ちょっとした恋愛イベント
駅の遊歩道を歩いていた。二人で。
「なーんだ。勘違いなのか」
「ああ。だから香苗先生をあんまり目の敵にしないでくれ」
すると横にあったゲームセンター。麗はとことことそこのクレーンゲームへと近づく。
Vチューバーのキャラぬいぐるみが彼女のお気に召したらしい。俺は財布から一万円を取り出し、両替をする。
「えっ、一万もクレーンゲームするの?」
「まあ見ていろよ」
大きさもそこそこでピクリとも取れない。そして六千円ほど使ったところで――
「店員さーん」
店員を呼び、位置をずらしてもらいあとはするするっと取る。
「なにそれ」
「困ったときは助けを呼ぶのが正解だ」
「それ込みで動いていたでしょ」
「まあな」
「格好悪い」
と言う麗は満更でもない。両手いっぱいにキャラぬいぐるみを抱きかかえる麗。ちょっと可愛かった……
「あっ、少し可愛いなって思っていたりした?」
「いいや?」
夜の児童公園。そばには噴水が流れている。
「私……将来の夢があるの」
「なんだ?」
「学芸員です」
「ほう」
「小さいときから絵を描くのが大好きで、将来はそういう方面の職に携わりたいなと思って。ただ……」
「なに?」
「試験が二年を通してあるのです。それに体が耐えられるかどうか……」
「そっか」
麗は真っ直ぐな瞳でこちらを見た。
「何の病気か、とか聞かないのですか?」
「聞かないな」
「……」
「俺はお病気かどうかでお前を判断しない。判断するのは、お前が自分の将来の夢を話してくれたことだけだ」
麗の弱々しい肩をそっと触った。
「もう少しだけがんばれ」
麗が少しずつ、だが段々とあふれるように涙を流した。
噴水が大きく噴出した。




