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異世界で宅飲みを ~OLとドワーフのよもやまウイスキーレビュー~  作者: 城内仁志


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26/28

『オリエン樽な味と香り』 シーバスリーガル ミズナラ 12年

※熊本県の震災被害に遭われた皆様に謹んでお見舞い申し上げます。

 前後して猛暑・酷暑が続いておりますので皆様の御心労や御不便を

 拝察致し、御案じ致しております。

 どうか御自愛下さいます様、心よりお祈り致します。


梅雨も明けて暑い日が続いておりますが、皆様如何お過ごしでしょうか。


さて、我らが小町ちゃんは何やらおっちゃんと踊り狂っている様子。

二人にいったい何が…!?

 「あ~っはっはっはっ! やったわ、やったわよぉ、おっちゃん!!」

部屋の中でパソコンを前にして、ルンタッタと踊り狂う私は飲酒盃小町(いさはいこまち)

その踊りっぷりは裸足(はだし)の天才舞踏手、イサドラ・ダンカンもかくや、

と言わんばかり。

(今『踊るアホゥ』って言った奴、伝説の樹の下で決闘な!)

「さぁ、おっちゃんもこっち来て、一緒に踊るのよぉ!

ほら、ワンツー・ワンツー・アンドゥトロワッ!」

「わぁ~ったったった…嬢ちゃん、引っ張るな、引っ張るなと言うに!」

私に手を引かれて不承不承(ふしょうぶしょう)ながらもドスドスと不器用に踊り出すのは

異世界からやって来た、ドワーフのおっちゃん。

名を『ヴァイン・ファス』と言う。

どんな奇跡が起こったものか、ある日私ん()の押し入れは異世界…

おっちゃんの()む洞窟と繋がった。

何やかんやあって意気投合した私達は今や飲み友達。

そのおっちゃんが()()()の世界で自由に出来るお金を稼ぐ為、

私達はインターネットでアクセサリーショップを始めたのだが…


 「…はぁ、踊った踊った。」

一頻(ひとしき)り踊り狂って落ち着いた私達は()き物が落ちた様にストンと座る。

…よく考えたら下の階に迷惑じゃなかったかしら。

ここ、マンションの5階だからね、下のお部屋のおばちゃん、ごめんね。

「まったく、強引な嬢ちゃんだのう…で、何がそんなに嬉しかったんじゃ?」

冷蔵庫から取って来た炭酸水のボトルを(あお)り、おっちゃんが(たず)ねる。

「これ、見なさいよぉ?

売れたのよ、おっちゃんのアクセサリー!」

「何と!?…おぉ、売れとる、こんなに売れたか!」

ペンダントトップやネックレス、指輪、ブローチ等、最初だからと気合を入れて、

それぞれ10個くらいずつ並べてみたんだけど、結果はほとんど完売!

お問い合わせフォームにも、

『素敵なデザインばかりで迷ってる内に完売…次の入荷はいつですか?』

『これ、欲しかったけど買えませんでした! 再販希望です!!』

『こちらのデザインに別の色の宝石を合わせられませんか?』

等々、(おおむ)ね好意的な内容が並んでいた。

(なお)、未だに

『…『テキスメキシウム』ってどんな物質ですか?』

『原石だけ、いや、欠片(かけら)でもいいので『飛行石』売ってもらえませんか?』

といった問い合わせが混じるのは…。

そういうのは異世界、いや、ファンタジーの産物なのよ!

あくまで『イメージして作った』事にしといて!!


 それはさておき…

「やったわねぇ、おっちゃん…完全勝利よ、優勝よぉ!」

後方理解者(づら)で腕組みしてウンウンと(うなづ)く私。

おっちゃんは私が育てた!

「そうかぁ、()()()でも通用したかぁ…儂の腕も捨てたもんじゃないのう!」

まんざらでもない顔で『へへん』と鼻の下をこするおっちゃん。

でも数秒もすると、ほら、顔がにこばんで来る…(うれ)しい(のう)、嬉しい喃!!

だけど、喜んでばかりもいられない。

「さぁ、おっちゃん、今から発送手続きよぉ!」

「ほいきた、何から始めれば良いんかの?」

送り状ラベルは昨晩の内に印刷しといたからね。

必要な物はサイズのお直しをして、間違いのない様に梱包して、運送会社さんに

集荷依頼をして、お客様に出荷連絡をメールしてって…割とやる事あるな。

「頑張って午後の集荷に間に合わせましょうねぇ。

それが済んだらスーパーでお買い物よぉ…今日は軽くお祝いしましょうねぇ。」

「お祝いかぁ、嬉しいのう、楽しみじゃのう!」

よし、では頑張るぞい!とおっちゃんも作業に気合が入る。

おー、張り切り過ぎて箱(つぶ)さない様にね。

お昼はそうめんとか、軽いもんでいいかな…その分、夜は豪勢(ごうせい)にしてあげよう。


ようし、私も頑張るぞい!


・・・


 出荷も終わり、二人してスーパーへお買い物。

外は快晴、梅雨明けして暑くなってきたわ。

おっちゃんは麦わら帽子にアロハシャツ、グルカショーツという出で立ち。

なかなか似合ってるじゃないか。

「…『梅雨』じゃったか、雨期が終わって結構暑くなってきた様じゃが。」

「そうなのよねぇ、これからも~っと暑くなるのよぉ…」

九州とか、既にすごく暑いみたいだし。

しかも8月は炎天下の中で()()がある。

そう、夏の祭典、『カトゥーンマーケット』が!

今から気が重いけど、『カトケ』抜きに私の夏は終わらない。

こればっかりはどうしようもないヲタクの(サガ)

「これより暑くなるて…またまた嬢ちゃん、(わし)(かつ)ごうったって

そうはいかんぞぉ?」

カラカラと笑い飛ばすおっちゃん。

信じてないな?…その内、目にもの言わしたるけんね!


 さて、勝手知ったるスーパーである。

今日は豪勢に、と決めたからには相応のご馳走を買い込むわよ。

わーくにの夏と言えば、メインは()()よ、()()

おっちゃんは肉々しい気分の様で、お肉関連の副菜を見繕ってカートにポイポイ。

お野菜も忘れちゃいけない…あ、これはお(つま)みにもいいわ、多めに買っとこう。

諸々カートに放り込んで、お酒をどうしようかとコーナーを(のぞ)く。

あんまり飲んだ事ない奴で~、そこそこ良い奴で~、しかも確実に

美味しそうな奴って言うと~…

物色する私の目に飛び込んで来た一本。

ラベルが、ボトルが『(われ)、良い酒ぞ?』と主張している。

こいつだ、こいつで決まりだ。

「む、なかなか高級感のある…今日は()()が飲めるんかの?」

おっちゃんが、目ざとく私の選んだ瓶を覗き込んだ。

「えぇ、実は私も飲んだ事はないんだけど、評判はいいわよぉ?」

「ほほぅ、こりゃ楽しみじゃわい。」

「今夜はご馳走って決めたからねぇ、それじゃ、お会計しましょうかぁ。」


どっさりと買い込んだ買い物袋を両手に下げて、私達は帰りの坂道を

えっちらおっちら登って行くのだった。


・・・


 「それでは、おっちゃんのアクセサリーショップ、無事の発進を祝って…

かんぱ~い! おめでと~う!!」

「お~ぅ、嬢ちゃん、ありがとなあ!」

パチパチパチ! ドンドン、パフパフ!

取りあえずご飯が先なのでスタートはおビール様だけど、これも

奮発してエビスよ、エビス。

グラスをカチンと合わせて、か~っとビールを流し込んで、さぁ、ご飯だ。

竜田揚げに焼き鳥、つくね、ソーセージ…まぁ脂っこいもんばかり選んだわね。

お野菜はナムル…普通はホウレン草だろうけど、そこをチンゲン菜にして、

ツナたっぷり、胡麻もたっぷり振って作るのが私のジャスティス。

そしてメインは…うな重!

スーパーとは言え、大奮発して国産(うなぎ)よ、国産!


 「この時期、一度はうなぎを食べておかなきゃねぇ。」

「『うなぁぎ』、か…初めて食べるが、これはお魚か?」

何ぞ(いわ)れがあるんかの?と怪訝(けげん)な顔をするおっちゃん。

「『土用の(うし)の日』って言うんだけどねぇ、昔、この日に鰻を食べると

身体に良い、暑気あたりしない、って宣伝した人がいてねぇ。」

200年くらい前かしらねぇ、言ってしまえばセールスのコピーなんだけど、

それが大当たりして未だに習慣として残ってるんだから大したもんだ、と

言葉を結ぶ。

「上手い事やった人がおるんじゃのう。」

言いながら、鰻とご飯を一緒にパクりと一口。

「…むっはぁ。

身が柔らかくて、ふっくらしとって、炭で焼いた味が香ばしくて、

脂の旨味とコクがあって…うんまぁい、『うなぁぎ』、うんまぁい!」

おっちゃんは頬っぺたを赤くして、子供みたいににこばむ。

そうかそうか、美味かったか。

何せ国産の鰻よ、美味しくなくてどうしましょう、だわ。


 「『なむる』っちゅうたか、このお野菜も美味いのう。」

「美味しいでしょぉ? 今日はお酒のお摘みも、このナムルよぉ。」

たっぷりあるから遠慮なく食べてね…と言う迄もなく、おっちゃんなら

たっぷり食べるわな。

見事な健啖家(けんたんか)っぷりよねぇ、このモジャ公は。

「…しかし、お祝いと言うなら、桂華(けいか)の嬢ちゃんや桜子(さくらこ)の嬢ちゃんも

呼ばんで良かったんかの?」

儂らだけでお祝いは申し訳ないのう、と心配するおっちゃん。

「8月に『カトケ』…大きなお祭りがあってねぇ、いつもその打ち上げで

集まるんで、その時に合同で改めてお祝いにしようねって伝えてあるから、

心配しなくていいのよぉ?」

今日は内々でのお祝いって事で大丈夫、と伝えるとおっちゃんも納得。

「『かとけ』っちゅうのは良う分からんが、改めて集まるんじゃの。

また嬢ちゃん達に会うのが楽しみじゃわい!」

言いながら鰻に、お肉に、お野菜に、と満遍なく(はし)を伸ばすおっちゃん。


よしよし、しっかり食べて大きく育てよ…主に『横方向』だろうけど。


・・・


 晩御飯は一区切りついて、軽くお茶などしばく食休み。

「今日はお祝いという事で、おっちゃんにプレゼントがありまぁす!」

私はガサガサとお店の袋を開ける。

「何と、そんなもんまで用意してくれとったのか?」

湯呑を口に運ぶ手を止めて驚くおっちゃん。

取り出したのは…1台のスマホと1枚のカード。

「むぅ…これは?」

「スマホは知ってるわよねぇ?

カードは銀行のキャッシュカードよぉ。」

どっちも私名義で契約してるのは申し訳ないんだけど、何せおっちゃんは

異世界からの来訪者、契約のしようがないから仕方がない。

「スマホには私と桂華ちゃんと桜子の電話番号とラインの登録しといたわぁ。

後、銀行の口座と紐づけもしといたから、ネットショッピングも出来るし、

スマホ決済の出来るお店なら現金がなくてもお買い物が出来るわよぉ?」

「何と、これ、儂の『すまほぅ』なのか…」

おっちゃんはそっとスマホを押し頂いて、まるで祈る様に天に(かざ)す。

いや、伝説の武器とかそんなもんじゃないんだから…


 「でね、現金が必要な事も多いから、そんな時使うのがこっちのカード。」

これがあれば、スーパーやコンビニのATMでお金が降ろせるのだ、と

説明する。

「で、その時に4(けた)の暗証番号が要るんだけど、これは申し訳ないけど

私が決めさせてもらったわぁ。」

本当は私が知ってちゃいけないんだろうけど、管理の都合上で止むを得ない。

「儂が忘れない様な数字…はて?」

怪訝な顔で考え込むおっちゃん。

「私達が絶対忘れない日、初めて会った日の日付にしといたわぁ。」

おっちゃんはポンと膝を打つ。

「おぉ、それなら忘れ様もない! 考えたのう、嬢ちゃん!」

そうでしょう、そうでしょう、もっと()めていいのよ?

「ところで、儂ら、いつ会ったんじゃの?」

何度か通っとる内に(こよみ)の読み方は覚えたが、肝心の出会った日付は

分からんのう、とおっちゃんは首を(ひね)る。


 ガーン、だわ。


まさか出会った日付を知らないとは思いもしなかった。

だって、今は普通にカレンダーで日付を見て話が出来てるんだもん。

「…そう言えば、カレンダーの読み方覚えたのは(しばら)くしてからだったわねぇ。

私とした事が、うっかりしてたわぁ…〇〇月××日よぉ…」

あぁ、嘲笑(わら)えよ…お前、今私を見て嘲笑(わら)ったなぁ…!?

地獄めいた台詞(セリフ)を頭の中でリフレインさせながら、がっくりと

項垂(うなだ)れて力なく笑う私。

「そうかそうか、〇〇月××日なぁ…うむ、これで忘れんぞい。」

私の心を知ってか知らずか、おっちゃんは嬉し気に言葉を返す。


羞恥心(しゅうちしん)身悶(みもだ)えしそうになるのを(こら)えつつ、スマホの使い方や

口座残高の見方を説明したり、発送費や梱包資材費、後々は売り上げの税金も

この口座から支払うから、一度に大金を降ろしたり無駄遣いはしない様に

注意もして、私は真っ赤な顔でおっちゃんへプレゼントを渡し終えたのだった。


キーッ!…格好よく決めたつもりだったのにぃ!!


・・・


 「…コホン、それではプレゼントもお渡ししましたのでぇ…

本日のお酒の登場です!」

「いぇ~い! どんどん、ぱふぱふぅ!!」

おっちゃんがパチパチと拍手する。

グラスに氷、炭酸水、そしてお摘みのナムルをテーブルに並べ、

取り出したボトルをドン!

「こちらが『シーバスリーガル ミズナラ 12年』でございまぁす!」

どっしりとした透明な瓶の中にはややダークな温かみのある琥珀色の液体。

誇り高く記された『シーバスリーガル』の銘の下には、これも誇らしく

わーくに限定の『ミズナラ』の文字!

()ったデザインのラベルは高級感あるわねぇ。

封を切るのももどかしく、テイスティンググラスにトクトクと(そそい)いで…


「「かんぱ~い!」」


おっちゃんはグラスの縁を(ひげ)()でる様にして香りを嗅ぐ。

「ふぉぉ…香り高いのう、まるで香木を匂うておる様じゃ…

ミルクチョコレートに、ほんのりと香るこれは…オレンジか?

何とも複雑で、味も楽しみになるのう!」

そして一口。

「おぉぅ、甘やかじゃぁ…ミルクチョコの温かい甘みにオレンジの酸味…

あぁ、じんわり舌と喉にパチパチと生姜(しょうが)の様なスパイシーさが残りよる!」

あらあら、絶賛ねぇ。

どれどれ、私も…


 あ、これ凄い。

おっちゃんの言う通り、ふくよかな香木みたいな香りが全体に(ただよ)って、

奥からミルクチョコレートとオレンジがやって来る。

甘くて、遅れてほんのり果実感のある酸味があって、最後に舌と喉に

スパイシーな余韻がいつまでも残る。

バーボン樽ともシェリー樽とも違う、これが『ミズナラ』の樽感か…

これは銘酒だわ。

今まで飲んでなかったのが悔しくなるくらい。

こんなに美味しいなら早く言ってよねぇ!


 理不尽な文句をつけながらストレートを飲み干して、次はハイボールよ。

氷たっぷりのジョッキにウイスキーと炭酸水を注いでワンステア。

「ほう! これは瑞々(みずみず)しいのう…前に飲んだあれは『おれんじすかっしゅぅ』と

言うたか…あれより甘くなくて、果実感が程良く、しかもくどさがない。」

じゃが、とおっちゃんが続ける。

「これは『はいぼぉる』はちと勿体ないのう、『すとれぇと』か『ろっく』で

じっくりと飲みたい旨酒じゃわい。」

言ってジョッキをぐいっと空ける。

うん、分かるぞ、早くストレートで()りたいんだよね、私もそう思ったもん。


次はロックで、再びストレートで、私達は『シーバスリーガル』を存分に

味わい倒したのだった。


・・・


 「じゃぁ、次の商品は2週間後に並べるのねぇ。」

告知は出しておくから早めに商品画像撮ってねぇ、と帰りしなのおっちゃんに

声を掛ける。

「うむ、なるたけ早めに用意するが、()いては良い品は出来んからの。」

まぁ気長に待ってもらえると有難いのう、とおっちゃんはのんびりしたもの。

手作業だし、お客さんは知らない事だけど、何と言っても正真正銘ドワーフ製の

アクセサリーだもんね。

マジもんのアーティファクト…なんか、ありがた味があるぞ?

今回は間に合わないけど、いずれは『カトケ』でサークル出したりするのも

夢があるわねぇ…って、あんまりおっちゃんを人前に出したらいかんぞぉ?

何せおっちゃんは異世界のドワーフ、大騒ぎになっちゃう。

ちょっと私もその辺の感覚が緩くなってるかも、反省反省。


それにしても、これから暑くなるのか、いやぁねぇ…


今回はウイスキーに戻って通常運転、『シーバスリーガル ミズナラ 12年』でした。


有名どころですが意外にも飲んだ事がないはず、少なくとも明確に意識して

飲んだ覚えがないので気になっていた銘柄です。


で、飲んでみたら香木めいた馥郁たる香りに甘みや酸味とスパイシーさが

調和して、繊細で複雑。

ミズナラの樽感とはこういうものかとビックリしましたよ、えぇ。


お値段がお値段ですので常飲は出来ませんが、ハーフボトルがあって良かったです。

レギュラーサイズだとちょっと躊躇しちゃいますよね。


それにしても、梅雨明けと共に猛暑っぷりが上がり、たまらん状況です。

皆様もご健康に留意しご自愛を頂ければ幸いです。


城内は秋生まれなので暑いのも寒いのも苦手です ('A`)


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おっちゃんの商売と利益の行方やいかに。楽しみに待ってます。 ミズナラ、発売当初に飲んだきりだしまた飲むかぁ…飲みたいリストが膨れていく(汗
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