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明後日は死ぬ。  作者: 彼方夢
第一章 ガーターベルト殺人事件

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10/39

すべてには道理がある。

 今日、仕事を辞めさせられた。

 高橋は夕日を背に急行列車に乗っていた。ぼんやりとするなかで事実と虚構が綯交ぜになったような感覚を覚える。


 ――明日から家庭はどうしよう。


 良き旦那を演じてきたのに。

 甲斐性なしなんてすぐに捨てられる。

 それにそもそも自分は浮気をしている。

 殺人も犯している。

 そんなことが世間に発覚すれば自分らは終わりだ。


 妻の職業は保健師の教諭をしている。


 高橋の事件が露見すれば、妻の職業柄、彼女の「将来」とやらも消える。

 頭を抱えた。どうすればいいんだ。

 最寄り駅につき、コンビニで彼女の好みのスイーツを買って家路に就く。

 扉を開け、玄関を通ってリビングに顔を出す。そこには驚いた顔の妻が。


「どうしたの。こんな時間に?」

「いや、ちょっとさ。仕事クビになっちゃってさ。なぁ、家族みんな力合わせて頑張らないか?」

「……」


 すると寝室のほうからスーツ姿の青年が出てきた。

 ――どこのどいつだよ。


「君、そういうことしていたのか」

「仕方ないでしょ。あなた、全然構ってくれないのだから」

「あっそう。じゃあお仕置きしてあげなくちゃね」

「はい?」


 ネクタイを緩ませながら妻である香苗にどんどん近づく。

 香苗の表情は凍り付いていく。謝罪の言葉を糊にしながらももう遅い。



 ――こっちのほうが手っ取り早い。


□■□



「なにそれ」

「写ルンです、だってよ。いやー、平成レトロだね」


 友樹の言葉に俺はつい首を傾げて、


「まだ平成をレトロって言う感覚に慣れねぇわ」

「そうか? まぁ時期なれるだろ。ほら、香苗先生が来たら四人で撮ろうぜ。そのために千円近くも払ってコンビニで買ったのに」


 ここは部室。狭く埃っぽいこの空間に常に居続けるのは酷だな。

 ただそれから一時間。待てど暮らせど香苗は来ない。


「そろそろ俺、帰るわ」

「うん」


 斜め掛けバッグを肩にかけて、引き戸を開ける。

 校舎から出てポケットから棒キャンディを取り出し封を開けて口に含む。

 なにか苛々するな。なんだろうこの胸騒ぎは。


 ニャー。


 俺は鳴き声のほうに見下ろすと猫が立っていた。観察すると不愛想な顔な猫だ。


「どうした?」


 するとその猫は少し駆け足で走り出した。慌てて付いていく。

 三十分ほど走っただろうか。あるレンガ状の三階建ての家の前で止まった。


「お前……ここはどこ……って、高橋……」


 香苗先生の苗字である高橋の表札が掛かっている。

 俺はインターホンを鳴らし、それでも応答がなかったためノックをした。近所の方たちが集まってくる。

 あの先生ガーターベルトを使っていたからな。万が一はあるかもしれない。

 そうすると誰かが警察に通報してくれて、家宅捜査に入ると縄で縛られ暴行を受けていた香苗先生がいた。その犯人はすっかり意気消沈していたそうだ。


 新聞の見出しに「連続ガーターベルト殺人事件の容疑者逮捕」と大きくあった。俺は警察からも感謝状をもらい、あぁ、人助けって良いな。と思っている最中なのである。


 そんな上機嫌で高校の学食でパンを食べていたら友樹から、「なにそんな幸福そうな顔で飯なんか食っていやがんだ」と某青機械マンガもびっくりの難癖を付けられたため、幸福もほどほどにしないといけないな。


 まぁ、そもそも解決して幸福になる事件など限られてはいるが。











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