きがてら練りに練った
カバーストーリーを店員さんに伝える。
「あらまぁ、それは災難でしたね、では検眼致しますのでこちらへ。」
「あ、日常会話は日本語で大丈夫ですので、よろしくお願いしますねぇ。」
とカリーチェ氏を店員さんにお任せする。
『…それでは黒い輪の切れている方向を読み上げて下さいね。』
『右、上、左…右、いや、下かな? 上…』
視力検査の声が聞こえて来る中、私とおっちゃんは展示品のフレームを
眺めて回る。
「…嬢ちゃん、あ奴の目が悪いの、よう気付いたの。」
「最初は何怒ってるのかと思って気が気じゃなかったんだけど、こう、
字を読んだりするのにあんなに顔近づけたりすれば、流石にねぇ。」
こしょこしょと小声で話す私達。
「でね、スマホ持ってきたわよねぇ? ここの支払いなんだけど、
おっちゃんに立て替えてもらっていいかしらぁ?」
大体3万円前後になると思うけど、向こうの価値に換算して
後でカリーチェ氏に請求してもらえないか、とおっちゃんに伝える。
「尤もな話じゃな、うむ、心得た。」
あ奴はこちらの金はもっとらんのだし、嬢ちゃんが払うのも筋が違う
わな、とおっちゃんは快く引き受けてくれた。
また金貨とか頂いても困るし、多分二人で精算してもらうのが一番丸い。
『…お疲れ様でした、では売り場でお好きなフレームをお選び下さい。』
程なく検眼も終わり、カリーチェ氏が売り場へ案内されて来た。
氏が選んだのはチタンフレームのシンプルな丸眼鏡。
「それじゃ、レンズはガラスにUVカットと傷防止のコーティングで
お願いしまぁす。
ちなみにどのくらいで受け取り出来ますかぁ?」
「はい、在庫のレンズで御作り出来ますので、1時間程でお渡し出来ますよ。」
「あら、良かったわぁ、じゃあ近くの喫茶店で時間潰してきますねぇ。」
乱視が混じってたりで特注のレンズが必要だと1~2週間待ちになるから、
これはラッキーだったわ。
近くの喫茶店でコーヒーなどしばき、眼鏡屋さんに戻って商品を受け取り、
カリーチェ氏の顔に合わせてフィッティング。
「!…あぁ、何て良く見える! しかもこんな僅かな時間で御作り頂けるとは、
素晴らしい、実に素晴らしい!!」
氏は感動し切り。
サービスの眼鏡ケースやらレンズを拭くクロス布やらを頂いて、ミッション完了。
そうそう、おっちゃんはスマホでのカード払いに初挑戦。
「うむ、カードで…一括払いで…おぉ、儂にも出来たぞい!」
神妙な表情でバーコードを表示させ、ピッと読み取り、お支払い終了。
こちらも嬉しそうで何よりねぇ。
結構いい時間になったわねぇ。
それじゃ、スーパーで晩御飯買って帰るわよぉ!
・・・
お家へ帰って私は晩御飯の支度。
おっちゃんとカリーチェ氏はタブレットを間に挟み、時にメモを取りながら
喧々諤々やり合っている。
今日の晩御飯はチキンカレー。
色んな物語でもそうだけど、異世界人の胃袋を掴むならもはや定番よね。
付け合わせにホウレン草のバターソテーと野菜メインのフレンチサラダ。
わかめと豆腐の味噌汁は…すまん、インスタントで勘弁してくれいっ!
「は~い、晩御飯のお出ましよぉ、テーブルの上、片してねぇ。」
「おぉ、来た来た…ほれ、カリーチェも一旦片せや。」
「異世界の料理ですか、これは興味深いですねぇ。」
さて、テーブルにお料理を並べたら…
「「「頂きます!」」」
カリーチェ氏はカレーを一匙掬い、暫し見つめ、香りを嗅ぐ。
「ふんだんに香辛料を使ってますねぇ、何とも贅沢な…」
そして意を決した様に口へ運び、頬張った。
「!…ヴァイン、貴方、ズルいですねぇ…こんな美味しい物を今まで
独り占めしていた、と、そういう訳ですか!?」
物凄い笑顔でおっちゃんを睨む。
何とも悪そうなこの表情は、う~ん、まさに鬼畜眼鏡!
「言うない! 儂が狙って異界に道を繋げた訳じゃなし、しゃーないじゃろ!?」
「カリーチェさんもお口に合ったみたいで何よりねぇ。」
カレーは多めに作ったからお替わりもいいわよぉ?と勧めると、
「! 是非お願いします!」
「あぁっ、儂も、儂も食う!」
と大合唱。
二人で食べるのも楽しいけど、『三人寄れば文殊の賑わい』?だったっけ。
いや、あれは『知恵』か。
ハイハイ、沢山食べるといいわぁ。
・・・
ご飯の後は、沢庵をお摘みにお茶でまったり食休み。
「…眼鏡は汚れたら、軽く水洗いして、柔らかい布で水気を取ったら
もらった専用のクロスで拭き上げてねぇ。」
傷防止のコートがあるっても、いきなり擦ると傷も入るし、ガラスだから
落としたりぶつけたりすると割れるわよぉ?と使用上のご注意。
「勿論です、これ程視界が開けたのは数年、いや、十数年振りかもしれません。」
大事に扱いますとも、とカリーチェ氏は嬉しそう。
そっかぁ、長年大変だったわねぇ。
「そう言えば、目とか、魔法?神様の奇跡?では治せないのぉ?」
あっちは奇跡も魔法もある世界、治せないのかな?
とちょっと疑問に思ったので聞いてみる。
「残念ながら、治せませんねぇ。」
とカリーチェ氏。
どうも、神様の奇跡と言うのは怪我の治療や毒を消す、といった方面では
効果覿面で、司祭様が間に合えばかなりの大怪我でも助かるらしい。
一方病気の治療にはほとんど効果がなく、お医者さんや薬師さんは向こうでも
大事なお仕事なのだそうだ。
そして…近視や遠視、乱視、老眼といった、長年掛かって身体に起こった変化、
というのも神様の奇跡では治せないものだと。
ちなみにおハゲ様も治せないそうだ。
髪の毛といふものは一度失われれば…二度とは…二度とは…
「でも、私は今日この『眼鏡』という物を知りましたからね。
ガラス瓶の生産については大体骨子を掴みましたから、まずは水飴用の
広口瓶辺りから始めてみましょうか。
そちらが一段落したなら是非、眼鏡の製造を研究したいですねぇ。」
視力検査というのも画期的なものだし、学者さんや魔法使い、錬金術師には
目の悪い人が多く、彼らが自分の様にそれぞれに合わせた眼鏡を得られるなら
大きな福音になる、と氏はやる気満々である。
…って、もうガラス瓶の量産、目途が付いたの!?
この人、本物の俊英って奴かぁ。
「言うたじゃろ、こ奴は出来物なんじゃよ?」
おっちゃんが嬉し気に自慢する。
「そういう事なら…これ持ってっていいわよぉ?
研究するなら自分の眼鏡を削ったり割ったりする訳にもいかないわよねぇ?」
そう言って私はお古の眼鏡が入ったケースを渡した。
「何と…よろしいのですか?」
「度が合わなくなった奴だから、好きに扱って大丈夫よぉ。
あ、後、これもあげるわぁ。」
引き出しから収納式のポケットルーペを持ってくる。
「リーディングストーンも趣があっていいけど、こういうのも便利よぉ?」
言いながら、ルーペのレンズを出し入れして見せた。
「何と…何と素晴らしい! こちらの世界の技術や文物は実に素晴らしい!
ヴァイン、まったく、貴方は私を連れて来るのが遅過ぎたという物ですよ…!」
「だから、そう言うない…!」
凶悪な笑みを浮かべて皮肉る鬼畜眼鏡と苦笑いで答えるおっちゃん。
成程、この二人、種族を越えた良い友達なのねぇ。
…桂華ちゃんなら薄い本が厚くなるんだろうか、と思ったのは内緒にしておこう。
・・・
「さぁお待ちかね、お酒の時間よぉ!」
「よっ! 待ってたぞい!」
「こちらの酒は実に美味いとヴァインの奴が自慢し切りでしたからね、
楽しみです。」
パチパチと手を叩く二人の異世界人。
テーブルにデデンと取り出したのは、銅色の豪奢なボトル。
ラベルには…恐ろし気なマスクの怪人。
「『ザ・ディーコン』よぉ。」
「見事な瓶ですねぇ、銅製ですか…え、ガラス瓶?」
「銅のスチルポット…蒸留器を模してガラスに色を付けてるのよぉ。」
どんな技術なんだ、と驚くカリーチェ氏。
電気メッキやら蒸着!やらはなぁ、ちょっと私が説明するには手に余るわ。
対しておっちゃんはラベルの怪人に注目。
「おう、何ともおっかねぇ仮面じゃの、何じゃいこれ?」
「ペストマスクって言って、昔ペストっていう伝染病があったんだけど、
その治療に携わったお医者さん達の付けてたマスクよぉ。」
「ほう、立派な方々ではないですか。」
「立派な人達だったんだけどねぇ、ちょっと風評被害と言うか、悪いとか
怖いイメージが付いちゃったのよねぇ。」
怪訝な顔をする二人。
「何せ病気の原因が分からなかった時代の事で、魔女狩りとか宗教裁判と
結びついて、ちょっと飲み食いの席では話せない様な色々があったのよぉ。」
「あぁ、そういう…」
二人もこの説明で思う処があったか、深くは追及しないでくれた。
「それはさておき、これ、なかなかいけるって評判なのよぉ。」
濃い琥珀色を皆のテイスティンググラスに注いで…
「「「かんぱ~い!」」」
カリーチェ氏が早速グラスを香る。
「ほう! 塩っ気のあるヨード香と焦げた…焦げたオレンジ?
ビスケットの様な麦っぽさもありますねぇ、そして焚火の様な煙、
実に複雑だ…こちらの酒とはこういうものですか!」
「苦手な人もいる香りだから、無理そうなら言ってねぇ。」
いやいや、仕事柄臭いの強い薬品なども扱いますから慣れたものですよ、と
氏は臆する事もなく一口。
「ほう!ほう! やはり最初に来るのは塩気と燻製の様な煙たさですね。
しかししっかりと甘く、いや、程良いスパイス感もあるか…滑らかな甘さと
穏やかな煙の苦みが長く続いて…実に美味い!」
ヴァインの奴が『麦の乾燥には泥炭じゃ!』と拘っていたのですが、
こういう事でしたか、と氏は感想を漏らした。
おっちゃんの友達だけあって、この人もなかなかの呑兵衛みたいね。
癖の強いお酒もイケる口だわ。
「やんわりと煙たいが、これも『あいら』ちゅう奴かの?」
と、おっちゃんのご質問。
「これはねぇ、アイラとスペイサイドのブレンデッドスコッチ…
両方のいいとこ取りしてるのよぉ。」
「成程、『あいら』そのままじゃとちょいと苦手な人でも、このくらい
やんわりなら楽しく飲めるっちゅうもんじゃ!」
上手い事考えよるのう、とおっちゃんもご満悦。
「なぁカリーチェ、『すとれぇと』も良いが、『はいぼぉる』にすると
違った一面が見えよって、これがまた美味いんじゃぞ!?」
おっちゃん、勧める勧める。
カリーチェ氏はおっちゃんから受け取ったジョッキを見つめる。
「炭酸水で酒を割ると『ハイボール』、でしたか、どれ…
ほほう! 煙っぽいファーストインプレッションはそのままに、瑞々しい
オレンジの様な果実感が強調されている! こうも変わるものですか…」
炭酸水にもガラス瓶を用意したいところですね、気が抜けない様にするなら、
まずはコルク栓に封蝋でもしてみましょうか、と続ける。
この人なら、いずれ王冠とかも作っちゃうんだろうなぁ、出来ちゃうん
だろうなぁ。
「はいはい、お酒ばっかりじゃなくお摘みも食べるのよぉ?」
今日のお摘みはパンチェッタ…豚バラ肉の生ハムとベーコンの中間…
生ベーコン?と言った感じのお肉。
そしてグリルで焼いた椎茸にお醤油とバターは最高の組み合わせ
よね。
そして野菜スティックにディップはお味噌。
わーくにの味覚、お醤油とお味噌の沼に堕ちるがいいわ!
「あぁ、調理法もですが、この独特な調味料、実に美味く興味深い!
…ヴァイン、貴方、次にこちらに来る時にはちゃんと私にも声を
掛けるのですよ!?」
「それはもう分かったっちゅうに…」
悪戯めかして言うカリーチェ氏に、苦笑いしつつ答えるおっちゃん。
眉間の皺もなくなり屈託なく笑っているけど、やはり習い性なのか、
ちょいちょい目力の圧が凄い。
「ところで嬢ちゃん、今日この酒を選んだ理由とかあるんかの?」
「いや~、カリーチェさんの眼鏡かけた笑顔がおっかなくてねぇ?
スーパーでこの瓶のラベル見てたら、つい、ねぇ…」
「な!? 私、こんな凶悪な顔して笑ってるんですかァ!?」
今日も宅飲みの夜は楽しく更けていくのだった。
・・・
さて、この錬金術師のカリーチェ氏。
おっちゃんと共に足繁くこちらの世界に訪れ、様々な知識や技術を得て
向こうに持ち帰った。
中でもガラス製品…特に眼鏡の製造や普及に尽力し、あちらの世界では
後に『水晶のカリーチェ』の二つ名で偉人として名を残す事になるのだけど、
それはまた別のお話。
私の知るカリーチェ氏は、おっかない笑顔の鬼畜眼鏡なのだ。
今回のお題は、『ザ・ディーコン』でした。
ちょっとお待たせした分、という訳ではありませんが、
文字数増量でお届けしております。
通常運転に戻るって言ったな、ありゃあ嘘だった…
また長くなったよ、だって書いてて楽しいんだもん ('A`)
※普段よりは長めでしたが、一部重複になってるのを発見…
そら文字数多いよ! 慌てて修正致しました。
ディーコンは本文の通りアイラとスペイサイドのいいとこ取り。
尖った特徴が丸まって、癖がありつつも飲みやすい一本ではないでしょうか。
しかもこのディーコン、10/21に新商品『ザ・ディーコン ブラック』
が発売される、との事です。
真っ黒い瓶のディーコン、さぞや臭かろう、煙たかろう、と思ったら
さにあらず。
オリジナルより更に穏やかなスモーキーさとピート感、そして華やかな
フローラルさと果実感で飲みやすい逸品に仕上がってるんですってよ、奥様!
発売日当日はお近くの酒屋さんに急げ!!
…ローソンなら入荷するかな?
城内はオリジナルも飲み切らない内からブラックの発売が楽しみです。




