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明後日は死ぬ。  作者: 彼方夢
最終章 新宿占領

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新宿を鮫の目が睨む

「あの人に仕事を頼むときにはどうすればいいんだ?」

「とにかく金だ。金と女だ」

「――いままでどんな事件を解決したんだ?」

「ナチュラル関連の事件を一掃したらしい。たとえば、ガーターベルトの淫欲な事件からホテルの階層ごとでの準繰りに犯行に及ぶ猟奇殺人まで」

「すごいな……」


 人伝から噂が噂を呼ぶ。それはどんどん膨らんでいき、攻城椎名を巨大なイコン「聖像」にする。


 だがしかし、そんな攻城椎名こと俺をお呼びでない連中もいるみたいだ。

 ――ナチュラルの人間は面子が潰されたことが甚だ遺憾らしい。

 けれど、それはこっちの台詞だ。姫島さんの件を、俺は絶対に忘れたりしない。

 


「旧」姫島探偵事務所にて。姫島さんの名を使っているのは、こちらの屋号の方が都合が良いからだ。

 テナント三階。ソファに座り、最近吸い始めた煙草に火を点ける。


「お邪魔しーます」

 俺は客人の顔を見て急いで煙草の火を消し、窓を開ける。

「本当にお邪魔だったみたいだね」

「いや、気にしなくていい。――心臓の調子はどうだ?」

「まだドナーが見つからないんだ。だから来週からまた入院。嫌になっちゃう」

「そっか。交際中なのにどこにも行けないなんてな」

 すると麗がくすりと笑う。そのとき、腰まである髪が揺らめいた。


「そんなの、学生時代からずっとじゃん。でも、そんなの関係ないからさ……」


 そうだったな。麗とは付き合っては離れてを繰り返していたのだ。学生時代、ずっと。俺がこんな、探偵業を繰り返しているから。


「友樹くんがまた言っていたよ。『近所に美味いラーメン屋が出来たんだ。一緒に行こうぜ』って」

「ああ、そっか。何処かまた聞かないと」


 麗が口許に指を添えながら、くしくし、と笑う。よく笑う子だ。


「もう、毎月どこかのラーメンに行ってるじゃん。変な関係」

「言っておくが、麵は伸びても、あいつとの関係性は伸びないぞ」

 すん、と麗が真顔になる。

「どういうこと?」

「いや、スルーしてくれ。……また、仕事が片付いたら見舞いに行くからな」

「ありがとう」

 麗が小さく手を振りながら去っていく。

 息を吐いて、ソファに腰掛けた。煙草をもう一度吸おうかとも思ったが、辞めておいた。



 現在、当たっている事件は竜神会という暴力団の傘下組織の摘発である。んなこと、警察の組対部に任せればいいのかもしれないが、そうはいかない。

 大釜修平。ナチュラルというスカウトグループの副リーダーであり、その元締めである聡仁会の幹部員なのだが、そいつが創設したのが「竜神会」だ。

 組織図においても、大釜修平の大部分の関与が認められる。

 と、すれば、逆に言えば大釜を潰せばナチュラルに大打撃を食らわせることが出来るということだ。

 ゆえに困難で危険な仕事だ。

 それでもやらなくてはいけない。


 姫島さんのために――



 それから、ひとつだけナチュラル関連の事件の手掛かりがあるのだ。

「総務省事務次官……和田峰……こいつはきな臭い」

 ガーターベルト殺害事件や、ラブホ階層事件などでの被害女性の身辺を調査すると、必ずこいつにぶち当たる。

「私怨……まさかな」

 俺は鼻をすすった。少し煙草の臭いが香った。



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