休み時間
ミソノンは、わたしの知らない世界で生活をしていた。
すべてが新鮮だ。
しかしミソノンは、逆にわたしのことを、もっと前から知りたかったと言ってくれる。
そんなわたしは、夜な夜な自分の機嫌とりをする。
なんなら、休みの日もだ。
「ねぇ、ミクるんさ…最近肌ツヤよくない?」
二時間目が終わってすぐの休み時間に、ミソノンがわたしの肌をツンっとした。
「あー、やっぱりわかっちゃいましたか?」
「うんうん。で、で?なにしたの?」
「自分と向き合って、ごめんなさいしてるの」
「えー、なにそれ?意味わかんないなぁ」
「つまりは、自分と向き合ってるっていうのかな」
「あー…あー‼︎前にミクるん、そんなこと言ってなかった?」
「うん。あの事件のときね」
「そうそう、わたしに言ったんだよね。」
「一人をきちんと愛せないなら、そもそも誰もあなたにちゃんと向き合ってくれないんじゃない?ってね。それは、自分もなんだってわかったところ」
「おー。で、どうやって向き合ってるの?」
「うんとね…」
そこでチャイムがなってしまった。
わたしたちは、時間がいくらあっても足りないくらい、おしゃべりがとまらない。
次の休み時間、ミソノンがまた話の続きを聞いてきた。
「で、で?どうやって機嫌とりするの?やっぱり甘いもの系とか?」
「ううん、でも甘いものもたまに脳みそ喜ばすためにあげてる」
「喜ばすって…じゃあ、他には?ストレス発散でジョギングでもするの?」
「それも考えたんだけど、頭痛くなるからさ、どうしようかなぁってリビングの中央で考えてたの。そしたら、お母さんがあっついわぁって汗だくで掃除してて、ひらめいたわけよ」
「ん?」
「掃除‼︎」
「え、掃除?」
「そうなの。掃除って意外と動くし、汗かいて挙句に掃除したら綺麗になるでしょ?その綺麗ーって思った瞬間が快感なわけ。で、代謝も良くなって肌もツルツルよ」
「へぇ、それって掃除機とかかけるの?」
「ううん、基本お風呂掃除とトイレ掃除」
「おお、めっちゃ汗かくね。冷房あたらない密室だ」
「そうなの。それがまたいいの。挙句、お母さんが今度なにか好きなもの買ってあげるからいいなさいねって、ご褒美までもらえることになってね」
「最高かよ」
「それなー」
「「きゃはは」」
楽しい休み時間が尽きない。
そして、わたしは自分の機嫌とりが尽きない。
その様子を、蓮くんがよくみている。
話しかけてくるわけじゃないけど、最近よくこちらをみてくる。
そしてわたしと目が合うと、パッと視線を逸らす。
それは、理生も同じだった。
なにか話しかけてくるとかじゃなさそうなんだけど…
なにか言いたげな感じだ。
放課後、ミソノンが喉がかわいたというので、自販機へと仲良く向かった。
そしてミソノンが買ったジュースは、わたしが思っていたものではなかった。
「あれ?ミソノン…いつものジュースじゃないんだ?」
「あー、あれは…実は別に好きじゃないんだよね」
「なら、なんでいつも飲んでたの?」
…
「実はさ、蓮がよく飲んでて…それでわたしも、それ美味しいよねって…言って飲んでただけなの。」
「へぇ、そうだったんだ」
「うん。あのころは、蓮のこと好きだったし…」
じゃあ、なんで二股なんかしてたの?って聞こうとしたけど、なんか…それはやめておいた。
先輩とは、どういう経由で出会って交際が始まったのだろう?
…たぶん先輩から言い寄ったんじゃないかな。
あの先輩は、チャラ男で遊び人で有名なんだよね。
わたしは、接点がなんにもなかったとはいえ、学校では日々ぼっちで、やることっていったら人間観察くらいだったので、そのへんをよくご存じなのだ。
そしてその先輩は…すでに新しいターゲットがいる。
ターゲットどころか、もう彼女かな?ってくらいの距離感でこの前廊下を歩いていた。
ミソノンの元カレ二人の蓮くんと先輩…
ミソノンは、いっきにふたりを失った。
「ねぇミソノン…」
「なに?」
「ミソノンは、味覚音痴だったんじゃないよ?ただ、味覚を誤魔化すのが得意なだけ」
「なにそれ?わたしって、そもそも味覚音痴なの?」
「うん、きっとね。でも、もう大丈夫。安心して飲みなよ。好きなジュースを」
…
ミソノンは、不思議そうにジュースを飲んで、
「美味しいなあ」
って、空を見上げた。
続く。




