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異世界で宅飲みを ~OLとドワーフのよもやまウイスキーレビュー~  作者: 城内仁志


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23/23

『君は『森』を感じた事があるか!』 サントリー プレミアムハイボール白州

さて、世間は梅雨入りし雨がうっとおしい今日この頃、

小町ちゃんは外出もままならず、何やらテレビを見る様ですが…?

 季節はうっとおしい梅雨(つゆ)時、物憂(ものう)げにテレビのスイッチを入れる私は

飲酒盃小町(いさはいこまち)、気だるい表情が良く似合う美人OLである。

(『ぼへ~っと(よだれ)垂らしそうな顔』って言った奴、後で屋上な。)

油断すると雨が降る(油断しなくても降るけど)し、こんな天気じゃ外にも

出たくないからテレビを何となく見るのだけど、今年はちょっと違う。

今年はサッカーのワールドカップがあるのよ!

私は熱心なフアンという訳ではないけど、わーくに代表の試合があれば

テレビ観戦や結果のチェックくらいはするし、それがワールドカップなら

忘れなければ録画して観る程度には興味がある。

まぁ割と一般的な国民感情ではなかろうか。


 今回の第一試合はど平日の超朝っぱらだったので、生では観られなかった

けど、録画しておいたのを今まったりと観戦中、という訳である。

結果はニュースやら何やらでもう知ってるけど、すごい試合だったらしい

から、録画とは言え、観るのはそれなりに楽しみなのよ。

相手国はヨーロッパの強豪国。

前半は見てるこっちの胃が痛くなりそうな腹の探り合いで、じりじりしてる

時に、部屋の(ふすま)がガラガラっと開いた。

「おぅ、嬢ちゃん、『てれび』かの?」

「ギャーッ!?」

緊張してたとこにいきなり襖が開いて野太い声が掛けられたもんだから、

私も思わず悲鳴を上げる。

「な、何じゃい!? 脅かしよるのう。」

「驚いたのはこっちよぉ! 声掛ける前にノックくらいしなさいよねぇ…」


 一人暮らしの乙女の部屋にずかずかと入って来たのは、異世界から

やって来たドワーフ、その名を『ヴァイン・ファス』と言う。

通称『ヴァインのおっちゃん』、まぁ気のいい飲み友達である。

「…そう言えば最近ちょっと日が開いてたわねぇ。

アクセの製作、上手くいってないのぉ?」

おっちゃんは()()()の世界で商売をしてみたいという事で、

アクセサリーのインターネット販売をする為、鋭意(えいい)準備中の日々である。

「いやいや、順調にやっとるぞ?

ただ、最初が肝心じゃからして、数を(そろ)えるのに大分(だいぶ)(こん)を詰めたからの、

今日は息抜きにのう。」

おっちゃんは肩を揉み揉み、首をコキリと鳴らしながら答える。

「息抜きねぇ、丁度いいから一緒にサッカーの試合でも観るぅ?」

「『さっかぁ』と言うと、手を使っちゃいかんくて、球蹴ってゴールに

入ったら勝ち、ちゅう奴じゃったか。」

かなり大雑把(おおざっぱ)な理解だけど、まぁ間違ってはいないな。

「この試合は録画だけど、後半からがすごかったらしいから、そういう

意味ではおっちゃん、いい時に来たわよぉ?」

テレビでは試合の前半が終了して、ハーフタイムに入るところだった。

「試合も休憩に入ったとこだし、お茶とおせんべいでも出すわねぇ。」

「こりゃ有難い、御相伴(おしょうばん)に預かるとしようかの。」


私も立ち上がって首や腰を(ひね)ると、お茶やら菓子やらの用意に

台所へ向かうのだった。


・・・


 「…いや、すんごい試合じゃったのう。」

おっちゃんは長い溜息と共に言葉を漏らし、冷めてしまったお茶を

飲み干す。

「凄かったわよねぇ…もう駄目かと思ったわぁ…」

私も目頭を揉みながら天井を仰いで脱力する。


 試合の結果は二対二の引き分け。

でもその過程が凄かった。

後半早々に相手国に先制を許したものの、すぐさまわーくにが

同点ゴールを返す。

でも中盤に相手が追加点を決め、そのまま試合は膠着(こうちゃく)状態。

時間は刻一刻と過ぎて、試合終了も近づいたその時…

再び劇的な同点ゴール!

その後はお互い一歩も退かず闘い続け、試合は終了、堂々の引き分け!!


 「頑張ったわぁ、わーくに、頑張ったわぁ!」

「正直ルールはまだしっかりとは分からんが、『さっかぁ』ちゅうのも

面白いもんじゃのう。」

「おっちゃんの好きなお相撲と較べたら難しいとこもあるでしょうけど、

『ボールが一つあれば出来るスポーツ』って言われてるからねぇ。」

「しかし人間(ヒューム)はよう走るのう。」

(わし)らドワーフではああも長い間走り続ける等とても無理じゃ、

とおっちゃんは感心しきり。

我慢強いし持久力ありそうなもんだけど、成程(なるほど)走るのは苦手な

訳か。


 「そうねぇ、特にわーくにの選手は良く走るし、走り続けるスタミナにも

定評があるわねぇ。」

わーくにの代表は最後の最後まで諦めずにボールを追って走り続ける。

「ほうほう、で、嬢ちゃんの国は『さっかぁ』強いんかの?」

「う~ん、年々実力は上がってると思うんだけどねぇ…」

何を隠そう、わーくにの代表チームはどんなに強い相手でも善戦する一方、

どんなに弱い相手にも苦戦する(へき)があるのだ。

「何じゃそりゃぁ、よう分からん評価じゃのう。」

おっちゃんが鼻白む。

「『名勝負製造機』って言えば聞こえはいいんだけどねぇ…」

でもスピードもテクニックもそこそこあり、スタミナは抜群、超一流とは

言えないまでも、近年は一流に手が届きつつある、何よりラフプレーや

反則が少なく実直にチームプレーをこなしていく、そんなわーくにの代表は

世界でも割と人気だ…と思う。


 「まぁ少なくとも今日の試合では不利を跳ね返す強さは感じられたの。

(こと)にあの目の覚める様な青い服の連中がダーッっと駆けて行くのは

なかなかいいもんじゃて。」

おっちゃん、いいとこに目を付けたな。

「わーくにのユニホーム、いい色でしょぉ?

『サムライブルー』て言って、由来は諸説あるけどわーくにでは鎌倉時代…

800年も前から武士階級の間で『勝ち色』って言われた縁起の良い色

なのよぉ。」

「ほほう、縁起物かい。」

「そうよぉ、『(あい)』って言う植物から取った染料が元なんだけど、

『青は藍より()でて藍より青し』なんて言葉もあって、鮮やかだけど

どこか落ち着いた、濃紺(のうこん)色の青ねぇ。

そう言えば、昔のわーくにでは『青々とした緑』とか『目に青葉』とか

緑色も青の内だったりしたんだけど…」

「緑と青が一緒かい。」

おっちゃんが混ぜっ返したところで私は思い出した。

そうだ、緑の()()、買ってあったんだ。


「試合も観終わったし、おっちゃん、クールダウンに一杯()らない?

面白いハイボール買ってあるのよぉ。」


・・・


 テーブルの上には氷をたっぷり入れたジョッキと目に鮮やかな緑色の

350ml缶が二人分。

「という訳で、買ってきました!

『サントリー プレミアムハイボール白州』よぉ。」

どどん!

「『森の香りと余韻』が感じられるって(うた)い文句で、

ここ数年、毎年出てる限定品の缶ハイボールなのよぉ。」

「ほほう、『森』を、な?

エルフ共程じゃないにしろ、儂も『森』にはちとうるさいぞい?」

ぷしっと缶を開け、手酌(てじゃく)でジョッキに注ぎながらおっちゃんが

にやりと笑う。

「正直私はちょっと苦手意識もあるんだけど、爽やかな飲み口なのは

保証するわぁ。」

それぞれ準備も出来たし、ジョッキを合わせて


「「かんぱ~い!」」


 おっちゃん、まずはジョッキを回しながら軽く香って、おもむろに

ぐびりと一口。

「ほほぅ、ほうほう!

これが人間(ヒューム)の考える『森』の香りと味わいかい!!」

しっとりとした樹木の香りと爽やかに消える余韻(よいん)が心地よい、

瑞々(みずみず)しい口当たりといい、確かにこれは『森』に違いない。

()()()人間(ヒューム)もなかなかやるもんじゃのう!

とおっちゃんは上機嫌。

「口に合ったなら良かったわぁ、私はこれ、ちょ~っと苦手だから。」

「さっきも言うとったの。

儂は美味いと思うたが、嬢ちゃんは嫌いなんか?」

おっちゃんが怪訝(けげん)な顔をする。

「嫌い、とまでは言わないんだけど、これの木の香りはちょっと苦手な

感じなのよぉ。」


 日本酒の白木(しらき)枡酒(ますざけ)ってあるじゃない?

あれを飲んでて、時に湿った材木っぽさが鼻を突いちゃう、あの感じって

言ったら分かるかしら。

どうも白州ハイボールにはあれに近いものを感じるんだな。

飲み口の爽やかさは好きなんだけどねぇ。

「毎年ちょっとずつ切り口を変えた味で出してくるから、今年はどんな

かしら?ってついつい買っちゃうのよねぇ。」

ただ、メーカーさんの『売り』がこの『森の香りと余韻』だから、

多分白州ってのは私の好みとはちょっと違うとこに焦点(しょうてん)があるんだろうな。


 「これは余談なんだけど、このメーカーさんが出してるプレミアム

ハイボール缶に、『山崎』っていうのがあってねぇ、そっちは私の

好みにばっちりなのよぉ。」

今回はタイミングが合わなくて買ってないんだけど、また次もあるだろう

から、その時に飲ませてあげるわね、とおっちゃんに約束する。

「何じゃ、その『山崎』ちゅうのは今はないのか?

残念じゃのう。」

ちょっとしょんぼりするおっちゃん。

何だか可愛いぞ? しょんぼりドワーフ。

「季節ものというか、限定品だからねぇ。

でも、近い味はおっちゃんも前に飲んだ事あるのよぉ?」

「ぬぅ? 儂飲んだ事あるのか?

…だが、『山崎』なんちゅう瓶は見た覚えがないぞぅ…」

「『山崎』そのものはねぇ、ちょっと手が出ないお値段だから。

でもね、その『山崎』が原酒に使われてるウイスキーは飲んでるのよぉ?」


言う迄もない、それは『サントリー オールド』。

「おぅ、『お~るど』かよ!」

あれは確かに美味かった、そうか、あの中に『山崎』が入っとったか、

とおっちゃんはうんうん(うなず)く。

「『山崎』も『白州』も、ほいほいと手が出せるお値段ではないのが

残念なのよねぇ。

でも、限定だしちょっとお高くもあるけど、こうしてハイボール缶が

あったり、そのエッセンスを感じられるボトルはまだ手の届くお値段

なのは、メーカーさんの良心と言えなくもないのかしらねぇ。」

許すまじ転売ヤー、そして度を越えた円安ドル高に、いつまでも

終らない国際紛争も許すまじ。


 おっちゃんがふと思い出した様に私に(たず)ねた。

「『お~るど』に『山崎』が使われとるのは分かった。

と言う事は、当然『白州』が使われとる『ういすきぃ』もあるんじゃろ?」

そこに気が付くとは、このモジャ公、やはり天才か。

「あるわよぉ、『サントリー スペシャルリザーブ』っていうのが。」

「そうか、やはりあるか…そいつも試してみたいのう。」

苦手な味なら無理にとは言わんが、とおっちゃんは遠慮がちに続けた。

「遠慮する事ないのよぉ?

私もリザーブはその内じっくり飲んでみたいと思ってたしぃ?」

無理そうなら、ハイボールやコークハイで消化しちゃう手もあるし、

何ならおっちゃんが気に入ったならお土産に持たせれば問題ナッシング。

そう伝えると、おっちゃんは一瞬きょとんとした顔をしたが、

「ガハハ、そりゃ違いないわい!」

と破顔一笑するのだった。


・・・


 結局その日はおっちゃんも私も白州ハイボール缶を二本ずつ空けて

お開きとなった。

苦手と言いつつ、この喉越しの爽やかさには(あらが)えないなぁ。

「次の試合は日曜日のお昼なのよぉ、良かったら応援しに来てねぇ。」

「おう、手が空く様ならお邪魔するとしようかの。」

「それじゃ、お休みなさぁい。」

おっちゃんは押し入れの向こうへ去って行った。

繋がった通路が消えちゃうのが怖くて、この押し入れ、何時からか

閉めた事がないな。

万一、おっちゃんが()()()にいる時に世界の繋がりが

消えたらどうなっちゃうんだろう。

(こわ)(こわ)や。

おっちゃん自身は生活力ありそうだけど、そういう場合は難民申請で

いいのかしら? 通るのかな?


 まぁそれはそれとしてだ。

おっちゃん、サッカー観戦やわーくに代表のサムライブルー、

結構気に入ったみたい。

あのユニホーム、おっちゃんにも似合いそうよねぇ。

南米辺りの太っちょおじさんが少し無理して着るみたいな感じがベネ。

サプライズで用意してあげたら喜ぶかな?

等と考えた私は公式ユニホームの通販サイトを開いてみた。

「なん…だと…」

たっか~い!

公式とは言え、レプリカのユニホーム、それもトップスだけで

こんな高いの!?

ごめん、おっちゃん…これはちょっと無理だわ、()めてたわ。


せめてものお詫びにサントリーリザーブは買っとくから、許してぇ!



今回は『サントリー プレミアムハイボール白州』でした。

縁起物と言いますか、『今年も出てた!飲まなきゃ!書かなきゃ!』で

買って飲んで書いた感じです。


城内は小町ちゃん同様、白州の木の香りがちょっと苦手で

山崎の方が好みには合う様です。


タイトルは言う迄もなく、車田正美先生の名作『聖闘士星矢』からですね。

流石に『森』と書いて『コスモ』と読む描写は入れるのをやめました。


白州ハイボール缶の瑞々しさは大変よろしいのですが、不意に鼻を突いて

来る材木感が…多分ボトルで買う事はないだろうなぁ、という感想です。

白州と対と言いますか、良く引き合いに出される山崎は大好きで、

まぁ山崎も瓶では買いませんが、結果リザーブよりもオールドの方が好みです。

甘味とコクが口に合う様に思われます。


木と言うか、樽感と言う事で、ミズナラ樽のお酒もその内試したい

ところですね。

基本はシーバスリーガルのミズナラだと思いますが、実は例の『アレ』、

入手出来ているのでどっちから飲もうかな、書くならどっちからかな、

とニマニマしてます。


城内は白州を嫌いではありませんが、山崎はもっと好きです。

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― 新着の感想 ―
白州自体は好きだけど、白木の升酒が苦手な感じは分かるかもです。木材邪魔するんじゃねえ酒の味が分からんってなります。 ユニフォームってこんな値段するんですね!レプリカでも1着でブラントンくらい、選手仕…
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