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異世界で宅飲みを ~OLとドワーフのよもやまウイスキーレビュー~  作者: 城内仁志


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24/28

『ジェネリック竹鶴!?』 ニッカ セッション

さて、梅雨と言いますか、所により豪雨もある今日この頃、

如何お過ごしでしょうか。


小町ちゃんは前回に引き続きワールドカップを観戦・応援しておりますが…?

 日曜のお昼、真剣なまなざしでテレビに見入る私は飲酒盃小町(いさはいこまち)

キリっとした表情も良く似合う、知的な美人OLである。

(『近眼のしかめっ(つら)』って言ったそこのお前、覚えとけよ!?)

前回に引き続き、サッカーのワールドカップ、グループリーグのテレビ中継で

わーくに代表の第二戦が始まるんだ。

「むぅ~、どきどきするのう…」

テーブルを挟んだ向かい側では異世界からやって来たドワーフ、

ヴァインのおっちゃんも真剣な表情で試合開始を待っている。

()()()でのお仕事に一段落つけて、応援に来てくれた。

と言っても私達二人共、真昼間からおビール様を片手にしてのサッカー観戦、

いいご身分だよな。

こういう時は軽くて喉越しの良いのがいいから、ライムを絞ったコロナビールを

チョイス。

お互いの国歌斉唱も終わって、さぁ、試合開始の笛が鳴ったわぁ!


・・・


 わーくに代表は試合開始早々に1点をゲット、その後追加点も入れて

前半を折り返した。

かつては『勝ち星配給係』なんて揶揄(やゆ)されてたわーくにが、海外のチームに

こんな試合が出来る様になったのねぇ。

「意外や意外、『横綱相撲』ねぇ。」

誰に聞かせるでもなく、言葉が漏れた。

「おすもう? これ、『さっかぁ』じゃろ?」

おっちゃんが首をかしげた。

「あぁ、そういう言い回しがあるのよぉ。

横綱っていうのがお相撲の最高位…チャンピオンなのは知ってるわよねぇ?」

「うむ、それは覚えたぞ?」

そんな横綱にふさわしい相撲の取組の事から始まって、相手の果敢な攻めを

真正面から受け止めて、ひるまず余裕を持って返す様な堂々とした勝ち方を

言うのだ、と説明すると、おっちゃんも納得した様子。

成程(なるほど)、『横綱相撲』か、上手い事を言うもんだの。」


 危な気ない試合運びに当初の緊張も緩み、雑談が混じり始める。

「相手も決して弱いチームじゃないはずなんだけど、色々ごたごたもあった

みたいねぇ、気の毒ではあるけど。」

「ごたごた?」

「う~ん、何と言ったらいいのかしら?

…これから戦争だって言う時に、王様や大臣がいい加減な事してたり、

戦争の一週間前に将軍が(くび)になって変えられたってのが近いかなぁ。」

「そりゃ気の毒に…兵士は(いくさ)どころではないのう。」


 「それにしても相手の監督さん、結構な『イケオジ』ねぇ。」

白いシャツが良く似合うハンサムな監督さんは、フランス人だそうだ。

「何じゃ、嬢ちゃんはああいう、シュッとした御仁(ごじん)が好みかの?」

「まぁねぇ、若い子は頼りないって言うか、チャラついたのが嫌いって言うか、

頼りがいのあるダンディなおじ様の方が好みではあるかしらねぇ…って、

何言わせるのよ、もう。」

「いや、好みは人それぞれじゃろうし、ええんじゃないかの?」

おっちゃんはニコニコしながら瓶のビールをぐびりと一口、また一口。

まったくこのモジャ公は…


 結局この日のわーくに代表は後半にも2点を追加して相手を完封、

4-0で危なげなく勝利を収めた。

「会心の白星か、いや、こういう試合を観るのも良いもんじゃのう。

…では、一旦(いったん)戻るとするかの。」

おっちゃんは残りのビールを飲み干すと腰を上げる。

「あら、今日はもう戻るのぉ?」

「うむ、もそっと()めときたい仕事があっての。

今日は晩飯も()()()()るわい。」

ビール飲んだ後で仕事するのか…まぁドワーフなら小瓶のビール一本なんて

麦ジュースみたいなもんだろうけど。

「そうなのねぇ、なら、折角(せっかく)だしお仕事片付いたら飲みにだけ来るのはどう?」

「そうさのう…嬢ちゃんが晩飯食うて、食休みが済んだ頃に来ようかの。」


どうやらそういう事になった。


・・・


 お夕飯(ゆはん)が済んで、まったりとネットで動画等眺めていると、

奥の部屋からどすどすと足音が聞こえてきた。

「嬢ちゃん、来たぞい。」

難儀(なんぎ)したが、どうにか片付いたわい、とおっちゃんが顔を出す。

「今日は何飲ませてくれるんかの?」

目をキラキラさせて待ち受けるおっちゃんの前に、瓶とグラスをドン!

「今日はこれよぉ…『ニッカ セッション』。」


 「おぉ、青いの…青い瓶に青いラベルか。」

深みのある青い瓶に鮮やかな青のラベル、それはどこまでも『青』。

「そうよぉ、今日もわーくにの代表チームに(ちな)んで、それも今回は

緑じゃなくちゃんとした青…なんだけどねぇ。」

「何じゃ、浮かぬ顔じゃの?」

怪訝(けげん)な顔をするおっちゃん。

()()()ではどうか分からないんだけど、()()()…特に

わーくにでは食べ物や飲み物が青いって、結構な違和感があるのよねぇ。」

「何と。」

「味は悪くないって聞くんだけど、どっちかと言うと売れてないらしい

わねぇ。

そういう意味では、サントリーの『(あお)』てのがあるんだけど、

あっちは透明な瓶で中身が見える安心感なのか、宣伝が上手なのか、

結構売れてるみたいって聞くわねぇ。」


 言いながら、タブレットで『碧』の画像や動画を見せる。

「ふむぅ…『職人気質(かたぎ)』な『にっか』さんと、商売上手な『さんとり』さん、

とでも言ったとこなのかのう。」

「そんなところかしらねぇ…まぁ中身まで青い訳じゃなし、飲んでみましょぉ?」

(しか)り、わしらは飲んで判断すればよい。」

それで美味ければ言う事ない、とはおっちゃんの(げん)

それじゃぁ、テイスティンググラスに淡い琥珀(こはく)色の液体を(そそ)いで…


「「かんぱ~い!」」


 おっちゃんはグラスを軽く回して香りを(たの)しむ。

「ほほう…最初はオレンジか?りんごか?フルーツの爽やかな香りに…

中間で香るチョコレートの様な甘さと香ばしさはモルトかの。

最後に穏やかなバニラ香、なかなか芳醇(ほうじゅん)で複雑に香りよるわい。」

続いて一口(すす)る。

「おっほう! 何とも滑らかでクリーミーな口当たりじゃの!

オーク樽の甘さに…干し葡萄(ぶどう)か、いや、干し(あんず)か…

果物の酸味が程よく調和して、軽やかな味わいじゃ。

ほのかに感じるチョコレートのほろ苦さとピートの余韻(よいん)がゆっくりと広がって、

しかも長く続きよる…こりゃ美味い! 上等な『ういすきぃ』じゃあ!!」

思いがけず良いのに当たったみたいで、おっちゃんは上機嫌。

 

 どれどれ…私も香ってみて、そして一口…飲んで手が止まる。

「……。」

「何じゃ? どした、嬢ちゃん?」

グラスを見つめて考え込む私の様子に、おっちゃんが(いぶか)しむ。

「…私、いつかどっかで()()飲んだ気がするのよぉ。

いつ、どこでだったかしら…」

ほわほわほわんと頭の中に雲が浮かび、私は記憶を(さかのぼ)った。


・・・


 それは私が入社して間もない頃、同じ部署に配属された何名かの新入社員と

一緒に、部長の佐渡島(さどがしま)さんのご自宅にお招きされた日の事だった。

(ちな)みにこの日はお泊りで翌日はお休みだから、電車で寝過ごす心配もないので

私も喜んで参加させてもらった。


 「皆、よく来てくれたねぇ。

今夜は無礼講(ぶれいこう)だから、大いに親睦(しんぼく)を深めるといいよぉ!」

佐渡島さんは大きなお腹を揺らして笑う。

「皆さん、よくいらして下さったわね。

お食事やお酒を用意してありますから、沢山召し上がって下さいな。」

佐渡島さんの奥様はにこやかで品が良くて…何でこの人(ごめんね、部長!)に

こんな奥様が?と思う様な美人。

あれだ、銀河超特急に乗って機械のボディを手に入れる為に宇宙を旅する

()()コンビを彷彿(ほうふつ)とさせる組み合わせ。

いや、佐渡島さんは宇宙海賊船の副長さんの方が似てるか…


 「…ほうほう、小町ちゃんはバイク乗るんだねぇ。

僕も家内も乗るんだよぉ、家内は飛ばし屋で、峠じゃ付いてけないけど。」

「あら、いやですわ、今は膝擦(ひざす)りなんかもしなくなったでしょ?」

あんなのは若気の至り、今は安全第一ですよ、と笑う奥様。

(たま)に夫婦でツーリングに出かけたりするそうで、いいわねぇ。

て言うか、奥様この見た目で、若い頃は走り屋だったのか…


 どうやらお二人ともバイクやアニメ、特撮なんかが大好きだそうで、

()()共に認めるヲタである私とは色々と話が合った。

…一緒に来た同期の子たちはちょっと引いてたかも知れない。

そうこうする内に、私のグラスが空いていた。

「こまっちゃん、グラスが空いてるよぉ、何か飲むかい?」

あ、この頃から『小町ちゃん』は『こまっちゃん』になったのね。

「あら…貴方(あなた)、若いお嬢さんを酔わせてどうしようっていうのかしら?」

きゃー、奥様にこやかなのに目が笑ってないぞ?

「あ、いえ、奥様、私お酒…特にウイスキーは大好きですから…」

佐渡島さんも少々(あせ)りつつ、私に合わせる。

「そうそう、こまっちゃんは自己紹介でもウイスキーが好きって言ってた

からねぇ…そうだ、こんなのあるけど飲んでみるかい?」

言いながら佐渡島さんがキャビネットから取り出した瓶は…


・・・


 「そうよぉ、思い出した!」

突然叫んだ私の声に、おっちゃんがむせそうになる。

「! 何じゃい、何を思い出したんじゃ!?」

「これ、あの時の『竹鶴(たけつる) ピュアモルト』の味だわぁ!」

確かノンエイジだったと思うけど、そう、あの時飲んだのはこの味だ。

完全に同じじゃないだろうけど、記憶にあった竹鶴の味と、()()はかなり近い。

「昔、『竹鶴』っていうウイスキーがあったのよぉ。

一度終売しちゃったんだけど、その当時はノンエイジなら2千円台で

買えたらしいわぁ。」

「この味が、そんなお手頃価格で味わえたのかい…いい時代じゃのう。」

「何年かして復活したけど、もう手の出せないお値段になっちゃったのよねぇ。

でも、これかなり近しい感じよぉ、思わぬ発見だわぁ。」

言いながら、タブレットをポチポチと操作する私。


 あぁ、やっぱり。

「キーモルトが竹鶴と同じなんじゃないか、って言われてるのねぇ。

外国産の原酒も含まれてるみたいだから『ジャパニーズウイスキー』は

名乗れないけど、その分お安く手に入るのは嬉しいわねぇ。」

「成程のう、『隠れた銘酒』ちゅう訳か…でも、あまり不人気が続くと

それはそれで終売しちまわないか、心配ではあるのう。」

うんうんと(うなづ)きながら、おっちゃんはグラスに酒を注ぎ足す。

「そうねぇ、最近ブラックニッカスペシャルもまた見なくなったし、

そういうところはままならないわねぇ。」

私もグラスにお代わりを注ぎ、今度は氷を落として味わう。

あぁ、いい味だ。


取りあえず、この『ニッカ セッション』は何本か買い溜めしておこう、

私はそう心に誓うのだった。


・・・


 この日の宅飲みから数日後、わーくに代表はグループリーグ三戦目も

堂々と戦っての引き分けで、一勝二引き分けの成績で本戦に進んだ。

そして運命の本戦…

相手は『サッカー王国』と言われる強豪。

わーくに代表はこの相手に真っ向勝負で挑み、押し込まれる展開が

続いたものの、前半に何と1点を先制!

そう、素晴らしい戦い振りだったんだ、前半は…


 後半は、前半以上に押し込まれ、徐々に相手に付いていけなくなり、

足が止まり、ロングボールを相手陣に放り込むばかりで取り返す事も

出来ず、相手のクロスに翻弄(ほんろう)され、いつしか同点、アディショナルタイムで

(つい)に逆転弾を撃ち込まれ…

そして無念のホイッスル。

今まで見てきたのと同じ負け方、わーくに代表の完全敗北だった。


 『強くなった』と言われながら、またも本戦で涙を飲んだわーくに代表。

何が足りないのかしらね。

主力選手を怪我で複数名欠いた事。

強豪国が居並ぶ『死の組』と言われるグループリーグに、本戦でも

優勝候補がこれでもかと次々に当たるくじ運の悪さ。

休養もままならない過酷な日程。

あげつらえば切りがない。

けど、何より1点先制して、無意識か自覚してたかは分からないけど、

どこか気持ちが『守り』に寄ってしまった様に思えた。

だって、負けた後の選手たち、やり切った顔をしてないんだもん。

負けた悔しさじゃなく、『もっと出来たはず』『もっと攻められたはず』

って言う悔しさに見えたのよ。


 これは素人目線だけど、足りないのは

『相手より一分だけ長く走れる心臓』と『攻める勇気』

じゃないのかしら?


 そう、勇気。

本戦は優勝しない限りどこかで負けるんだから、もう勇気を持って、

この一戦に『当たって砕けろ』でも良かった様に思う。

それこそおっちゃんだって、右も左も分からない()()()の世界で

自分の腕が通用するか勝負に出る訳で、これは勇気なんじゃないかと思う。


勇気を持って飛び出した先にだけ見える景色があるのよ。

もう、『善戦マン』じゃダメなのよ!

4年後のワールドカップに向けて、頑張れ、わーくに代表!!




今回は『ニッカ セッション』でした。


昔は『竹鶴 ピュアモルト』が2千円台で買えるいい時代だったのですが、

いつしか終売、そして再販後のお約束のプレ値っぷりに、今ではおいそれと

手が出せなくなってしまいました。


以前より『セッション』は『ジェネリック竹鶴』ではないかと言われて

いるのを耳にしており、いつか試そうと思っていたのを今回ようやく

買って飲んで書いた感じです。

やはりケミカルと言うか、エリクサー風と言うか、この青さは口に入れて

大丈夫なのか?と怖気づいていたのも事実。


そして飲んでみた感想は…これ、『竹鶴』じゃね!?

最後に飲んだ竹鶴はもう10年以上も前になるので大分記憶は薄れ、

輪郭もぼやけていましたが、こんな味わいだった気がする。

記憶補正もあるとは思いますが、それが良い方に作用しているのか、

これは大変美味しい!

自分にとっては正に『ジェネリック竹鶴』と呼ぶにふさわしい逸品でした。

今回はお試しでミニボトルを買ったのですが、近い内にレギュラーサイズを

買う事に決定です。


ワールドカップ、日本代表は本戦で強豪ブラジルに敗れてしまいました。

後半、明らかに攻めっ気が無くなってたよなぁ。

一発勝負だし、攻め達磨で挑んだ方が悔いの残らない試合になったのでは。

今日のアルゼンチン対カーボベルデの試合は大変な死闘で、例え負けるにしろ、

ああいう試合が見たかった…

出来るだけリアルタイムで観戦しているので時間や曜日の感覚がおかしく

なりそう、と言うか既になってます ('A`)


好きな選手はベルギーのルカク。

ルカクはスキンヘッドに頬髭でいかつい巨漢の黒人さんで、ゴールを決めた後の

くりっとした目や、外した後のしょんぼり(´・ω・`)した顔が可愛いと思います。


城内はほぼ代表戦しか見ないライト層ではありますが、サッカーは割と好きです。

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― 新着の感想 ―
竹鶴はノンエイジどころか12年が2千円台だった時代がありましてな…。もうこれだけ飲んでたらいいんじゃないかと思うくらいおいしかったし、ありがたいを通り越して恐ろしい価格設定だと、当時から思っていました…
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